詩集『刺繡』

新帯 繭

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タピオカミルクティー

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結局負け知らず
最終的にはナニモノも敵わない
これはそういったものだ
若い子たちが口を揃えて言っている

「タピオカミルクティーしか勝たん!」

そんなに絶対強者たる実力があるのだろうか

そこまで『タピオカ飲料』とは猛者揃いなのか
私は甚だ疑問を感じる
タピオカの無敵具合を考察しよう

タピオカは好きだ
モチモチしていて弾力があり
それでいてツルツルと
程よい喉腰と歯応えがある
味も日本のものだと
黒糖が添加されていて
味はほんのりと上品に甘い
確かにこれは旨いと認める

ところがもっと美味しいスウィーツが
この世には溢れているのだ
更にはポッピングボバなるものが
今では時代を席捲しはじめている
これもまた甘い人工イクラのようで旨い
何か他にも秘密があるのか

組み合わせが考えられたが
ミルクティーと合わさることで
何か新しいものが生まれるのか
そう思って観察してみた
結果はどの飲み物も変わらない
じゃあ何が違うのだろう
すると文脈が無敵化の要因だと気付いた

『~しか勝たん』というのは
正確な言葉でも
ましてや標準語でもない
これは若者特有の造語であり
所謂『JK語』の一種だ
『推し』と言われる
自分の好きなものや気に入ったものを
強く押し出すために繰り出される

『~しか』の時点で
物事の対象が限定される
『~だけ』よりも強い表現で
他の周辺物が全て排他される
これにより『推し』のみが
その場で勝ち残ることになる

『勝たん』は直訳すると
『勝たない』という意味だ
本来は否定する言葉で
正確に言えば『負ける』ということだ
しかし組み合わせると
『~しか勝たない』という文が出来上がり
『~だけが勝つ』という逆の意味になる
こうして『タピオカミルクティー』の
完全無双奇譚ができあがるのだ

こんなチート主人公物語を
いとも容易く作り上げて
ポンポンと無敵なものを生み出す
『イマドキの若者』という種族は
ある意味神に近い存在だと言える

今の時代は“若者しか勝たん”
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