詩集『刺繡』

新帯 繭

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青空

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青空は満天の雲こそ
その雲間に色が映える

太陽は色を移すライト
地面という名のレフ版に
水面という名の姿見
酸素という名の絵具と
大気という名のキャンパスに
堂々と描かれた下書き

青空に沢山のものを描いた
そこには夢や想像が詰まっていた
子供時代は何もない空が
最高のおもちゃだった
創造力という名の筆を使い
お絵描き帳に実際に写す空
そこはもう一つの虹があった

雨が降っていたわけでもない
霧が覆っていたわけでも
霞が掛かっていたわけでもない
ただそこに自分という名の虹があった
自分というものの代名詞は虹だろう
青空の下で幾多の色を重ね
それでも描き足りない
壮大な虹そのものだ
青空はきっと
そんな私たちの大切な
描くべき掛け替えのない
人間というものの代名詞だ
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