詩集『刺繡』

新帯 繭

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蛇と蛙

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『蛇に睨まれた蛙』
この言葉の意味は
天敵に圧力をかけられて
抵抗ができない状態をいう

私は異議を唱える
蛙はそこまで弱くない
蛇もそこまで強くない
現実世界では思いの外
蛇が蛙に返り討ちに遭う
という描写も屡々だ
蛙は獰猛に噛み付くし
蛇にだって食らいつく
少し小さい蛇なら
蛙に噛み付かれてペロリ
なんてことがある

蛇だって本当は臆病だ
少し物音がするだけで
簡単にビクついて硬直する
蛙にだって餌と認識しない限り
積極的には襲わない
相手が小さくないと
見ても逃げるように通り過ぎる
本当は立場がし逆なのだ


日本人は臆病で
大人しすぎるのかもしれない
諺にも蛇より蛙が多く出る
もしかしたら
自分たちを蛙とダブらせて
弱さを表そうとしているのだろう
本当は蛙のように
蛇に食らいつくのを
虎視眈々と狙って
見つめ続ける自分を
思い浮かべながら
弱い自分を奮い立たせて
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