詩集『刺繡』

新帯 繭

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よく『部屋がきれいだと勉強が捗る』という
私は、それは嘘だと思う
片付けをすれば気分はスッキリする
しかし、だからと言って集中できるわけではない
片付けが捗り過ぎて、本題を忘れて没頭だってするだろう
その時にやるということ自体が
正に本末転倒と言える
その途中で机を見た
私は、その机にこそ
持ち主の心が映されているのだと気付いた

机の上は『疲れ』が滲んでいる
疲れている人ほど
机の上が散らかっている
逆に余裕しかない人は
机に物がない
机すらない人だっているぐらいだ

机の上を崩せば
気持ちが整理される
その一方で怖がる人もいる
机の上を取り払ったときに
心が壊れそうになるのだ
何かを無くされた感覚になるのだと思う
そう……大事な何かを

私は、絵を描くときと仕事の時は
机の上を綺麗にする
そして、何も頭にない状態で
想いきり没頭する
食卓は崩さない
心が壊れそうになって
何れ自棄食いをすることが
とっくの昔に分かっているから

大切な人が、いつもと違うとき
机の上を見てごらん
そこにはメッセージが
物言わずに居座っている
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