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3章 騎士編 光の救世主
79話
叙任式は無事終了した。
昔キャスが流輝に騎士の誓いを行ってくれたことがあったが、同じようなことを国王ノアの御前で行った。魔術師となる流輝は騎士とは異なるため、方法は全く同じではなかったが誓いの言葉はほぼ同じだった。
成人の儀もそうだったが、流輝にとっては叙任式もかなり面倒くさいものだった。ただ叙任式の雰囲気の中、こういった儀式を何故改めて執り行うのかはなんとなくわかったような気がした。厳かな雰囲気の中で忠誠を誓った時、流輝の中で大切なもの、大切なことがしっかりと認識された。魔術師や騎士として守るべきものは何か、覚悟とはなにか、それらに対して本当に向き合い全うしていけるのか。そういった己の気持ちをそれこそ覚悟を持って気づかせ認識させるためのものなのかもしれない。
これで晴れて流輝と琉生は正式な魔術師と騎士になった。後日それぞれ魔道騎士団と剣聖騎士団に所属することになる。魔術師の数はかなり少ないため、魔道騎士団は第十二隊まである剣聖騎士団と違い第二隊しかない。だがその代わりそれぞれがかなりの精鋭部隊であると聞いた。
「おめでとう」
式の後にローザリアが改めて祝いの言葉を伝えに来てくれた。そして二人の首にネックレスをかけてくれる。
「これ、は?」
流輝は首にかかったネックレスについている宝石を手にとって見た。紋様が彫られている青い魔法石だ。おそらく、そこにローザリアの属性である水の魔力も込められている。
「お守り。大事にしてね」
「ありがとう、ローザリア。これ、お前の魔力を感じる」
「私の魔力ってわかるの?」
ローザリアが嬉しそうに顔を赤らめながら微笑んできた。
「お前の魔力ならわかるよ。すげー効力ありそうだよな、ルイ」
「そうだね。本当にありがとう、ローザリア」
「うん。モリスおじさまとカルナおばさまからもすごく効力ありそうな武器をいただいたみたいね。私の水も、それと一緒にあなたたちを守ってくれるといいな」
心からそう思っているといった慈しみのこもった笑顔でローザリアは流輝たちを見てきた。思わず流輝はそんなローザリアをまじまじと見ていたようだ。ローザリアと琉生に「どうしたの」と言われてハッとなった。
「い、いや。何でもない」
実際別に何でもない。
ただ何か、……うん? いや、何でもねーな、うん。……何でもない、けど何だろ、何となくずっと見ていたいような気になったっつーか……?
ほんのり首を傾げていると琉生に肩をぽんぽんとされた。琉生はまるで小さな子どもを見るような顔をしている。
「……何だよその顔。変な顔すんな」
「どんな顔かわからないけど基本的に兄さんと同じ顔のつくりだからね?」
「そういうことじゃねーわ」
帰宅後、流輝は迷わずベッドに飛び込んだ。琉生までもが一緒になって流輝のベッドへ飛び込む。二人して突っ伏したまま寝てしまいそうになったが、部屋着やら何やらを用意していたメイドたちが慌てて「夜にお祝いのパーティがあるのでまだ寝てはいけません」「しかも正装のまま!」と叫ぶように言ってきた。
「えぇ……もうパーティいいよ……」
「俺も今回だけは兄さんに同意……眠い」
「お二人とも今すぐ起きませんと、このまま無理やり私どもで御着替えさせていただきますからね。脱がせて部屋着をお着せいたしますから」
メイドのニナが言い放ってきた瞬間、二人はぱっちり目を開けた。冗談じゃない、と慌てて起き上がる。
結局しぶしぶと目を覚ますためもあり風呂に入った。一旦部屋着になり、夜の衣装を選んで見せてくるメイドたちに「何でもいいよ……」と投げやりに伝え、準備をすでに行おうとしている彼女たちを遠い目で眺めながらソファーにぐったりと座り込んだ。
散々男だからいらないと言っても聞いてもらえず肌の手入れをされ、髪を弄られ、何度も衣装をとっかえひっかえされ、そろそろこれはメイドたちによって遊ばれているのではと思い始めた頃にようやく準備が終わった。
「女性じゃないんだからここまで手入れとか着飾る必要、ある?」
さすがの琉生ですらそんなことを言っている。だがニナは何を当たり前なことをといった顔をしてきた。
「今どき男性も小ぎれいにしてないとモテませんよ。だいたいお二人は素材がとてもいいのですから、それらを最大限に生かさないと。肌なんて綺麗すぎません? ちょっと嫉妬しそうでした」
「何言ってんの……」
「俺はむしろもう少しひげとか盛大に生えてもいいと思ってたぐらいなんだけど」
「リキ様、女の子はそういう男らしさは求めてませんよ」
「別にいいよ求められなくて」
「そりゃリキ様にはローザリア殿下がいらっしゃいますけど、でも」
「はっ? な、何言ってんの? 何でそこにローザリアが出てくんだよ」
妙に心臓がざわざわするのを感じながら言えば、今まで流輝と一緒になって「面倒」という気持ちを大いに漏らしていた琉生が一瞬ポカンとした後にやたらニヤニヤと流輝を見てくる。
「何だよ!」
「ううん、何でも? 皆がこれだけ散々俺たちを小ぎれいにしてくれたんだし、その成果をじゃあそろそろ確認しに行こうか。兄さんはローザリアに見てもらいなよ」
「お前まで、何……?」
昔キャスが流輝に騎士の誓いを行ってくれたことがあったが、同じようなことを国王ノアの御前で行った。魔術師となる流輝は騎士とは異なるため、方法は全く同じではなかったが誓いの言葉はほぼ同じだった。
成人の儀もそうだったが、流輝にとっては叙任式もかなり面倒くさいものだった。ただ叙任式の雰囲気の中、こういった儀式を何故改めて執り行うのかはなんとなくわかったような気がした。厳かな雰囲気の中で忠誠を誓った時、流輝の中で大切なもの、大切なことがしっかりと認識された。魔術師や騎士として守るべきものは何か、覚悟とはなにか、それらに対して本当に向き合い全うしていけるのか。そういった己の気持ちをそれこそ覚悟を持って気づかせ認識させるためのものなのかもしれない。
これで晴れて流輝と琉生は正式な魔術師と騎士になった。後日それぞれ魔道騎士団と剣聖騎士団に所属することになる。魔術師の数はかなり少ないため、魔道騎士団は第十二隊まである剣聖騎士団と違い第二隊しかない。だがその代わりそれぞれがかなりの精鋭部隊であると聞いた。
「おめでとう」
式の後にローザリアが改めて祝いの言葉を伝えに来てくれた。そして二人の首にネックレスをかけてくれる。
「これ、は?」
流輝は首にかかったネックレスについている宝石を手にとって見た。紋様が彫られている青い魔法石だ。おそらく、そこにローザリアの属性である水の魔力も込められている。
「お守り。大事にしてね」
「ありがとう、ローザリア。これ、お前の魔力を感じる」
「私の魔力ってわかるの?」
ローザリアが嬉しそうに顔を赤らめながら微笑んできた。
「お前の魔力ならわかるよ。すげー効力ありそうだよな、ルイ」
「そうだね。本当にありがとう、ローザリア」
「うん。モリスおじさまとカルナおばさまからもすごく効力ありそうな武器をいただいたみたいね。私の水も、それと一緒にあなたたちを守ってくれるといいな」
心からそう思っているといった慈しみのこもった笑顔でローザリアは流輝たちを見てきた。思わず流輝はそんなローザリアをまじまじと見ていたようだ。ローザリアと琉生に「どうしたの」と言われてハッとなった。
「い、いや。何でもない」
実際別に何でもない。
ただ何か、……うん? いや、何でもねーな、うん。……何でもない、けど何だろ、何となくずっと見ていたいような気になったっつーか……?
ほんのり首を傾げていると琉生に肩をぽんぽんとされた。琉生はまるで小さな子どもを見るような顔をしている。
「……何だよその顔。変な顔すんな」
「どんな顔かわからないけど基本的に兄さんと同じ顔のつくりだからね?」
「そういうことじゃねーわ」
帰宅後、流輝は迷わずベッドに飛び込んだ。琉生までもが一緒になって流輝のベッドへ飛び込む。二人して突っ伏したまま寝てしまいそうになったが、部屋着やら何やらを用意していたメイドたちが慌てて「夜にお祝いのパーティがあるのでまだ寝てはいけません」「しかも正装のまま!」と叫ぶように言ってきた。
「えぇ……もうパーティいいよ……」
「俺も今回だけは兄さんに同意……眠い」
「お二人とも今すぐ起きませんと、このまま無理やり私どもで御着替えさせていただきますからね。脱がせて部屋着をお着せいたしますから」
メイドのニナが言い放ってきた瞬間、二人はぱっちり目を開けた。冗談じゃない、と慌てて起き上がる。
結局しぶしぶと目を覚ますためもあり風呂に入った。一旦部屋着になり、夜の衣装を選んで見せてくるメイドたちに「何でもいいよ……」と投げやりに伝え、準備をすでに行おうとしている彼女たちを遠い目で眺めながらソファーにぐったりと座り込んだ。
散々男だからいらないと言っても聞いてもらえず肌の手入れをされ、髪を弄られ、何度も衣装をとっかえひっかえされ、そろそろこれはメイドたちによって遊ばれているのではと思い始めた頃にようやく準備が終わった。
「女性じゃないんだからここまで手入れとか着飾る必要、ある?」
さすがの琉生ですらそんなことを言っている。だがニナは何を当たり前なことをといった顔をしてきた。
「今どき男性も小ぎれいにしてないとモテませんよ。だいたいお二人は素材がとてもいいのですから、それらを最大限に生かさないと。肌なんて綺麗すぎません? ちょっと嫉妬しそうでした」
「何言ってんの……」
「俺はむしろもう少しひげとか盛大に生えてもいいと思ってたぐらいなんだけど」
「リキ様、女の子はそういう男らしさは求めてませんよ」
「別にいいよ求められなくて」
「そりゃリキ様にはローザリア殿下がいらっしゃいますけど、でも」
「はっ? な、何言ってんの? 何でそこにローザリアが出てくんだよ」
妙に心臓がざわざわするのを感じながら言えば、今まで流輝と一緒になって「面倒」という気持ちを大いに漏らしていた琉生が一瞬ポカンとした後にやたらニヤニヤと流輝を見てくる。
「何だよ!」
「ううん、何でも? 皆がこれだけ散々俺たちを小ぎれいにしてくれたんだし、その成果をじゃあそろそろ確認しに行こうか。兄さんはローザリアに見てもらいなよ」
「お前まで、何……?」
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