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10話
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仕方なくおにぎりを頬張っていると周太がニコニコとそれを見てくる。
「……何」
「無理やり連れてこられたようなものなのに結局おとなしくお昼ご飯を食べてる高典先輩がかわいくて」
「はぁ? というかおい、無理やり連れてきた自覚はあるんだな?」
強引に引っ張られ、抵抗しようにも逃げようにもままならなくて高典は元々考えていた通り資料室の一室にいた。予定通りではないのは周太がいるということだ。そもそもそれを避けんがため、わざわざここへ来ようとしていたのにと思う。
ひたすらスチール製の書庫しかない部屋もあればいくつか机と椅子が置いてある部屋もある。鍵の開いていた二人がいるこの部屋には幸い机と椅子があったので高典はそこへ座り、買っておいたものを先ほどから食べていた。周太を避けたいとはいえ、いるから昼食をとらないなんて意地を張っても仕方ない。
「美味しいですか?」
「俺が言ったことはスルーかよ。美味いよ。でもそろそろ食堂で食べたいのでお前はもう来ないでください」
「いつでも好きに食堂に行かれたらいいじゃないですか」
「お前のせいで落ち着いて食えないんだわ。わかってんの? 俺がお前を避けてるだけじゃなくてな、お前が俺をそういう意味で好きだと堂々と言ってきてから気づけば他のクラスのやつまで知るようになってんだぞ?」
「別に俺が高典先輩を好きだと誰が知ろうが構わないじゃないですか」
「構うわ。おかげさまで尾ひれまでついて俺とお前がすでに付き合ってるカップルだってことになってたりするんだぞ」
「最高じゃないですか」
「最低だよ! お前じゃないけどあいつら聞きもしねえ。いくら違うって言ってもカップル扱いだよ。そんなでお前と教室や食堂で仲よく飯食っててみろ。噂がどうなるか火を見るよりも明らかだろうが」
「あは、一緒なら仲よく食べてくれるんですか」
「そこはどうでもいいんだよ! 言葉のあやっていうか。じゃなくて噂がだな……」
「噂じゃなくて現実にすればいいんですよ」
向かいに座っていた美形がますますもって綺麗な笑顔になりながら立ち上がった。おにぎりを食べ終え菓子パンに手をつけようとしていた高典は一瞬のうちに手を止めて口元をひきつらせる。
「何で立ち上がった」
「そろそろ十分食べてそうな高典先輩のそばに行くからですが」
「来なくていい。むしろ来るな。あと、そ、そうだよお前、飯は? 食べてないんじゃないの? よかったらこれ食べるか? 食べていいんだぞ?」
今さらながらに高典は、周りに誰もいないような離れた場所に変態と二人きりだということに気づいた。周太を避けていた理由も最近は周りが鬱陶しいからというのもあったが、そもそもは周太がやばそうでしかないからだ。だが一見華奢そうで綺麗な顔立ちをした、穏やかそうで人懐こい男だけに、文句だけはずっと言い続けつつもついうっかり普通に接してしまったりしてしまう。
「俺は大丈夫です、気にかけてくれてありがとうございます。優しいですね、高典先輩は」
すぐ真横にまでくると、周太は微笑んでくる。
「優しくない。俺は優しくないし見た目も成績も運動もお前に比べて全然パッとしないし秀でたとこなんてないしあれだその、いいとこなんてほんとないから全然優良物件じゃない、から!」
「物件? 俺が高典先輩をそんなもの扱いするとでも思っているんですか? むしろ天使を崇めるように思っているのに」
「いやそれもういっそおかしい……」
「おかしくないですよ。確かに高典先輩はそんなに頭よくはなさそうですし運動神経も微妙かもですし見た目も中の上くらいかもですが」
「お前ほんとに俺好きなの?」
「大好きですよ。見た目、すごく爽やかで癒されますし中身もからっとしていてこっちまで晴れ晴れとした気持ちになりますし、成績や運動がいまいちでも人としては俺、秀でておられると思ってます。なんだかんだ言って邪険にしながらも俺を完全に無視しきれない面倒見のいい優しいとこも最高に好きです」
今まで生きてきてここまで褒められたことなどない。すごく肯定的に見てくれていてしかもそれを本当に心から思っているという感じが伝わってくる。
……はぁはぁ息を荒げながら言わなければ感動ものだったかもしれないな……!
「ほんと俺を好きになってくれるのは嬉しいことなんだろうけどお前はことごとく残念なんだよ……! あとマジで近寄んな。今のお前見てたら俺の貞操の危機しか感じない」
「間違ってないです」
「そうだろ、残念なんだよほんとおま……、……えっと、間違ってないってのは俺が言った残念って意味であってる、よな? そうだよな? そうだと言って」
「高典先輩を愛してますし、あなたが望むことは何でもしてあげたいし言ってあげたいですが」
「だよな! だから間違ってないのも残念だってことであって……」
「ですが、今は同意しかねます。高典先輩の身の危険は間違いなく迫ってます、けど安心してください。間違ってることもありますよ。貞操は危機じゃないです。だって俺相手なので操は守られ……」
「煩いんだよ……! 貞操の定義どうでもいいんだよ……! ああくそ、ムリ! 無理だから無理無理無理無理……!」
「……何」
「無理やり連れてこられたようなものなのに結局おとなしくお昼ご飯を食べてる高典先輩がかわいくて」
「はぁ? というかおい、無理やり連れてきた自覚はあるんだな?」
強引に引っ張られ、抵抗しようにも逃げようにもままならなくて高典は元々考えていた通り資料室の一室にいた。予定通りではないのは周太がいるということだ。そもそもそれを避けんがため、わざわざここへ来ようとしていたのにと思う。
ひたすらスチール製の書庫しかない部屋もあればいくつか机と椅子が置いてある部屋もある。鍵の開いていた二人がいるこの部屋には幸い机と椅子があったので高典はそこへ座り、買っておいたものを先ほどから食べていた。周太を避けたいとはいえ、いるから昼食をとらないなんて意地を張っても仕方ない。
「美味しいですか?」
「俺が言ったことはスルーかよ。美味いよ。でもそろそろ食堂で食べたいのでお前はもう来ないでください」
「いつでも好きに食堂に行かれたらいいじゃないですか」
「お前のせいで落ち着いて食えないんだわ。わかってんの? 俺がお前を避けてるだけじゃなくてな、お前が俺をそういう意味で好きだと堂々と言ってきてから気づけば他のクラスのやつまで知るようになってんだぞ?」
「別に俺が高典先輩を好きだと誰が知ろうが構わないじゃないですか」
「構うわ。おかげさまで尾ひれまでついて俺とお前がすでに付き合ってるカップルだってことになってたりするんだぞ」
「最高じゃないですか」
「最低だよ! お前じゃないけどあいつら聞きもしねえ。いくら違うって言ってもカップル扱いだよ。そんなでお前と教室や食堂で仲よく飯食っててみろ。噂がどうなるか火を見るよりも明らかだろうが」
「あは、一緒なら仲よく食べてくれるんですか」
「そこはどうでもいいんだよ! 言葉のあやっていうか。じゃなくて噂がだな……」
「噂じゃなくて現実にすればいいんですよ」
向かいに座っていた美形がますますもって綺麗な笑顔になりながら立ち上がった。おにぎりを食べ終え菓子パンに手をつけようとしていた高典は一瞬のうちに手を止めて口元をひきつらせる。
「何で立ち上がった」
「そろそろ十分食べてそうな高典先輩のそばに行くからですが」
「来なくていい。むしろ来るな。あと、そ、そうだよお前、飯は? 食べてないんじゃないの? よかったらこれ食べるか? 食べていいんだぞ?」
今さらながらに高典は、周りに誰もいないような離れた場所に変態と二人きりだということに気づいた。周太を避けていた理由も最近は周りが鬱陶しいからというのもあったが、そもそもは周太がやばそうでしかないからだ。だが一見華奢そうで綺麗な顔立ちをした、穏やかそうで人懐こい男だけに、文句だけはずっと言い続けつつもついうっかり普通に接してしまったりしてしまう。
「俺は大丈夫です、気にかけてくれてありがとうございます。優しいですね、高典先輩は」
すぐ真横にまでくると、周太は微笑んでくる。
「優しくない。俺は優しくないし見た目も成績も運動もお前に比べて全然パッとしないし秀でたとこなんてないしあれだその、いいとこなんてほんとないから全然優良物件じゃない、から!」
「物件? 俺が高典先輩をそんなもの扱いするとでも思っているんですか? むしろ天使を崇めるように思っているのに」
「いやそれもういっそおかしい……」
「おかしくないですよ。確かに高典先輩はそんなに頭よくはなさそうですし運動神経も微妙かもですし見た目も中の上くらいかもですが」
「お前ほんとに俺好きなの?」
「大好きですよ。見た目、すごく爽やかで癒されますし中身もからっとしていてこっちまで晴れ晴れとした気持ちになりますし、成績や運動がいまいちでも人としては俺、秀でておられると思ってます。なんだかんだ言って邪険にしながらも俺を完全に無視しきれない面倒見のいい優しいとこも最高に好きです」
今まで生きてきてここまで褒められたことなどない。すごく肯定的に見てくれていてしかもそれを本当に心から思っているという感じが伝わってくる。
……はぁはぁ息を荒げながら言わなければ感動ものだったかもしれないな……!
「ほんと俺を好きになってくれるのは嬉しいことなんだろうけどお前はことごとく残念なんだよ……! あとマジで近寄んな。今のお前見てたら俺の貞操の危機しか感じない」
「間違ってないです」
「そうだろ、残念なんだよほんとおま……、……えっと、間違ってないってのは俺が言った残念って意味であってる、よな? そうだよな? そうだと言って」
「高典先輩を愛してますし、あなたが望むことは何でもしてあげたいし言ってあげたいですが」
「だよな! だから間違ってないのも残念だってことであって……」
「ですが、今は同意しかねます。高典先輩の身の危険は間違いなく迫ってます、けど安心してください。間違ってることもありますよ。貞操は危機じゃないです。だって俺相手なので操は守られ……」
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