隣に住むものは……

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 最近またしばらく学校の課題などがあり、大聖は隣へ中々行けなかった。今日もアルバイトから帰ってきてから残っていた課題を終わらせていたため、気づけばもう夜中だった。週末でよかったと思いながら大聖は伸びをし、風呂へ入ろうと風呂場へ向かう。狭いアパートではあるが、バス、トイレが別のセパレートなところも大聖は気に入っている。引っ越しを決める際にワンルームマンションの安いところもいくつか候補に入れてはいたが、どこも大抵洗面台とトイレが一緒の三点ユニットバスばかりだった。家賃が安いから仕方ないのだろうが、実家でゆっくり湯舟に浸かる習慣しかない大聖にとって使い辛さしかないし、そもそも使い方がいまいちわからない。
 ふと台所に人影が見えた。こんな時間だが多分、秀真が帰ってきたのだろう。その人影が少々ふらふらとしていたような気がして心配になるが、そもそもこういう生活に慣れているはずだと大聖はそのまま風呂へ入った。湯舟に浸かるのは好きだが、逆上せやすいのであまり長風呂はしない。
 頭や体を洗い、さっと風呂に浸かっている間も隣が気になった。こんな時間だがどのみち向こうは帰ったばかりで起きているだろうしと、夜食用として夕食の残り物を少し準備し隣へ向かった。
 鍵を使って大聖が中に入ると、台所から部屋にまたがるようにして秀真が転がっているのが目に入ってくる。

「……っ?」

 慌てて駆け寄るも、どうやら具合が悪いとかではなくひたすら酔っぱらっているだけのようだ。少し離れたところからもうすでに酒臭い。

「秀真。こんなところで寝ようとするな。いくら酔っててもせめて布団までがんばれるだろう? どうせまた敷きっぱなしだろうし」

 部屋を覗くと、案の定整える気もないといった様子で掛け布団がぐちゃぐちゃのまま、敷きっぱなし状態の布団が鎮座している。

「んぁ? ねみぃんだよ……」

 一応反応はある。少なくとも急性アルコール中毒ではないようだと大聖は冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを勝手に出した。勝手に開けても、どのみち水や酒以外ほぼ何も入っていない。水を秀真に差し出すと、かろうじて受け取ってきた。だからそのままにしていると秀真もそのままというか、ペットボトルを抱えるようにしてまた眠ろうとする。

「それは抱き枕じゃない。飲むためのものだ」
「あー」
「……はぁ」

 ため息つくと、大聖はペットボトルを奪い取った。キャップを開けると、無理やり秀真に飲ませようとする。

「ちょー……えっと、みぉちゃん? おいたは駄目らろ」

 ミオ?
 おいた?

 親戚か何かに小さな子どもがいるのだろうか。にしてもなぜ男に対して幼女と間違えることができるのだと、大聖は微妙な顔になりながら無理やり口にペットボトルを突っ込んだ。年寄りの介護ではあるまいし、乱雑にしても問題ないだろうとそのまま強引に飲ませる。

「もー零れちゃうらろぉ」
「……?」

 酔っぱらっているせいで口調も変なのだろうとは思うが、それにしても妙に甘えを感じるというか、媚を感じるというか、何かしら違和感を覚える。そもそも幼女ともし勘違いしているのならもう少ししっかりしろと言いたい。

「都会の人間はやっぱよくわからないな」
「んー? 何ー?」
「……いいから着替えて寝ろよ」
「んふ……さくらちゃん、せっかちらなー」

 誰だよサクラ! というかミオはどうした。

 呆れていると、相当酔っている様子の秀真が酔ってよろけたのか大聖を押し倒そうとしてきた。それをあやすようにいなし、構わず着替えさせようと服を脱がしていく。大聖からしたら派手なシャツのボタンを外していくとその下は素肌で、つい「アンダーシャツくらい着ろよ」と母親のように思ったりする。

「にしても寝巻きはどれだ」
「ねまきぃ? ゆあちゃん案外古風」

 だからユアって誰だよ。

 なぜ先ほどから何人もの名前が出てくるのかと大聖は微妙な顔を秀真へ向けた。親戚か何かの幼女かと勝手に思っていたが、この様子だともしかしたらホストの顧客名なのかもしれない。だとしたら相変わらず破廉恥なやつだなと思いながらズボンも脱がしていると抱き寄せられた。

「何してるんだ」
「大丈夫……ひなだけらって」

 何が大丈夫なのか。そもそも客だとしてもひょっとして彼女だとしても、あまりに無用心過ぎて大丈夫どころか悲劇のメロドラマが始まりそうだ。

「ちっとも大丈夫じゃないぞ」
「照れてんの? いつもはもっと大胆らろぉ」

 大胆なのはミオなのかサクラなのかユアなのかヒナなのかは知らないが、よく大の男相手に間違えられるなと大聖はますます呆れた。酔うとこれほど馬鹿になるのなら、大聖は二十歳になっても酒はなるべく控えようと心に誓った。
 実のところ実家では親戚の集まりなどでたまにほんの少し飲ませてもらうこともあり、苦手ではないということはわかっているのだが、酔っぱらいの始末の悪さはそれこそ親戚などでも見てきている。

「大胆なのはあんただ。いい加減にして着替えてくれないか」

 ため息つきそうになっていると「んー、わかってるって。ちゅーらろ」とだらしのない表情で秀真が顔を近づけてくる。

「わ、わかってない。わかってないぞ! 我に返ってくれ」

 目つきはさておき、いくら美形だろうが男からキスをされようと顔を近づけられる状況には穏やかでいられない。ドン引きして顔を青ざめながら大聖は押し退けようとしたが、酔って遠慮のないせいか秀真の力は意外にも強く、攻防を繰り広げた挙句布団近くの床に思い切り押し倒された。

「いった……!」

 無意識に身を強張らせていたのか、頭や背中が床に思い切り直撃することはなかったが、痛いものは痛い。思わず力が抜けていると秀真が覆いかぶさってきた。
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