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第一幕 終焉の物語と殉教者たち
一:②
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「漫画、小説、どっち?」
自室とあてがわれた部屋で室内着に着替えてくると、指定席である友香の向かい側に座る。ちなみに冬季は炬燵に変わる形式の座卓だ。台所から遙が着替えている間に、料理を盛った大皿を運び終えて待っていた友香は、お茶を淹れながら、「どっちも!」と答えると、湯呑みに注いだお茶を遙に先に勧める。 お礼を言って、友香を見た遙は、脳裏に友香が連載していた漫画と小説を浮かべた。
漫画に関しては様々なジャンルに手を付けている友香だが、小説に関しては、一本だけである。執筆する際に使っている筆名も違っていて、“ひいらぎ春花”。つまり、友香の姓に遙の名の響きを持ちながら違う漢字を当てた名。というのも理由があった。小説に関しては、遙が時折見る夢を題材にしているからだ。一話完結ではある物の、シリーズとして出し続けていて、そろそろ十巻を越える。どの巻を手に取り読みだしても、途中で解らないということに成らない。元々が小説投稿サイトで趣味で書いていた物が、採用されて書籍出版になったのだ。どれも誰かの語りかけから始まり、様々な事件や事故、中には紛争のきっかけから終息までのものである。主人公もそれぞれ違っている。年齢も千差万別。誰の視点から見ているかによって、全体像か事件の中心に近い人物かに分かれた。
「どれ?」
「“ナイト・シーカー”シリーズ!」
「おお」
「小説の方は遙が語ってくれた話に肉付けして作ったんだけど、違和感があったら指摘してくれたら嬉しい。あと、漫画はそのシリーズの漫画化ね? あたしの他にも何人か、シリーズの中から漫画化することが決まっているから、絵柄違いで楽しめるよ。で、一応表向きはあたしが作者だから、今度ネット経由で打ち合わせ」
「おおおおっ」
「十一巻になる予定の話は現在執筆中。あたしが担当する話は五巻。一巻から四巻まではそれぞれ違う漫画家さん。それぞれの話が全部違う世界観で主人公だからこそ出来ることだよね? 別冊“モダン”の中堅どころの揃い踏みだよ!」
別冊“モダン”とは、友香が所属している少女漫画雑誌で、デビューからずっと変わらない。ちなみにここの出版社の小説雑誌から小説家としてもデビューしている。友香は小説に関しては“ナイト・シーカー”シリーズしか書く気がなかったから、このシリーズを出す際、出版社とその当たりは話をつけていると、言っていた。
「ご、豪勢だねぇ・・・・・・」
「戦闘系の話もあれば、恋愛物の話もある! 育成要素もあるから、参加する漫画家陣も、男女の比率が半々。戦争が起こる話が入っているのを担当した漫画家さんは、男性陣が多いかなぁ」
「・・・たしか、友香が担当する五巻って」
「たった一人の魔王が、最終的に勝つ話だよね? 譲れないよ、魔王目線から始まる“何故各国を敵に回すことになったのか?”というのが、最後まで周囲に解らないまま、圧倒的な悪としての世界から見た視線よりも、魔王が何故魔王となったのかの方が共感できるし。何よりそういうのってたぎるじゃん! それに、他で読んだことないよ!! 世界中の国の人にとっては、最悪のバットでも、“世界”にとってはそうじゃないということがさ」
五巻の内容は科学技術が発達した世界の話だ。己の住まう星を救うために、他の星を滅ぼし続ける者達に立ち向かった、たった一人生き残った者の話だ。最終的には、攻めてきた異星人の屍の山の中、慟哭しながらも、空を見上げ続ける所で終わる。故郷を彼は守ったが、その地上の何処にも人は存在しないまま、彼を最後に人類は絶えたのだろうと想像されるが、彼が知らないだけで、生き残った人が居るのかもしれないけれども、物語はそれ以上は描かれていないのだ。
「友香がそのあたりをどう描くのかが楽しみ」
「そう?」
「そ。魔王と敵から恐れられたその者が、敵を退けた後に幸せになるのか気になるしね?」
「・・・・・・遙の見た“夢”では?」
友香の問いかけに、遙は笑って口元に人差し指を一本立てた。
「秘密」
「えーっ!」
抗議のブーイングを上げて頬を膨らませる友香に、遙は「冗談だって」と苦笑しながら返す。
「いや、だって。わたしが見た“夢”はさ、そこで目が覚めたのよ。全部全部何もかもが無くなって、多分自分が負けたら自分達の故郷と同じく、次の標的に向かうだろう相手を止めなくてはと、必死でさぁ・・・・・・犠牲は自分達で最後にしたくて」
「うん」
「で、全力を尽くして、どうにか相手勢力を滅ぼすことで止めて。・・・・・・その後夢を見てないから、どうなったのかはさ、知らない。まぁ、癒しの欠片もない夢だったから、めっちゃ目が覚めた後、精神的に疲れたけどさ。だから、彼のその後は知らないのよ」
遙は友香へと苦笑しながら「だから」と、提案する。
「彼はあの星でたった一人きりの生き残りだった。だからさ、彼がその後生き残った誰かを見つけるとかでもいいし、宇宙へ飛び出すのもありかと思う。友香の思う“ハッピーエンド”で迎えてもいいんじゃないかな?」
「・・・・・・そうね」
「そう!」
「友香らしい物語を期待してる」
「うん! もう少し考えて、話を進めてみるよ」
「ははっ、彼はどんな結末を迎えるんだろうねぇ・・・・・・」
だから、夢を紡いだ遙も、それを聞いて物語を形にした友香も知らない。全てを終えた後に、極上の笑みをこぼして天を仰いでその姿を消失させた事も、その星が、人類を拒絶したままあり続けていることも、知らないのだ。銀河の辺境、太陽系と呼ばれる星団の一つ、第三惑星の地球の片隅に住む二人には、ただの物語にすぎなかった。今日も明日も明後日も、自分の人生が終わるまでは、今という日常が続くのだと信じていたのだ。
月日は流れた。友香の小説も、その小説が原作の企画された、漫画化も実現し、ナイト・シーカーシリーズに関わった漫画家たちが一カ所に集まって打ち上げが行われた。
自室とあてがわれた部屋で室内着に着替えてくると、指定席である友香の向かい側に座る。ちなみに冬季は炬燵に変わる形式の座卓だ。台所から遙が着替えている間に、料理を盛った大皿を運び終えて待っていた友香は、お茶を淹れながら、「どっちも!」と答えると、湯呑みに注いだお茶を遙に先に勧める。 お礼を言って、友香を見た遙は、脳裏に友香が連載していた漫画と小説を浮かべた。
漫画に関しては様々なジャンルに手を付けている友香だが、小説に関しては、一本だけである。執筆する際に使っている筆名も違っていて、“ひいらぎ春花”。つまり、友香の姓に遙の名の響きを持ちながら違う漢字を当てた名。というのも理由があった。小説に関しては、遙が時折見る夢を題材にしているからだ。一話完結ではある物の、シリーズとして出し続けていて、そろそろ十巻を越える。どの巻を手に取り読みだしても、途中で解らないということに成らない。元々が小説投稿サイトで趣味で書いていた物が、採用されて書籍出版になったのだ。どれも誰かの語りかけから始まり、様々な事件や事故、中には紛争のきっかけから終息までのものである。主人公もそれぞれ違っている。年齢も千差万別。誰の視点から見ているかによって、全体像か事件の中心に近い人物かに分かれた。
「どれ?」
「“ナイト・シーカー”シリーズ!」
「おお」
「小説の方は遙が語ってくれた話に肉付けして作ったんだけど、違和感があったら指摘してくれたら嬉しい。あと、漫画はそのシリーズの漫画化ね? あたしの他にも何人か、シリーズの中から漫画化することが決まっているから、絵柄違いで楽しめるよ。で、一応表向きはあたしが作者だから、今度ネット経由で打ち合わせ」
「おおおおっ」
「十一巻になる予定の話は現在執筆中。あたしが担当する話は五巻。一巻から四巻まではそれぞれ違う漫画家さん。それぞれの話が全部違う世界観で主人公だからこそ出来ることだよね? 別冊“モダン”の中堅どころの揃い踏みだよ!」
別冊“モダン”とは、友香が所属している少女漫画雑誌で、デビューからずっと変わらない。ちなみにここの出版社の小説雑誌から小説家としてもデビューしている。友香は小説に関しては“ナイト・シーカー”シリーズしか書く気がなかったから、このシリーズを出す際、出版社とその当たりは話をつけていると、言っていた。
「ご、豪勢だねぇ・・・・・・」
「戦闘系の話もあれば、恋愛物の話もある! 育成要素もあるから、参加する漫画家陣も、男女の比率が半々。戦争が起こる話が入っているのを担当した漫画家さんは、男性陣が多いかなぁ」
「・・・たしか、友香が担当する五巻って」
「たった一人の魔王が、最終的に勝つ話だよね? 譲れないよ、魔王目線から始まる“何故各国を敵に回すことになったのか?”というのが、最後まで周囲に解らないまま、圧倒的な悪としての世界から見た視線よりも、魔王が何故魔王となったのかの方が共感できるし。何よりそういうのってたぎるじゃん! それに、他で読んだことないよ!! 世界中の国の人にとっては、最悪のバットでも、“世界”にとってはそうじゃないということがさ」
五巻の内容は科学技術が発達した世界の話だ。己の住まう星を救うために、他の星を滅ぼし続ける者達に立ち向かった、たった一人生き残った者の話だ。最終的には、攻めてきた異星人の屍の山の中、慟哭しながらも、空を見上げ続ける所で終わる。故郷を彼は守ったが、その地上の何処にも人は存在しないまま、彼を最後に人類は絶えたのだろうと想像されるが、彼が知らないだけで、生き残った人が居るのかもしれないけれども、物語はそれ以上は描かれていないのだ。
「友香がそのあたりをどう描くのかが楽しみ」
「そう?」
「そ。魔王と敵から恐れられたその者が、敵を退けた後に幸せになるのか気になるしね?」
「・・・・・・遙の見た“夢”では?」
友香の問いかけに、遙は笑って口元に人差し指を一本立てた。
「秘密」
「えーっ!」
抗議のブーイングを上げて頬を膨らませる友香に、遙は「冗談だって」と苦笑しながら返す。
「いや、だって。わたしが見た“夢”はさ、そこで目が覚めたのよ。全部全部何もかもが無くなって、多分自分が負けたら自分達の故郷と同じく、次の標的に向かうだろう相手を止めなくてはと、必死でさぁ・・・・・・犠牲は自分達で最後にしたくて」
「うん」
「で、全力を尽くして、どうにか相手勢力を滅ぼすことで止めて。・・・・・・その後夢を見てないから、どうなったのかはさ、知らない。まぁ、癒しの欠片もない夢だったから、めっちゃ目が覚めた後、精神的に疲れたけどさ。だから、彼のその後は知らないのよ」
遙は友香へと苦笑しながら「だから」と、提案する。
「彼はあの星でたった一人きりの生き残りだった。だからさ、彼がその後生き残った誰かを見つけるとかでもいいし、宇宙へ飛び出すのもありかと思う。友香の思う“ハッピーエンド”で迎えてもいいんじゃないかな?」
「・・・・・・そうね」
「そう!」
「友香らしい物語を期待してる」
「うん! もう少し考えて、話を進めてみるよ」
「ははっ、彼はどんな結末を迎えるんだろうねぇ・・・・・・」
だから、夢を紡いだ遙も、それを聞いて物語を形にした友香も知らない。全てを終えた後に、極上の笑みをこぼして天を仰いでその姿を消失させた事も、その星が、人類を拒絶したままあり続けていることも、知らないのだ。銀河の辺境、太陽系と呼ばれる星団の一つ、第三惑星の地球の片隅に住む二人には、ただの物語にすぎなかった。今日も明日も明後日も、自分の人生が終わるまでは、今という日常が続くのだと信じていたのだ。
月日は流れた。友香の小説も、その小説が原作の企画された、漫画化も実現し、ナイト・シーカーシリーズに関わった漫画家たちが一カ所に集まって打ち上げが行われた。
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