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7話
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ようやく完全に目が覚めた高典は自分が降りればいいと気づいた。運動神経も普通ではあるが我ながら今の動きは運動選手にも匹敵するのではと思う勢いで飛び退くように床に降りる。
「お前どっかおかしいんじゃないのか」
そしてベッドの上でポカンとしている周太を思いきり睨みつけた。
「俺ですか?」
「男相手にってのはさておき」
それを言っても仕方ないのは、把握したくないが把握するしかない。周太が高典をそういう意味で好きだとは初対面で速攻言われたが、キスされたせいで、嫌というほど間違いではないと実感させられた。周太いわく、男に全く興味がない高典同様男には興味ないらしいが、高典は好きだという。
「いくら好きな相手だろうが相手の了承もなしにキスしていいと思ってんのか」
なので男相手というのはさておいたとしても、これだけはさておけない。少なくとも高典の常識では好きな異性相手ですら一方的に好きだと告げて追いかけまわし許可なくキスまでする相手はどう考えてもおかしい。
「それはそうですね。ごめんなさい」
「だいた……、え? 認めんの?」
シュンとしたように謝ってくる周太を、今度は高典がポカンと見る。
「認めないほうがよかったですか?」
「いやとてつもなく認めて欲しいわ! ま、まあわかったならいい。よくないけど」
「はい。これからはいきなりじゃなくて聞くようにしますね」
「おう」
頷いた後に何となく違和感がした。腕組みして首を傾げていると「それ、お手伝いしましょうか?」と言われる。
「手伝い? 何の? 考えの?」
「考え? いえ、高典先輩のその素敵な状態のですね」
素敵な状態、とは?
ニコニコとしながら周太が指差してくる先を高典は目で追った。自分の下に何が、と俯くとジャージパンツの股間辺りがわかりやすく盛り上がっている。
「こ、っれは朝だから! つかお前も男なんだからわかるだろ! 別にいらん! これはそういうんじゃなくて、っていうか手伝うって何だよ手伝うってほんとお前頼むから出てって!」
ようやく「高典先輩の頼みなら仕方ありません」だのなんだの言っている周太を追い出すと、高典はドアに背を向けながらへたり込んだ。だがホッとする前に股間に目が行き、微妙な気持ちになりながら用を足しにトイレへ向かう。
しっこも出したし、とようやくホッとしたところで先ほど首を傾げていた違和感の理由に気づけた。
「これからはって何だよ……! 聞くようにする云々じゃなくて、これからはって! これからなんて二度とないんだわ……!」
頭を抱えながら思いきり叫んでいた。
周太のせいで起きた時間は遅くなかったものの、一人で騒いでいたせいもあり食堂に行く暇もなくなった。仕方なく売店でいくつかおにぎりとついでに弁当も買い、学校へ向かう。寮だけに出てすぐが学校ではあるがとりあえず歩きながらおにぎりの一つを頬張った。
「高典先輩、そこはあれじゃないですか、食パン咥えて走るとこじゃないですか?」
「あーそれな。遅刻遅刻とか言いながら走って道の角で攻略キャラにぶつか……じゃねえよ何でいるんだよお前!」
うんうんとつい反応している途中で誰が話しかけてきたか気づき、一旦立ち止まってしまっていた高典は目を見開きながら振り向いた。
「かわいい目玉が落ちそうですよ」
「言い方……! だいたい俺をヒロイン枠にしてくんな」
ムッとしながらとりあえず歩き出す。すると周太も当然のようについて来た。もちろん目的地が同じなので仕方ないと言えば仕方ないが、別行動して欲しいと心底思う。
「おにぎり食べながら歩いてるからつい。っていうか食堂に来られなかったんですね」
その言い方は待ってたんかい、と内心微妙になりながら「お前のせいで時間なくなった」とだけ言い返した。
「ああ、抜いて……」
「抜いてねえわ……! 朝勃ちだっつってんだろ!」
思いきり言い返すと周りで「朝勃ち」「朝勃ちな」などと呟いている生徒や「そんなもんいちいち宣言すんなよ」と引いたように見てくる生徒がいて、高典は即座に軽く死にたくなった。とりあえず早歩きでこの場から一刻も早く立ち去ろうと試みる。
「っていうか当然のようについて来るな」
「そう言われても俺もこの場所に用事ですし」
「だとしても靴箱は全然場所違うだろうが」
「高典先輩がゆっくり靴を履き替えてる間に上靴に履き替えましたから、俺」
「そこじゃない」
だいたいゆっくりになったのは先ほど死ぬほど恥ずかしい思いをしたせいで、早歩きしたものの今頃になってだらだら動いてしまうほど気力が湧かなくなったからだ。
「まあいいじゃありませんか。とりあえず高典先輩の教室までご一緒しますし」
「ご一緒いらない、何でだよ!」
「ええ? だって好きな人とは少しでも一緒にいたいじゃないですか」
眩しいほどの美形の微笑みがここまで鬱陶しいとはと高典は遠い目になりながら思った。
そういえばさっきは「高典先輩の頼みなら仕方ありません」とかなんとか言って思ってたよりは素直に部屋から出てくれたな……。
毎日周太との遭遇、というよりは襲来のせいでそろそろ高典の感覚が麻痺してきたのかもしれない。周太が部屋から出て行ったことを、出会った当初なら「思ってたより素直に出てくれた」などと前向きに考えたりはしなかった。
「頼むから朝から俺につきまとわないで」
「え? それは無理ですよ。好きなので」
「はぁっ? お前さっきは俺の頼みなら仕方ないって……」
「仕方なく頼まれることもありますけどね、それもやっぱり好きなので」
周太は輝かんばかりの笑みを浮かべて高典を見てきた。
「お前どっかおかしいんじゃないのか」
そしてベッドの上でポカンとしている周太を思いきり睨みつけた。
「俺ですか?」
「男相手にってのはさておき」
それを言っても仕方ないのは、把握したくないが把握するしかない。周太が高典をそういう意味で好きだとは初対面で速攻言われたが、キスされたせいで、嫌というほど間違いではないと実感させられた。周太いわく、男に全く興味がない高典同様男には興味ないらしいが、高典は好きだという。
「いくら好きな相手だろうが相手の了承もなしにキスしていいと思ってんのか」
なので男相手というのはさておいたとしても、これだけはさておけない。少なくとも高典の常識では好きな異性相手ですら一方的に好きだと告げて追いかけまわし許可なくキスまでする相手はどう考えてもおかしい。
「それはそうですね。ごめんなさい」
「だいた……、え? 認めんの?」
シュンとしたように謝ってくる周太を、今度は高典がポカンと見る。
「認めないほうがよかったですか?」
「いやとてつもなく認めて欲しいわ! ま、まあわかったならいい。よくないけど」
「はい。これからはいきなりじゃなくて聞くようにしますね」
「おう」
頷いた後に何となく違和感がした。腕組みして首を傾げていると「それ、お手伝いしましょうか?」と言われる。
「手伝い? 何の? 考えの?」
「考え? いえ、高典先輩のその素敵な状態のですね」
素敵な状態、とは?
ニコニコとしながら周太が指差してくる先を高典は目で追った。自分の下に何が、と俯くとジャージパンツの股間辺りがわかりやすく盛り上がっている。
「こ、っれは朝だから! つかお前も男なんだからわかるだろ! 別にいらん! これはそういうんじゃなくて、っていうか手伝うって何だよ手伝うってほんとお前頼むから出てって!」
ようやく「高典先輩の頼みなら仕方ありません」だのなんだの言っている周太を追い出すと、高典はドアに背を向けながらへたり込んだ。だがホッとする前に股間に目が行き、微妙な気持ちになりながら用を足しにトイレへ向かう。
しっこも出したし、とようやくホッとしたところで先ほど首を傾げていた違和感の理由に気づけた。
「これからはって何だよ……! 聞くようにする云々じゃなくて、これからはって! これからなんて二度とないんだわ……!」
頭を抱えながら思いきり叫んでいた。
周太のせいで起きた時間は遅くなかったものの、一人で騒いでいたせいもあり食堂に行く暇もなくなった。仕方なく売店でいくつかおにぎりとついでに弁当も買い、学校へ向かう。寮だけに出てすぐが学校ではあるがとりあえず歩きながらおにぎりの一つを頬張った。
「高典先輩、そこはあれじゃないですか、食パン咥えて走るとこじゃないですか?」
「あーそれな。遅刻遅刻とか言いながら走って道の角で攻略キャラにぶつか……じゃねえよ何でいるんだよお前!」
うんうんとつい反応している途中で誰が話しかけてきたか気づき、一旦立ち止まってしまっていた高典は目を見開きながら振り向いた。
「かわいい目玉が落ちそうですよ」
「言い方……! だいたい俺をヒロイン枠にしてくんな」
ムッとしながらとりあえず歩き出す。すると周太も当然のようについて来た。もちろん目的地が同じなので仕方ないと言えば仕方ないが、別行動して欲しいと心底思う。
「おにぎり食べながら歩いてるからつい。っていうか食堂に来られなかったんですね」
その言い方は待ってたんかい、と内心微妙になりながら「お前のせいで時間なくなった」とだけ言い返した。
「ああ、抜いて……」
「抜いてねえわ……! 朝勃ちだっつってんだろ!」
思いきり言い返すと周りで「朝勃ち」「朝勃ちな」などと呟いている生徒や「そんなもんいちいち宣言すんなよ」と引いたように見てくる生徒がいて、高典は即座に軽く死にたくなった。とりあえず早歩きでこの場から一刻も早く立ち去ろうと試みる。
「っていうか当然のようについて来るな」
「そう言われても俺もこの場所に用事ですし」
「だとしても靴箱は全然場所違うだろうが」
「高典先輩がゆっくり靴を履き替えてる間に上靴に履き替えましたから、俺」
「そこじゃない」
だいたいゆっくりになったのは先ほど死ぬほど恥ずかしい思いをしたせいで、早歩きしたものの今頃になってだらだら動いてしまうほど気力が湧かなくなったからだ。
「まあいいじゃありませんか。とりあえず高典先輩の教室までご一緒しますし」
「ご一緒いらない、何でだよ!」
「ええ? だって好きな人とは少しでも一緒にいたいじゃないですか」
眩しいほどの美形の微笑みがここまで鬱陶しいとはと高典は遠い目になりながら思った。
そういえばさっきは「高典先輩の頼みなら仕方ありません」とかなんとか言って思ってたよりは素直に部屋から出てくれたな……。
毎日周太との遭遇、というよりは襲来のせいでそろそろ高典の感覚が麻痺してきたのかもしれない。周太が部屋から出て行ったことを、出会った当初なら「思ってたより素直に出てくれた」などと前向きに考えたりはしなかった。
「頼むから朝から俺につきまとわないで」
「え? それは無理ですよ。好きなので」
「はぁっ? お前さっきは俺の頼みなら仕方ないって……」
「仕方なく頼まれることもありますけどね、それもやっぱり好きなので」
周太は輝かんばかりの笑みを浮かべて高典を見てきた。
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