4 / 16
クリスマスが終わるまで……
4 Nikolai
「俺、今お前に鼻で笑われるようなこと言った?」
ムッとして聞けばまたニッコリ笑みを見せてくる。どうにもつかみ難いやつだなと倭は微妙な顔で、ピアノの前に座っている柚右を見下ろした。
「単純な人だなあと」
「……とりあえず馬鹿にしてるよな?」
「まさか。褒めてますよ。チョロ……いえ、素直でわかりやすくていいじゃないですか」
「お前さっきも絶対言いかけてたけど、ちょろいって言おうとしてるよな……?」
「まさか。そういえば僕の仕事を」
「僕の仕事? ああ、アルバイトってこと? この学校ってやってよかったっけ?」
「……まぁいいですけど、とにかく僕の仕事を手伝ってくれている子がね、マサと全然似てはいないんですけど、それこそ本当にチョロい性格していて。多分そのせいですよ、ついそう言いかけてしまうのは。口癖になっているのかも。もちろん全然似ていませんよ。だいたい僕はその子とつき合おうとは思いませんしね。マサとはつき合いたいですが」
相変わらず読み取りづらい笑顔で言ってくる言葉を、倭は微妙な顔で聞いていたが最後にとてつもない引っかかりを覚えた。
「つき合う、って、もしかしてそっち……?」
「そっち、とは?」
「だから! えっと、その、どっか行くのについて来てってことじゃなくて、デートしたり何かイチャイチャしたりとかするほう……」
「はは」
ニコニコした顔で見てくる。ああ、また馬鹿にしているんだなと痛いほどに伝わってきて倭は口元が引きつった。
「って、いやいやいや、ちょ、待て。おかしいだろ。お前、男が好きなの? だとしても悪いな、俺は女が好きなの。だからつき合えない。お前のことは性格悪そうと思いつつピアノめっちゃ上手いしカッコいいと思うけど、それに案外一緒にいて楽しくもあるけど、無理だから。なあ、だから他に欲しいもの考えてくんない?」
「男だの女だの、どうでもよくないですか?」
「よくなくねぇよっ? やたらお綺麗なマッシュヘアーだと思ってたらお前、とんだぶっ飛び野郎だな」
「あなたもどうでもよくなりますよ」
失礼、と言いながら柚右は椅子に座ったまま腰に手を回すと倭を引き寄せてきた。いきなりでバランスを崩した倭の背中に腰にあった手を移してさらに引き寄せてくる。
「何す」
るんだ、と言いかけた倭の唇にそして呆気ないほど簡単にキスしてきた。咄嗟のことで身動きすら取れなかった倭は、その唇が自分の唇やその裏側あたりに与えてくる感触に思わずされるがままになる。何だこの気持ちがいい感覚はと思い切りされるがままで、ようやく唇が離れた時はついボーっとしてしまった。
「マサ?」
ニコニコ名前を耳元で囁かれ、ようやくハッとなり慌てて体を離す。
「お前な! いきなり気持ち悪いことしてくんじゃねえよ。男は無理っつっただろ! マナーもへったくれもないのかっ?」
「気持ち悪かったですか?」
じっと目を見ながら聞かれ、倭は少々しどろもどろになる。
「いや、そりゃその、気持ちよかったけど……、じゃなくて! 男同士でキスは無理なの! そういう意味で気持ち悪……」
「悪くなかったんですよね、でも」
「だ、だから」
「気持ち、いいでしょう? なのに気持ち悪いなんて無理やり思ったら勿体なくないですか? だって僕とマサがキスしたり何かすることでお互い呪いでも受けるんですか? それとも病気になる? ああもちろん僕は変な病気なんて持ってませんよ。病院へ行って証明しましょうか?」
「いやだからそういう」
「病気にもならない。ただ気持ちがいいだけ。なのに何が無理なんです? 世間体ですか? ならこっそりでも僕は構いませんが」
「いや、その」
「ねえ、考えてもみて? ここでピアノを練習してだんだん上達していく上に、周りに隠れてこっそり気持ちいいことするところを。僕の指、結構好きでしょう? さっきジッと見てましたもんね。キスだけじゃないですよ。この指でマサの敏感なところ、つたうように触れたり、巧みに動かしたりされたら? 僕の見た目、綺麗だと思ってくれてるんですよね? そんな僕にキツイ言葉じゃなくて優しく大切に扱われるところを、考えてみて」
冷静に聞いたらろくでもないことばかり言われていたのではないかと思えたはずだ。だが柚右の声がいいからだろうか、それとも話し方に何か引き込ませるような特徴でもあるのだろうか。倭は妙に心拍数が上がってくるのを感じた。あの指で触れられるところを思わず想像して息が乱れそうになる。小馬鹿にするような態度を度々取ってくる柚右が優しく大事に自分を扱うところを浮かべてますます息苦しくなる。
「な、んだよ……」
「想像だけだとピンときませんか? なら実際感じてみればいい」
柚右がまたゆっくり倭を引き寄せてくる。ゆっくり優しくだ。だから抵抗ならいくらでもできた。いくらでも。だというのに抗えない自分を倭はどこか遠いところで感じているかのような感覚だった。
ピアノの練習はその後、毎日言われた通り続けた。最初は本当にぎこちなかった指も、気づけば次第に動くようになっていた。毎日あんな短時間だというのにすごいと倭は純粋に思う。性格はアレだが、教えるのは意外にも上手いのかもしれない。
あと上手いといえば、何というか、色々触れたりするのもきっと、多分、とても上手いのだと、思う。認めたくないが、思う。指などの何でもないところに柚右が触れるだけであんなに抗えなくなる自分を、倭は知らない。あんな風に煽るような言い方をしつつも、最初の頃に柚右が触れてきたのは指や手のひら、手首など、服に覆われていない何でもないような部分だった。なのにその触れる指がそっと離れただけで堪らなく物足りなくなってしまう自分がいる。あとで考えるとおかしいとしか思えないというのに、もっと触れてほしくて仕方なくなる。
「触れられてそんな風になる倭はかわいいですね」
「とてもいい子」
普通ならそんな風に言われたら「ふざけんな」となりそうなのに、あの顔の、あの声で囁くように言われるともっと言われたくなる。
「おーい、峰! 今日皆でどっか寄って帰らね?」
「悪い、俺、しばらく予定あって無理」
「えー、まだ? 最近ずっと放課後速攻でどっか行くけど、何なん?」
「秘密!」
友だちに誘われても、気づけば倭はピアノの練習を優先していた。
ムッとして聞けばまたニッコリ笑みを見せてくる。どうにもつかみ難いやつだなと倭は微妙な顔で、ピアノの前に座っている柚右を見下ろした。
「単純な人だなあと」
「……とりあえず馬鹿にしてるよな?」
「まさか。褒めてますよ。チョロ……いえ、素直でわかりやすくていいじゃないですか」
「お前さっきも絶対言いかけてたけど、ちょろいって言おうとしてるよな……?」
「まさか。そういえば僕の仕事を」
「僕の仕事? ああ、アルバイトってこと? この学校ってやってよかったっけ?」
「……まぁいいですけど、とにかく僕の仕事を手伝ってくれている子がね、マサと全然似てはいないんですけど、それこそ本当にチョロい性格していて。多分そのせいですよ、ついそう言いかけてしまうのは。口癖になっているのかも。もちろん全然似ていませんよ。だいたい僕はその子とつき合おうとは思いませんしね。マサとはつき合いたいですが」
相変わらず読み取りづらい笑顔で言ってくる言葉を、倭は微妙な顔で聞いていたが最後にとてつもない引っかかりを覚えた。
「つき合う、って、もしかしてそっち……?」
「そっち、とは?」
「だから! えっと、その、どっか行くのについて来てってことじゃなくて、デートしたり何かイチャイチャしたりとかするほう……」
「はは」
ニコニコした顔で見てくる。ああ、また馬鹿にしているんだなと痛いほどに伝わってきて倭は口元が引きつった。
「って、いやいやいや、ちょ、待て。おかしいだろ。お前、男が好きなの? だとしても悪いな、俺は女が好きなの。だからつき合えない。お前のことは性格悪そうと思いつつピアノめっちゃ上手いしカッコいいと思うけど、それに案外一緒にいて楽しくもあるけど、無理だから。なあ、だから他に欲しいもの考えてくんない?」
「男だの女だの、どうでもよくないですか?」
「よくなくねぇよっ? やたらお綺麗なマッシュヘアーだと思ってたらお前、とんだぶっ飛び野郎だな」
「あなたもどうでもよくなりますよ」
失礼、と言いながら柚右は椅子に座ったまま腰に手を回すと倭を引き寄せてきた。いきなりでバランスを崩した倭の背中に腰にあった手を移してさらに引き寄せてくる。
「何す」
るんだ、と言いかけた倭の唇にそして呆気ないほど簡単にキスしてきた。咄嗟のことで身動きすら取れなかった倭は、その唇が自分の唇やその裏側あたりに与えてくる感触に思わずされるがままになる。何だこの気持ちがいい感覚はと思い切りされるがままで、ようやく唇が離れた時はついボーっとしてしまった。
「マサ?」
ニコニコ名前を耳元で囁かれ、ようやくハッとなり慌てて体を離す。
「お前な! いきなり気持ち悪いことしてくんじゃねえよ。男は無理っつっただろ! マナーもへったくれもないのかっ?」
「気持ち悪かったですか?」
じっと目を見ながら聞かれ、倭は少々しどろもどろになる。
「いや、そりゃその、気持ちよかったけど……、じゃなくて! 男同士でキスは無理なの! そういう意味で気持ち悪……」
「悪くなかったんですよね、でも」
「だ、だから」
「気持ち、いいでしょう? なのに気持ち悪いなんて無理やり思ったら勿体なくないですか? だって僕とマサがキスしたり何かすることでお互い呪いでも受けるんですか? それとも病気になる? ああもちろん僕は変な病気なんて持ってませんよ。病院へ行って証明しましょうか?」
「いやだからそういう」
「病気にもならない。ただ気持ちがいいだけ。なのに何が無理なんです? 世間体ですか? ならこっそりでも僕は構いませんが」
「いや、その」
「ねえ、考えてもみて? ここでピアノを練習してだんだん上達していく上に、周りに隠れてこっそり気持ちいいことするところを。僕の指、結構好きでしょう? さっきジッと見てましたもんね。キスだけじゃないですよ。この指でマサの敏感なところ、つたうように触れたり、巧みに動かしたりされたら? 僕の見た目、綺麗だと思ってくれてるんですよね? そんな僕にキツイ言葉じゃなくて優しく大切に扱われるところを、考えてみて」
冷静に聞いたらろくでもないことばかり言われていたのではないかと思えたはずだ。だが柚右の声がいいからだろうか、それとも話し方に何か引き込ませるような特徴でもあるのだろうか。倭は妙に心拍数が上がってくるのを感じた。あの指で触れられるところを思わず想像して息が乱れそうになる。小馬鹿にするような態度を度々取ってくる柚右が優しく大事に自分を扱うところを浮かべてますます息苦しくなる。
「な、んだよ……」
「想像だけだとピンときませんか? なら実際感じてみればいい」
柚右がまたゆっくり倭を引き寄せてくる。ゆっくり優しくだ。だから抵抗ならいくらでもできた。いくらでも。だというのに抗えない自分を倭はどこか遠いところで感じているかのような感覚だった。
ピアノの練習はその後、毎日言われた通り続けた。最初は本当にぎこちなかった指も、気づけば次第に動くようになっていた。毎日あんな短時間だというのにすごいと倭は純粋に思う。性格はアレだが、教えるのは意外にも上手いのかもしれない。
あと上手いといえば、何というか、色々触れたりするのもきっと、多分、とても上手いのだと、思う。認めたくないが、思う。指などの何でもないところに柚右が触れるだけであんなに抗えなくなる自分を、倭は知らない。あんな風に煽るような言い方をしつつも、最初の頃に柚右が触れてきたのは指や手のひら、手首など、服に覆われていない何でもないような部分だった。なのにその触れる指がそっと離れただけで堪らなく物足りなくなってしまう自分がいる。あとで考えるとおかしいとしか思えないというのに、もっと触れてほしくて仕方なくなる。
「触れられてそんな風になる倭はかわいいですね」
「とてもいい子」
普通ならそんな風に言われたら「ふざけんな」となりそうなのに、あの顔の、あの声で囁くように言われるともっと言われたくなる。
「おーい、峰! 今日皆でどっか寄って帰らね?」
「悪い、俺、しばらく予定あって無理」
「えー、まだ? 最近ずっと放課後速攻でどっか行くけど、何なん?」
「秘密!」
友だちに誘われても、気づけば倭はピアノの練習を優先していた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。