双神の輪~紡がれる絆の物語~

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2章 学生編  生きる覚悟

75話

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「……クソ」

 ニヤリと笑ってくる男は長い耳に紫がかった黒髪、そして紫色の目という魔族の典型的な特徴だけでなく、かなり美しい顔立ちをしている。だがどこか寒々しく禍々しい。そして琉生でさえその男の魔力が半端ないとわかったようだった。

「にしてもお前ら人間風情がよくこの結界の中無事ここまで来られたな? それとも光の救世主ともなればただの人間でさえねぇのか? おいアーリィ! 双子ちゃん見つけたぜ」
「アーリィなんて気色の悪い呼び方してくるなアンディ」

 一人だけでも面倒だというのにさらに強い気配が感じられる魔族が、同じく瞬時に現れた。アーリィと呼ばれたこの魔族もアンディと呼ばれた魔族と同じ典型的特徴を持つ上にかなり美しい顔立ちをしている。そして同じく禍々しい。

 クソ、ルイの調子が悪いってのにこんなのが二人もかよ……いけるか……?

「じゃあちゃんと呼べばいいのか? アーリマ……」
「呼ばなくていい。こいつらが例の双子か……お初にお目にかかります、お二人さん。ずっとお会いしたいと思っていましたよ」

 こいつら、などと言ったすぐそのあとに空々しい様子で丁寧に話しかけ、正確な名前はわからないままだがアーリィはボウ・アンド・スクレープと呼ばれる右足を引いて右手を体に添えさせ、左手を横に真っ直ぐ差し出すように伸ばす挨拶をしてきた。皮肉にしか見えない。
 流輝はいつでも魔法で攻撃できるよう手に力をそっと込めた。するととってつけたような笑みを浮かべているアーリィが怪訝な顔をしてくる。そしてじっと流輝を見てきた。

「な、何だよ」
「……いえ……。……?」

 怪訝な顔のまま流輝を見ていたアーリィは、だがハッとなったように窓のほうへ顔を向けた。
「どうしたんだ?」
「アンディ、外の様子を見てきてくれ。何やらたくさんの人間の気配を感じる」
「マジかよ。どうする? いたら皆殺しか?」
「……いや、やはり俺が行こう。お前はこいつらを見てろ」
「見てろって、おい! 殺るんじゃねーのか、ってもういねえじゃねーか。ッチ。何だよ。さっさと殺しちまったほうが安全だろうが。なあ?」

 なあ、とアンディは楽しそうに双子を見てきた。琉生がレイピアを掲げる。

「おいおい、無理すんなよ双子の片割れちゃん。お前ら救世主っつってもまだ成長過程なんだろ? でも大したもんだわ。魔族用の探知結界の中じゃあ、力の弱い人間なら立ってんのもきついはずだからな」

 そういうことか、と流輝は理解した。だがそうなると何故自分は眠らされていた分まだ多少靄がかかっていた頭がむしろすっきりしたのだろうと思う。

「うるさい。お前らなどに殺されはしない。それに俺の剣はそんなにやわじゃない」
「無理すんなって! とりあえ……ッチ。アーリィは何してやがんだ。人間が何人も入ってきてんじゃねーか。つかお前ら探知機でもついてんの? すげー真っすぐやってくるおっさんどもがいるんだけど。あーあ。散々いたぶってなぶり殺しにしよーと思ったのにな。面倒なのはごめんだからサクっと殺るわ。じゃあな」

 アンディが無駄に喋っている間にその魔力を推し量っていた流輝は、アンディが放ってくる魔法を容易に跳ね返すつもりでいた。だがその前に駆けつけてきた男が双子を庇うように飛び込んでくる。

「っドルフッ?」

 咄嗟のこと過ぎてそれを避けられない上に、血は繋がってないとはいえ一応伯父となる相手の名前を流輝は呼び捨てにしてしまった。

「……ぅ……ご、無事ですか」

 飛び込んだおかげでむしろ上手く逸れたのか、直撃はしなかったようだが酷い傷をドルフは負ったようだ。

「ぶ、無事です、が、何故伯父上、が……?」

 琉生も動揺が隠せないといった様子でドルフを抱えながら聞いている。

「ッチ。邪魔してんじゃねーよ人間のおっさん。まあいい。三人まとめて仲よく殺してやる。感謝しろ」

 けっこうな威力の魔法を放ってきたにも関わらず、アンディはさらに強い力を手に掲げた。ハッとなり、流輝は躊躇も忘れてそれよりも強い力を思いきりアンディに放つ。咄嗟のことで普段使っている魔法と全然違う力がアンディめがけて走った。途端にアンディは黒い炎に包まれ、叫び声をあげながら炭となって消え去った。

「リ、リキ……大丈夫……?」

 琉生が少し驚きながらも心配そうに見てくる。

「あ、ああ……」

 少しドキドキとしていた。今繰り出した魔法に動揺もしていたが、何より自分のやったことに動揺していた。
 魔族に会ったのも今日が初めてだった。そして見た目は違うものの人とあまり変わらないようなものを流輝は殺してしまった。
 だが感傷に浸っている暇はない。ドルフにも聞きたいことはたくさんあるが、今はここから逃げることが先決だった。

「伯父上、とりあえず歩けますか……?」
「あ……あ。大丈夫、です……」

 唖然と流輝を見ていたドルフもハッとなったように頷く。そしてその際に傷が相当痛んだようでうめき声を上げてきた。満身創痍といったドルフに結界のせいで具合の悪い琉生、そして内心動揺している流輝。やはり戦いは避けて思いきり逃げなくてはと思っていると目の前にアーリィがまた現れた。

「そ、んな」
「……アンディを倒した魔法……」

 だがアーリィはぼそりと呟くとまた流輝を見てくる。しかしニヤリと笑うと「私の仕事はここまでにします。ではごきげんよう。いずれ機会があればまた」とまた丁寧に挨拶の仕草をしてくると消えてしまった。
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