カエルのお姫様と巨人の騎士と百合姫。

新帯 繭

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一章「始まり」

忙殺のカエル姫

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頭を抱えながら出勤をして、朝礼が過ぎたころ。
私は、ひとりの男性に通せんぼの様に、コピー機との間を遮断されていた。
相手は、昨晩の告白して来た同僚である。

「……何?」
「いや……昨日のことで……。」

今は、仕事のことを考えたい。
要らぬモヤモヤで、余計なミスをしたくはない。
ならば、この瞬間だけは、何もかも忘れて、仕事終わりにでも話をつけたいのだ。
しかし、相手は気が急いていて、それどころではないらしい。
全く、男って言うのは、そういうところの空気が読めないのだ。
何だか自分が、同じ性別の体で生まれたという事実でも、恥ずかしく思えてくる。

「今は、仕事の時間でしょ?」
「……いや、分かっている。」
「なら、今は、その話はしたくない。」
「だから……気になって、仕事が手に付かないんだ。」

何て身勝手な奴だ。
私も、自分の気持ち優先で返事をしない辺り、同類なのだろうが、こちらは急にされた側である。
した側とは違うのだ。
だけど、声色は私の方に非があるような、そういう印象を受けるような焦った声だ。
まったく不快でならない。

「私の気持ちは、どうでも良い訳?」
「いや……別にそういう訳では……。」
「なら、そっちも仕事に集中しなさい。」
「……ごめん。」

少しだけこちらがムッとした言い方をすると、相手はスゴスゴと自分の席へ戻った。
相手の同僚は、入道巨大。
名字が『入道(にゅうどう)』で、名前が『巨大(まさひろ)』だから、皆はその高身長に親しみを込めて、『巨人』や『ジャイアン』と呼んでいる存在だ。
その上、穏やかなものだから、『ハ○リット』とも、一部からは呼ばれている。
反して、顔の方はイケメンの部類で、女性職員の中ではファンが、かなりの数いるらしい。

「おーい、七川くん!」
「はい!」
「少し、頼まれ事をしてくれないか?」
「何でしょう?」

急遽、係長から声がかかった。
私は少し小走りで、席に向かった。

「…えーとな……この企画のリーダーを頼もうと思っているのだが、今から頼めないかい?」
「これは?」
「女性職員中心の企画で、『社内でのハラスメントの一覧と意見の総まとめ』という題目で、具体的に、特にセクハラを主として、男女両方の意見や経験を聞いて、今後の社内の業務環境の改善に役立てたいと考えている。」

企画内容を、レジュメと共に聞かされた。
しかし、普通は会社の上層部が、率先してやるべき仕事なのでは?

「……で、何故私なのですか?」
「君には、不快を承知で言うが、マイノリティだろ……言ってみれば、サイレントな当事者な訳だ。」
「はあ……。」
「それは、とある男性社員から聞いているのだが、君もセクハラを受けたらしいじゃないか?」
「……。」
「なら、改善に自らの手で、しっかりと改革していくべきだと、僕は思うよ?」

何とも、せこい遣り口である。
因みに、この発言の時点で、セクハラなのであるが、言っている本人は、承知の上と口にしておきながら、無自覚である。
こんなことが今後は無いように、務め上げるべきだろう。

「……わかりました。」
「じゃあ、メンバー召集のための、候補者の一覧を、終業までに選出しておいてくれ。」
「今日中ですね?」
「おう……因みに、こっちの方を優先で頼むよ!」

何とも、急なお題ではあるが、早急にやるべき案件ではあるだろう。
私は席に戻るなり、手元の仕事を後輩と同僚に分けて、集中して課題に頭を回した。
昨晩のことを忘れられそうで、ずっと良いと感じている。
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