ヴェヒター

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3Wednesday

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「ん、んん……っ」

 青葉の目の前で慶一が睦の上に乗らされ突き上げられている。
 いつものように慶一を浚って、そしていつものように連れ込んだところで弄んで。そうしたらいつも学校では大抵見ているだけの睦が「今日は俺、慶一くん堪能したい」などと言い出してきた。

「え」
「何? 何か嫌なの? あお」

 ニコニコ見てくる睦に青葉は「違う。堪能すれば」としか言えなかった。

 嫌?

 そんなわけない。睦とはむしろ一緒に楽しみたいくらいなのだ。嫌なはずない。
 だというのに青葉の中でよくわからないものがモヤモヤしていた。言い表せない違和感が落ち着かない。

「そう? よかった、じゃあねー、あおはね、そこに座って俺に突っ込まれて切なそうに顔歪めてる慶一くんじっくり見ることで堪能するといいよ」

 相変わらず自分の兄ながらにゲスなことをかわいいとさえ言える笑顔でさらりと言ってくる。

「……うん」

 ただいつもなら青葉もそれを聞いてものすごく楽しい気分になっているはずだった。なのになぜかモヤモヤが増したような気がする。もしかしたら昼に食べたものが合わなかったのかもしれない。
 青葉は言われた通り素直に地べたへ直接座った。そこから見ると後ろから睦に抱えられ体を弄られている慶一を少し下からのアングルで見られる。いつもと違った視点からの慶一に、青葉は変にドキリとした。
 睦は相変わらず弄るといっても主に後ろの穴を解しているくらいだ。ふとこの間慶一と二人きりでした行為を青葉は思い出した。
 表現しがたいくらい貪りたくて仕方なく、ひたすら青葉は慶一を舐り倒し味わいつくした気がする。他の誰かにも今までそういうことはしたことなかったし、味わいつくした後も他でしたいとも思えない。そもそもあの日以来、相変わらず青葉は誰ともセックスしていない。慶一とすらしていなかった。
 一度睦に「慶一くんと遊ぶ?」と言ってはみたが「そうだねー、最近遊んでないし思いきりどろっどろにしてあげようかぁ」と言われて激しく動揺してしまった。
 そういえばその時もうろたえながら少しモヤモヤしていた、と青葉はふと思った。いつだって自分のしたいことや考えが明確だったはずなのに、余計に気持ち悪い。

「ん、ぁあっ」

 だが考えていると慶一の小さく漏れた声が聞こえて引き戻された。
 指で中を解されていた時から少し赤くなりなにやら堪えるような顔をしていた慶一が、大きく足を開かされ背後から貫かれている。乱れたシャツから時折見え隠れする乳首が白い肌に対して妙に鮮明な色に見え、とても淫靡だ。
 解されている時にたっぷり濡らされたせいか、動くたびに小さく厭らしい水音が聞こえてくる。その結合部が少し泡立っていることすら青葉のところからよく見えた。
 青葉はだがそれよりも何よりも、慶一の様子に思わず見入ってしまった。背後から体を揺らされている慶一は必死に何かを堪えるような顔している。貫かれ、嫌そうに、だが快楽に溺れまいと必死に堪えつらそうにしている慶一の様子があまりに堪らなく、自分のものがズキリと痛む。
 いっそ、泣かせたい。つらくてじゃなく、気持ちよすぎて我慢できないからめちゃくちゃにして欲しいと泣いて請わせたい。
 そしてモヤモヤも広がる。ああして堪えているのが自分のものが原因でないことに、切なげな顔させているのが自分でないことに、そしてそんな堪らない表情をしている慶一を味わっているのが自分でないことに。

 ……は? ていうか、何それ。

「っひ、ぁっ、あッ、あぁっ、あーっ」

 思いきり突き上げられ慶一がぶるりと体を震わせながら漏らしてくる声に、青葉はまたハッとなった。

「慶一くん、イっちゃったねー。気持ち、よかった?」
「……ん、ぁ……、中……」

 楽しそうな睦に対し、慶一がまた嫌そうになにやら呟いている。まさか、と青葉は立ち上がった。

「あは、ごめんね、慶一くん。また中で出しちゃった。妊娠、しちゃう?」
「するわけねーよねっ? つかほんっとむつ、マジ何してくれてんの? 何でまた中に出しちゃうのっ?」

 二人の側へ行くと、青葉は慶一を抱き寄せ睦のものを抜かせた。また少し厭らしい音を立て引き抜かれると慶一の体が震える。

「……えー? だって生のがいいし」
「さすがむつ、すっごくサイテーな返事ありがとね! もー、それもガッコでさ、何してくれてんの」
「……ガッコとか関係なく焦ったくせに」

 睦がぼそりと何か言ってきた。

「何?」
「何でも? とりあえずさー、慶一くん久々だったけどね、よかったぁ。むつ、じゃあ中の出してあげてよ。代わりに俺が生徒会と風紀に誤魔化しといてあげるから」

 あはは、と笑いながら言ってくる睦に、青葉は慶一の体を離してから微妙な顔した。

「むつが出したくせに何そのやっといてあげる感。もー」
「よろしくぅ。じゃあね、慶一くん、また、しようね」

 睦はニッコリ笑った後、なぜか青葉をチラリと見てから慶一の額にちゅっとキスした。

「……っ」

 青葉が唖然と見ていると、今度こそ睦は楽しげに教室を出ていってしまった。

 あのむつが、キス? 慶一くんにキスした? 慶一くん、キスされた?

 たかだか額だというのにものすごく落ち着かない。先ほど感じていたモヤモヤが増してきた。

「……どうか、したのか」

 よほど唖然としていたのだろうか。犯され、しかもそれを見られていたとは思えないほど淡々と、いっそ男らしいともいえる勢いで慶一が青葉に聞いてきた。青葉は慶一を見る。キスされても表情一つ変えていない。

「……慶一くんは俺に見られながらむつに突っ込まれて、そんでキスまでされたのに何とも思わないの?」

 思わず口から出た後に自分でもないな、と思った。

 自分たちがやっておきながら、何その質問。

 案の定、慶一は少し眉をひそめながら青葉を見てきた。とはいえ動いたのが眉程度なのが慶一らしい。

「何とも思わないと思えるお前に驚く……」
「……ちゅーされても顔色一つ、変わってねーし」
「……今さら額のキスにどう変えろ、と……」

 ことごとく当たり前なことを返されている。そりゃそうだとしか思えない。だが青葉が無意識に求めていたのかもしれない答えと違ったのか、ものすごくもどかしい気分になった。

「だって……」

 言いかけたところで慶一が不快そうに、また眉をひそめた。ふと足の付け根に目がいく。白く濁った半透明のものが伝っているのが見える。一旦収まっていた青葉のものがまた一気にきつくなってきた。

「と、りあえず中の、出してあげるよ」
「……どうやって……? また前みたいに指で、か……」

 慶一が嫌そうに呟く。睦に指どころかペニスを先ほどまで突っ込まれていたのに嫌そうにしてくる慶一に、青葉の中でモヤモヤした胸やけのような感じを通りこしてチリッと痛みさえ走った。青葉は一旦離した慶一の体に触れると、そのまま片足を抱えあげる。

「……っちょ」

 慶一が慌てたようにそれから逃れようとしてきた。

「かき出してあげるから見せて」
「何、言っ……て」

 青葉が見つめていると慶一が居たたまれなさそうな顔を少しそむけた。先ほどからきつくなっていた青葉のものがますます一層、きつくなる。

「ああ、それともあれ? 指じゃなくてちんこのが、いいとか?」

 欲望とひりつくようなわけわからない痛みにとらわれ、気づけばそう言っていた。案の定、慶一はまた嫌そうな顔になる。
 いつもなら自分の身勝手さをわかった上で楽しんでいるはずなのに、なぜか青葉は自分の態度に対してすら、少しモヤモヤした。
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