子猫のような君が愛しくて……

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9話

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 実央が肩透かしを食らったような顔で自分を見てくるのは気づいている。というか基本的にいつも実央の一挙一動を見守っているつもりだけに気づかないほうがおかしい。だが、貴はわざと気づかない振りをしていた。
 もちろん意地悪や嫌がらせではない。ああいや、反応がかわいいのでほんの少しの意地悪は入っているかもしれないが、貴としては本気でゆっくり尻の穴に向き合うつもりしかないため、あえてもの言いたげな表情にも基本気づかない振りをしている。
 実央としては尻を慣らしていくイコール、穴を弄って解していくというつもりだろう。貴とてそのつもりはある。だがほんの少しだろうが実央に痛い思いや苦しい思いをさせたくない。尻の穴を使って性行為をする時点でそれらは避けられないのかもしれないが、入念な準備と段階を踏むことで少しでもそれらを軽減させたいのだ。ただでさえ、実央の体は小柄な上、尻も小さい。自分のものは貴としては基準値内だとは思っているものの多少は大きめかもしれないため、なおさら気をつけたい。
 それもあって調べられる限り調べていく内に、尻を解すにしてもまずは筋肉から柔らかくすればいいのではないかと気づいた。肛門にしたって肛門括約筋といった筋肉がある。ということはそこだって筋肉痛になったり凝ったりもするはずだ。他の筋肉と同じようにマッサージやストレッチなどを行っていけばいい。リラックスさせて緩みやすくなった筋肉を解し、それに慣れていってもらう。何事も継続が大事だし実央の尻周辺も一か月もすればかなり解れやすく、柔らかい筋肉になるはずだと貴は踏んでいる。今はもうやっていないが小さな頃から空手をやっていた実央いわく「体は柔らかい」らしいし実際イチャイチャしていてもそれは実感しているが、肛門となるとまた話は別だろう。
 それからようやく指で中を慣らしていきたい。解れやすくなった実央の尻は指くらいならあっという間に容易く受け入れてくれるだろうと思われる。とはいえそこからも性急に進めるのではなく、ゆっくり慣らしたいと思っている。ついでに実央の弱いところもしっかり覚えていきたい。性交自体は経験があるものの、男同士は貴も初めてな上、男女関わらず人によって気持ちがいいところも違うはずだ。
 そんな風に考えているが、それらをいちいち説明するのは何となく恰好がつかない気がして、つい気づかない振りをしてしまう。

 もどかしそうに見てくるみぃもかわいすぎるから、つい楽しんでるところもあるけど。

 思わず思い出して口元を綻ばせていると「何、思い出し笑いしてんの?」と実央が覗き込んできた。
 一緒に座って配信されていた映画を見ているところだった。後ろから抱えるようにして座っていたので普通なら貴が見えるはずがない。

「みぃ、俺じゃなくて映画を見て」
「見てるよ。でも貴くんも見たい」

 何だろうな、このかわいい生き物。

「じゃあ抱えるんじゃなくて横に並ぶ? その方が映画も俺も見やすいかも」

 笑って言えば実央はいつものように眉を少し歪ませて口元を尖らせる。実央の母親などはよく「また拗ねた顔してこの子は」などとからかうように言っていたが、貴からすれば拗ねた顔というより煽り顔でしかない。多分抱える座り方が実央も気に入ってくれているのかもしれない。それじゃなくなるのが不満なのだろうところもかわいいのだが、何よりムッとしているのであろうその顔が貴にはツボだ。何ならそのしかめた眉を舐めて尖らせた唇に噛みつきたくなる。そのまま食べてしまえるなら食べてしまいたい。

 もちろん、噛むなんてみぃが痛いからしないけど。

「横に並ばない」
「そっか」

 顔を綻ばせながらぎゅっと後ろから抱きつけば「何」と素っ気ない一言が返ってきた。

「何って、みぃがかわいいなあって」
「何で。だいたい俺、かわいくないよ」
「わかってないなあ。こんなかわいい子、他で見たことないっていつも言ってるでしょ」
「でも俺、愛想よくできねえしあんま笑わないし」
「じゃあ笑わせよう」
「え?」

 ポカンとしている実央の脇腹を後ろからくすぐった。途端に実央はとてもくすぐったがる。

「ちょ、やめ」
「ほら、笑ってる」
「や、っちょ、っずるい! こんなの違、っあ、も、やっ」

 ケタケタと笑いながらも必死になって逃れようと体を捩る実央に、貴はがばっと覆いかぶさった。

「逃がさないけど?」
「逃げるし!」
「ダメ」
「っひぁ、も、無理、むっ、あ、もっ」

 体格差に圧し潰してしまわないよう一応気をつけながら、二人で思い切り床を転げまわってじゃれ合った。楽しみにしていたはずの映画はもう、どういう展開になっているかもわからなくなっている。

「たっ、かくんっ、あっ、もぉ、っちょ、映画! 映画わけわかんなくなってんだろっ」
「また見ればいいよ」
「ようやく配信したっつってたのにっ?」
「何ならレンタルしたらいいし」
「もぉっ、ひっ、無理って! 無理ぃ」

 転げながら思い切り笑う実央が愛しくて堪らない。体をくすぐるのを本気で嫌がる人も多いが、実央はわりと体に触れられたり撫でられたりくすぐられたりするのが好きなようだ。くすぐられることはただ、やはりこそばゆいようで笑って逃れようとはするのだが、嫌いではない様子に貴もつい一緒になって転がり、何度もくすぐる。
 ようやくお互い笑ったり転がったりするのに疲れた頃には既に違う映画が始まっていた。
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