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4話
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クラスが別だったのもあり、避けられるとこうも会わないものなのかと瑠衣は少し驚いていた。今まで当たり前のように毎日顔を合わせていたのでとても変な気がした。
とにかく謝らないとと七瀬のクラスへ何度も出向いたが、その度に七瀬はいなかったり眠っていたりで話すことができなかった。
その上、七瀬は部活にも来なくなった。あんなにすごく楽しそうにテニスをしていたのに、七瀬はあんなにすごく上手いのにと瑠衣は焦燥感に駆られる。だがイライラする権利すら自分にはないはずだ。悪意が自分になくとも、瑠衣は七瀬をひどく傷つけた。軽率にも口に出してしまった言葉はもう取り返しがつかない。
それでもせめて謝りたかったのに、その機会すら七瀬は与えてくれなかった。
そんな折、瑠衣は同じクラスの女子から告白された。瑠衣も好きとまではいかなくとも少し気にはなっていた子で、何となくつい受け入れていた。大胡には「憧れの狭山とだなんてずるい」などと言われつつもからかわれたりしたが、七瀬とはますます接点を持つことができなくなっていった。
付き合いたてもあり、部活以外ではどうしても彼女と一緒に過ごす時間が増える。それもあり七瀬を見かけることすら困難になっていた。だがクラスは違えど同じ学年だ。全く見ないなんてこともなく、ある日久しぶりに見かけた七瀬はとんでもなく派手な髪色になっていた。
「あいつどうしちゃったんだろな。部活に来なくなったと思ったら、ぐれちゃったのか? ピアスまで開けちゃってさー、生活指導の田村がいつもカンカンに怒ってんのに全然びびりもしねーでさ」
教師の田村に睨まれたらヤンキーも凍りつく、などと瑠衣の周りでは皆言っていたが、七瀬は結局卒業までその姿から変わることはなかった。おまけに明るく優しい雰囲気もどこか近寄りがたく冷たいものになっていた。
いくら思わず「冗談だろ?」なんて言ってしまったっていっても、そこまでする? 俺、別に気持ち悪いとか無理とかそんなの言ってないだろ……第一確かに七瀬相手にっていうか男相手に好きもなにもないけど、でも振るようなことすら言ってないだろ。なのに何だよ……あんな風になっちゃって、しかもずっと俺避けてて……これじゃあ俺が原因でぐれましたって言われてるようなもんじゃないか。
当時は全然謝るきっかけさえないのもあり、こんな風にも思った。
今ではわかる。多分七瀬は本当に傷ついたのだと思う。瑠衣も男女関係なく本当に好きな相手に、それも今まで少なくともすごく親しくしていた相手に、その上中学の豆腐メンタルな感受性を持て余している時に突き放されるようなことを言われたら、多分しばらく学校へ行きたくなくなったのではないだろうか。
瑠衣はといえば、付き合っていた彼女と高校進学後自然消滅していた。これも今思えば、初めての彼女に対して好奇心や興味はあったものの、気になっていたとはいえ好きというわけでもなかった瑠衣の言動のせいだろう。もちろんひどい言動をとったことはないし、何だかんだ言ってすることはしていたものの、彼女にとっては感情面で物足りないものがあったのだと思われる。
それもあって高校に入ってからは誰とも付き合っていない。断ろうとしたら「好きじゃなくてもいいから」と言われることもあるが、多分最初はよくても次第に業を煮やすことになるのではないだろうか。第一いい加減な気持ちで付き合うのは相手がそれでいいと言えども、相手に悪い気になる。
ちなみに七瀬が瑠衣と同じ高校へ進学していたと知った時はわりと驚いた。完全に嫌われたと思っていたし、瑠衣は中学一年の頃から「高校はあの学校だなー俺」と口にしていた。だからずっと避けられていたのもあり絶対瑠衣が進学する高校も避けると思っていた。
……まあ、逆に俺のために自分が行こうと思う高校を変えるなんて、嫌いだと思っていたらなおさら癪に障る、か。
どのみち「同じ高校だな!」などと爽やかに笑い合えるはずもない。相変わらず避けられる、というかもはや全く知らない赤の他人だった。
瑠衣は中学と同じくテニス部に入ったが、七瀬は当然のように入部してこなかった。中学二年のあの時から瑠衣は七瀬がテニスをしているところを見ていない。もう二度と一緒にテニスはできないのかと残念に思った。
そして今に至る。
高校二年の二学期もこの間終わった。赤点だと補習を受けなければならないため、テニス部では成績を疎かにすることは禁止だったりする。部活を理由に勉強しないなどともってのほか、というわけだ。
一応この学校に入っている以上ある程度基礎は問題ない者ばかりなので、勉強さえしていればどうとでもなるはずだった。
とはいえ大胡はつい目先の誘惑に負けやすいのもあり、期末試験もぎりぎりだったらしい。瑠衣にも「俺、死んだかと思ったわ」と、かろうじて赤点を免れたらしい、テスト結果一覧が載った用紙を握りしめながら深いため息をついていた。
漫画か何かだとよく全クラスの順位を廊下に貼り出したりしているようだが、少なくともこの学校ではそんな風習はない。せいぜいその用紙によって自分のクラスの中でどの程度かわかるくらいだ。
「五十島ってどうなんだろうな」
「え、何で?」
「何でって?」
「いや、何で急にって思って。でもあいつあんな感じだもんなー。それこそ勉強? そんなもんやってられるか、みたいな感じっぽいもんな。でもあいつが真面目に補習受けてるとこも微妙に想像できねえっつか想像したらちょっと笑えるぞ」
「……はは」
高校受験は少なくともちゃんとしたのだと思うが、今はどうなのだろう。いくら見た目や態度があんな感じでも、せめて勉強くらいは最低限していて欲しいと何となく思ってしまう。何もかも投げ出して自暴自棄なまま大人になってしまうとか、瑠衣としても罪悪感に苛まれる気がした。
とにかく謝らないとと七瀬のクラスへ何度も出向いたが、その度に七瀬はいなかったり眠っていたりで話すことができなかった。
その上、七瀬は部活にも来なくなった。あんなにすごく楽しそうにテニスをしていたのに、七瀬はあんなにすごく上手いのにと瑠衣は焦燥感に駆られる。だがイライラする権利すら自分にはないはずだ。悪意が自分になくとも、瑠衣は七瀬をひどく傷つけた。軽率にも口に出してしまった言葉はもう取り返しがつかない。
それでもせめて謝りたかったのに、その機会すら七瀬は与えてくれなかった。
そんな折、瑠衣は同じクラスの女子から告白された。瑠衣も好きとまではいかなくとも少し気にはなっていた子で、何となくつい受け入れていた。大胡には「憧れの狭山とだなんてずるい」などと言われつつもからかわれたりしたが、七瀬とはますます接点を持つことができなくなっていった。
付き合いたてもあり、部活以外ではどうしても彼女と一緒に過ごす時間が増える。それもあり七瀬を見かけることすら困難になっていた。だがクラスは違えど同じ学年だ。全く見ないなんてこともなく、ある日久しぶりに見かけた七瀬はとんでもなく派手な髪色になっていた。
「あいつどうしちゃったんだろな。部活に来なくなったと思ったら、ぐれちゃったのか? ピアスまで開けちゃってさー、生活指導の田村がいつもカンカンに怒ってんのに全然びびりもしねーでさ」
教師の田村に睨まれたらヤンキーも凍りつく、などと瑠衣の周りでは皆言っていたが、七瀬は結局卒業までその姿から変わることはなかった。おまけに明るく優しい雰囲気もどこか近寄りがたく冷たいものになっていた。
いくら思わず「冗談だろ?」なんて言ってしまったっていっても、そこまでする? 俺、別に気持ち悪いとか無理とかそんなの言ってないだろ……第一確かに七瀬相手にっていうか男相手に好きもなにもないけど、でも振るようなことすら言ってないだろ。なのに何だよ……あんな風になっちゃって、しかもずっと俺避けてて……これじゃあ俺が原因でぐれましたって言われてるようなもんじゃないか。
当時は全然謝るきっかけさえないのもあり、こんな風にも思った。
今ではわかる。多分七瀬は本当に傷ついたのだと思う。瑠衣も男女関係なく本当に好きな相手に、それも今まで少なくともすごく親しくしていた相手に、その上中学の豆腐メンタルな感受性を持て余している時に突き放されるようなことを言われたら、多分しばらく学校へ行きたくなくなったのではないだろうか。
瑠衣はといえば、付き合っていた彼女と高校進学後自然消滅していた。これも今思えば、初めての彼女に対して好奇心や興味はあったものの、気になっていたとはいえ好きというわけでもなかった瑠衣の言動のせいだろう。もちろんひどい言動をとったことはないし、何だかんだ言ってすることはしていたものの、彼女にとっては感情面で物足りないものがあったのだと思われる。
それもあって高校に入ってからは誰とも付き合っていない。断ろうとしたら「好きじゃなくてもいいから」と言われることもあるが、多分最初はよくても次第に業を煮やすことになるのではないだろうか。第一いい加減な気持ちで付き合うのは相手がそれでいいと言えども、相手に悪い気になる。
ちなみに七瀬が瑠衣と同じ高校へ進学していたと知った時はわりと驚いた。完全に嫌われたと思っていたし、瑠衣は中学一年の頃から「高校はあの学校だなー俺」と口にしていた。だからずっと避けられていたのもあり絶対瑠衣が進学する高校も避けると思っていた。
……まあ、逆に俺のために自分が行こうと思う高校を変えるなんて、嫌いだと思っていたらなおさら癪に障る、か。
どのみち「同じ高校だな!」などと爽やかに笑い合えるはずもない。相変わらず避けられる、というかもはや全く知らない赤の他人だった。
瑠衣は中学と同じくテニス部に入ったが、七瀬は当然のように入部してこなかった。中学二年のあの時から瑠衣は七瀬がテニスをしているところを見ていない。もう二度と一緒にテニスはできないのかと残念に思った。
そして今に至る。
高校二年の二学期もこの間終わった。赤点だと補習を受けなければならないため、テニス部では成績を疎かにすることは禁止だったりする。部活を理由に勉強しないなどともってのほか、というわけだ。
一応この学校に入っている以上ある程度基礎は問題ない者ばかりなので、勉強さえしていればどうとでもなるはずだった。
とはいえ大胡はつい目先の誘惑に負けやすいのもあり、期末試験もぎりぎりだったらしい。瑠衣にも「俺、死んだかと思ったわ」と、かろうじて赤点を免れたらしい、テスト結果一覧が載った用紙を握りしめながら深いため息をついていた。
漫画か何かだとよく全クラスの順位を廊下に貼り出したりしているようだが、少なくともこの学校ではそんな風習はない。せいぜいその用紙によって自分のクラスの中でどの程度かわかるくらいだ。
「五十島ってどうなんだろうな」
「え、何で?」
「何でって?」
「いや、何で急にって思って。でもあいつあんな感じだもんなー。それこそ勉強? そんなもんやってられるか、みたいな感じっぽいもんな。でもあいつが真面目に補習受けてるとこも微妙に想像できねえっつか想像したらちょっと笑えるぞ」
「……はは」
高校受験は少なくともちゃんとしたのだと思うが、今はどうなのだろう。いくら見た目や態度があんな感じでも、せめて勉強くらいは最低限していて欲しいと何となく思ってしまう。何もかも投げ出して自暴自棄なまま大人になってしまうとか、瑠衣としても罪悪感に苛まれる気がした。
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