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67話
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「結局どういうことだったんだ」
月梨と別れてそのまま共に帰る途中、邦一が聞いてきた。
ちなみに邦一は月梨と簡単な自己紹介をようやくして「もしかして前に水泳の授業で話しかけてきた人の妹さん……」と軽く驚いていた。最終的に双子の姉とわかったらしいが。
「クニはワーウルフより頭の回転があんまりよくないんかもやなぁ」
魔界や魔物のことをあまり知らないので仕方がないとはわかっていてあえて言う。
「……俺が色々知らないと思って笑顔で軽んじてくんのやめろ」
「愛故や」
「そんな愛いらない」
「まぁ言ってたままやねんけどな。基本的に人間界で生活してる魔物がそこに溶け込んでるのは俺ら見てたらわかるやろ?」
「まぁ」
邦一が素直に頷いた。いつも耳をしっかり傾け、真面目に話を聞こうとしている邦一を秋星はとても可愛いと思っている。なので邦一に聞かれて説明したり教えたりするのが秋星は好きだったりする。邦一には面倒がってはいるが、それも楽しんでいる一環だ。
「溶け込んでんのはこれでもちゃんと規律守ってるからや。魔物が好き放題してたら今頃ここはめちゃくちゃやろな」
「お前見てたら好き放題してるようにしか見えないのにな」
素直だと思えばこういうことも言う。とはいえ、自分のない邦一よりはずっといい。
「嫌々、人間のもん食べてるやろ」
「それはまた違うんじゃないのか。橘家だけのルールだろ」
「煩いわ。……そんでやな、件のアホはそういった規律無視して好きにしてるって訳や。だいたい他の魔物は大抵人間を襲ったらあかんことになってる。人間の何かを摂取せんと生体維持が難しい場合はな、下手したら人間界に留まることすらできへんねや。ヴァンパイアなどはまだ、人間をあからさまに損傷せんで済むから留まれる」
「損傷とか、生々しいな……」
「そういう魔物、ほんまはよぉさんおるんやで。ただ人間界には基本やってこられへんだけや。で、そのアホはさっきあの女が言うてた通りなら、間違いなく範疇越えてる」
「……逆にじゃあ、何でそいつは人間界にいるんだ。お前の言う通りならここにいられないヤツだろ」
こういう質問をしてくれるところも可愛い。ちゃんと話を聞いて咀嚼し、考えているのだとわかる。
「そやな。まぁ、何でも百パーセントは無理っちゅーことや」
ニッコリと言えば邦一が微妙な顔をしてきた。
「……。とりあえず、いてはいけない存在がいるらしい上に同じ種族だけに秋星も協力するってことか」
「何の話や」
「は? だってさっき……」
本当にわからなくて秋星が怪訝な顔を向けると邦一も怪訝な顔を返してきた。
「さっき……? あぁ。俺も探すて言うたやつか。探すよ。そういうヤツは邪魔でしかないし迷惑やからな。やけど協力するなんて言うてへんわ。何でこの俺がワーウルフに協力したらなアカンねん」
は、っと鼻で笑うとますます微妙な顔をしてきた。
「秋星は何でそんなにワーウルフ、だっけ? 嫌うんだよ」
「しゃーないやん、あいつら、ほんまにアホやねん。人間界におるワーウルフは意外にもまぁそれなりに頭悪くはなさそうやって知ったけどな。あとあの女は性格もまだ、まし。お堅そうやけどキャンキャン煩くまとわりついてくるのより全然いい」
「……ふーん? っていうか、あほ、て……。なついてくれる感じって可愛いじゃないか。いや、犬っぽい人がよく分からないから実際の犬想像したんだけどさ」
「俺、犬より猫のがえぇ」
どうでもよさげに言えば、邦一が「そういえば」と秋星を見てくる。
「秋星、猫になってたもんな。何にでも化けられるのか?」
「まぁ」
「そしたら象でも?」
少しそわそわと邦一が聞いてくる。秋星は生ぬるい顔を邦一へ向けた。
「象に化けて何かあんの。そんな目立ってしゃあないもん、何で化けなアカンねん」
「聞いてみただけだろ。ちょっと気になったんだよ。象とかキリンとか。あ、ゾウリムシとか」
ほんのり楽しそうな邦一は何よりだが、秋星は馬鹿馬鹿しいとばかりに鼻で笑う。何かに化けるのは結構難しい魔法だが、もちろん秋星にできないことなどない。だがわざわざ自分でない生き物になる必要性を基本的に感じない。邦一に化けることすら馬鹿馬鹿しいと思っている。
「しょーもないこと言ってんちゃうで」
「ごめんごめん」
「謝るくらいやったらな、帰ったらヴィタメールのチョコ、俺の部屋に何箱か持ってきて」
まだ血は飲まない。まだ飲まなくても大丈夫と秋星は心の中で呟く。邦一は秋星の顔を見た後に微妙な表情をしてきた。
「またそんな高級チョコレートを何箱もとか言う。ふざけんな」
「ふざけてへん。確か台所の水屋にまとめて入ってるわ。お前は遠慮せんでえぇからいくつか持ってきぃ」
食器棚のことを水屋と言っても学校では通じないだろうが、邦一には通じる。
「別に遠慮なんかしてないし、俺がチョコレートを持ってたら、見た全員がお前用だって思うよ」
「それやったら問題ないやろ」
「全く……」
呆れたようにため息を吐いているが、邦一は言う通りにしてくれる。そして持ってきてはくれるのだが、秋星がぱくぱくと食べ出すとまた「食い過ぎるな」と文句を言ってくるのだ。
体を一度だけだが重ね、気持ちも伝わっているようだが全然普段と変わっていない。それが秋星にとって面白くなくもあり、どこか落ち着く自分がいるのもまた事実だった。
月梨と別れてそのまま共に帰る途中、邦一が聞いてきた。
ちなみに邦一は月梨と簡単な自己紹介をようやくして「もしかして前に水泳の授業で話しかけてきた人の妹さん……」と軽く驚いていた。最終的に双子の姉とわかったらしいが。
「クニはワーウルフより頭の回転があんまりよくないんかもやなぁ」
魔界や魔物のことをあまり知らないので仕方がないとはわかっていてあえて言う。
「……俺が色々知らないと思って笑顔で軽んじてくんのやめろ」
「愛故や」
「そんな愛いらない」
「まぁ言ってたままやねんけどな。基本的に人間界で生活してる魔物がそこに溶け込んでるのは俺ら見てたらわかるやろ?」
「まぁ」
邦一が素直に頷いた。いつも耳をしっかり傾け、真面目に話を聞こうとしている邦一を秋星はとても可愛いと思っている。なので邦一に聞かれて説明したり教えたりするのが秋星は好きだったりする。邦一には面倒がってはいるが、それも楽しんでいる一環だ。
「溶け込んでんのはこれでもちゃんと規律守ってるからや。魔物が好き放題してたら今頃ここはめちゃくちゃやろな」
「お前見てたら好き放題してるようにしか見えないのにな」
素直だと思えばこういうことも言う。とはいえ、自分のない邦一よりはずっといい。
「嫌々、人間のもん食べてるやろ」
「それはまた違うんじゃないのか。橘家だけのルールだろ」
「煩いわ。……そんでやな、件のアホはそういった規律無視して好きにしてるって訳や。だいたい他の魔物は大抵人間を襲ったらあかんことになってる。人間の何かを摂取せんと生体維持が難しい場合はな、下手したら人間界に留まることすらできへんねや。ヴァンパイアなどはまだ、人間をあからさまに損傷せんで済むから留まれる」
「損傷とか、生々しいな……」
「そういう魔物、ほんまはよぉさんおるんやで。ただ人間界には基本やってこられへんだけや。で、そのアホはさっきあの女が言うてた通りなら、間違いなく範疇越えてる」
「……逆にじゃあ、何でそいつは人間界にいるんだ。お前の言う通りならここにいられないヤツだろ」
こういう質問をしてくれるところも可愛い。ちゃんと話を聞いて咀嚼し、考えているのだとわかる。
「そやな。まぁ、何でも百パーセントは無理っちゅーことや」
ニッコリと言えば邦一が微妙な顔をしてきた。
「……。とりあえず、いてはいけない存在がいるらしい上に同じ種族だけに秋星も協力するってことか」
「何の話や」
「は? だってさっき……」
本当にわからなくて秋星が怪訝な顔を向けると邦一も怪訝な顔を返してきた。
「さっき……? あぁ。俺も探すて言うたやつか。探すよ。そういうヤツは邪魔でしかないし迷惑やからな。やけど協力するなんて言うてへんわ。何でこの俺がワーウルフに協力したらなアカンねん」
は、っと鼻で笑うとますます微妙な顔をしてきた。
「秋星は何でそんなにワーウルフ、だっけ? 嫌うんだよ」
「しゃーないやん、あいつら、ほんまにアホやねん。人間界におるワーウルフは意外にもまぁそれなりに頭悪くはなさそうやって知ったけどな。あとあの女は性格もまだ、まし。お堅そうやけどキャンキャン煩くまとわりついてくるのより全然いい」
「……ふーん? っていうか、あほ、て……。なついてくれる感じって可愛いじゃないか。いや、犬っぽい人がよく分からないから実際の犬想像したんだけどさ」
「俺、犬より猫のがえぇ」
どうでもよさげに言えば、邦一が「そういえば」と秋星を見てくる。
「秋星、猫になってたもんな。何にでも化けられるのか?」
「まぁ」
「そしたら象でも?」
少しそわそわと邦一が聞いてくる。秋星は生ぬるい顔を邦一へ向けた。
「象に化けて何かあんの。そんな目立ってしゃあないもん、何で化けなアカンねん」
「聞いてみただけだろ。ちょっと気になったんだよ。象とかキリンとか。あ、ゾウリムシとか」
ほんのり楽しそうな邦一は何よりだが、秋星は馬鹿馬鹿しいとばかりに鼻で笑う。何かに化けるのは結構難しい魔法だが、もちろん秋星にできないことなどない。だがわざわざ自分でない生き物になる必要性を基本的に感じない。邦一に化けることすら馬鹿馬鹿しいと思っている。
「しょーもないこと言ってんちゃうで」
「ごめんごめん」
「謝るくらいやったらな、帰ったらヴィタメールのチョコ、俺の部屋に何箱か持ってきて」
まだ血は飲まない。まだ飲まなくても大丈夫と秋星は心の中で呟く。邦一は秋星の顔を見た後に微妙な表情をしてきた。
「またそんな高級チョコレートを何箱もとか言う。ふざけんな」
「ふざけてへん。確か台所の水屋にまとめて入ってるわ。お前は遠慮せんでえぇからいくつか持ってきぃ」
食器棚のことを水屋と言っても学校では通じないだろうが、邦一には通じる。
「別に遠慮なんかしてないし、俺がチョコレートを持ってたら、見た全員がお前用だって思うよ」
「それやったら問題ないやろ」
「全く……」
呆れたようにため息を吐いているが、邦一は言う通りにしてくれる。そして持ってきてはくれるのだが、秋星がぱくぱくと食べ出すとまた「食い過ぎるな」と文句を言ってくるのだ。
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