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第一章
召喚師として
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夕方、俺のもう一人の父親であるウェズレイ義父さんが帰って来た。
何やら一見するだけで疲れ果てているのが分かる。
そして、俺達と一緒に師匠…いや、母さんがいるのを見て、とどめとばかりに大きく溜息をついて頭を抱えた。
「何だ、仮にも師匠に対してその失礼な態度は。それにしてもウェズレイ。お前、自分の息子に私の存在を言っていたのだな」
自分の息子とは、当然テオの事であって俺ではない。
確かに。なんで当事者である俺には言わず、テオに教えているんだ。しかもテオ、なんでだか母さんとの修行の事まで知っていたし。
「それは…。こちらにも色々と事情と言うものが…。って言うか、貴女だってユキヤとちょくちょく会い過ぎなんです。あれじゃ、いずれはバレてましたよ!」
「うるさいわ!息子と会いたい時に合わせるって約束だったろうが!それに私だってお前に気を使って、月に数回ぐらいにしているんだぞ!まったく…本当にどうしようもなく心の狭い男だ!」
「師匠、ウェズレイ。もうその辺で。そろそろ本題に入りましょうか」
父さんにビシッと言われ、義父も師匠…いや母も口をつぐむ。
俺としては、いきなり判明した実母の存在に、未だショックを引きずっている状態なので大人しく話しを聞いている。
そして義父が語り出した。
まず最初にテオの懸念通り、勅命はしっかり出たそうだ。
当然のごとく、義父は怒り狂いながら猛抗議したそうなのだが「勅命である」で文句のことごごくを却下された。
しかも、テオと王子との婚約を認めれば、俺との決闘は無しにしても良いとまで言われ、怒髪天をついた義父は「分かった!ではうちのユキヤが決闘に勝ったら、今後一切王家が息子達に関わらないようにして頂く!」と啖呵を切り、結果引くに引けなくなったのだという。
ああ…。つまり俺と王子様との決闘は、決定事項になったと…。
「ウェズレイ…」
「すまん、セオドア。だが私にとって、ユキヤも大切だが、テオも同じぐらい大切な息子なんだ」
苦し気な表情で俯くウェズレイ父さんの手に、セオドア父さんの手がそっと重ねられる。
「いや、それは仕方が無かったと私も思う。むしろ私がその場にいたら、もっと爆発して取り返しがつかない暴言を吐いていた可能性が……。いや、間違いなくそうしていたな」
だから気にするな、と微笑まれ、ウェズレイ父さんの頬に赤みが差し、そのまま親父の手を握りしめる。
「セオドア…」
うん、そうだよね。親父、見た目に反して激情型だから。でもさ、夫夫関係が円満なのはなによりなんだけど、いい雰囲気になっている場合じゃないと思うんだよな。
師匠、いや実母も思いは同じだったようで、「良い雰囲気になるのは後にしろ!」と一刀両断した。
「ともかくだ、ユキヤとそのバカ王子が決闘する事が決まった今、相手の手の内を少しでも知った方がいいだろう。ウェズレイ、お前何かバカ王子のスキルとか知らないのか?」
師匠…基い母の言葉に俺も頷く。確かにそれは超知りたい。
俺は師匠…じゃなくて母さんか。未だ実感はないけど、母さんに色々な武術や剣術を学んでいるから、肉弾戦だったらそこそこいいとこまではいけると思う。
ただ俺、魔力量はすごく高いらしいんだけど、制御の方はいまいちなんだよ。
使えないという訳では無いんだけど、どれも安定しない。たとえば炎の球を出そうとしたら、静電気程度の火花が散ったり、逆にドラゴンブレスのような火柱を起こしてしまったり。
水系も風系も同様だ。土系に至っては、全くもって扱えない。
こんなロシアンルーレット並みの魔力発動率で、魔力勝負はかなり厳しいだろう。だから、相手がどのようなスキルを持っていてどういった攻撃が得意かっては、とても重要だ。
「…師匠。ローレンス王子は『召喚士』です」
「――ッ!なんだと!?では……王子のスキルは『魅了』か?!」
魅了?召喚士?なんだそれ?……待てよ。確か生前やっていたゲームで…。あ、思い出した。
「はい。王子は12歳の頃、突如魅了のスキルが顕現したそうです。武術や他の魔力は平均スレスレのようですが、魅了の力だけは突出しているそうで。今現在、かなり強力な魔物を複数使役しているとの事です。将来は国の軍事を支える要職に就くのは確実。ゆえに王も王子の我儘を勅命をもって叶えたのでしょう」
「ふむ…召喚士か、やっかいな……。しかしお前、よくその情報を掴んだな」
「はぁ…。本来なら、こういった事は極秘事項なのですが…。当の本人がそういった事を自慢げに吹聴しているそうで……。割と容易く情報が得られました」
「……そういえばアホ王子だったな」
呆れた様子で溜息をつく母だったが、少し考え込んだ後、真顔になった。
「とにかく、王子が召喚士である以上、まともに戦ってもユキヤに勝機は無い。下位の魔物であれば力技で倒せようが、上位種がいた場合、魔力を上手く使えないユキヤでは勝負にならん。……だが、召喚士か……」
「師匠。何かお考えが?」
「……ユキヤが勝てる、唯一の方法がある。が、上手くいくかは分からん」
「師匠!?まさか…」
「師匠!それは一体?!」
揃って声をあげた二人の父親に答えず、母はクルリと俺の方を向く。
「ユキヤ!」
「な、なに?!」
名を呼ばれ、思わずどもった俺に母は真剣な顔でこう言い放った。
「お前も召喚士として戦いなさい」
何やら一見するだけで疲れ果てているのが分かる。
そして、俺達と一緒に師匠…いや、母さんがいるのを見て、とどめとばかりに大きく溜息をついて頭を抱えた。
「何だ、仮にも師匠に対してその失礼な態度は。それにしてもウェズレイ。お前、自分の息子に私の存在を言っていたのだな」
自分の息子とは、当然テオの事であって俺ではない。
確かに。なんで当事者である俺には言わず、テオに教えているんだ。しかもテオ、なんでだか母さんとの修行の事まで知っていたし。
「それは…。こちらにも色々と事情と言うものが…。って言うか、貴女だってユキヤとちょくちょく会い過ぎなんです。あれじゃ、いずれはバレてましたよ!」
「うるさいわ!息子と会いたい時に合わせるって約束だったろうが!それに私だってお前に気を使って、月に数回ぐらいにしているんだぞ!まったく…本当にどうしようもなく心の狭い男だ!」
「師匠、ウェズレイ。もうその辺で。そろそろ本題に入りましょうか」
父さんにビシッと言われ、義父も師匠…いや母も口をつぐむ。
俺としては、いきなり判明した実母の存在に、未だショックを引きずっている状態なので大人しく話しを聞いている。
そして義父が語り出した。
まず最初にテオの懸念通り、勅命はしっかり出たそうだ。
当然のごとく、義父は怒り狂いながら猛抗議したそうなのだが「勅命である」で文句のことごごくを却下された。
しかも、テオと王子との婚約を認めれば、俺との決闘は無しにしても良いとまで言われ、怒髪天をついた義父は「分かった!ではうちのユキヤが決闘に勝ったら、今後一切王家が息子達に関わらないようにして頂く!」と啖呵を切り、結果引くに引けなくなったのだという。
ああ…。つまり俺と王子様との決闘は、決定事項になったと…。
「ウェズレイ…」
「すまん、セオドア。だが私にとって、ユキヤも大切だが、テオも同じぐらい大切な息子なんだ」
苦し気な表情で俯くウェズレイ父さんの手に、セオドア父さんの手がそっと重ねられる。
「いや、それは仕方が無かったと私も思う。むしろ私がその場にいたら、もっと爆発して取り返しがつかない暴言を吐いていた可能性が……。いや、間違いなくそうしていたな」
だから気にするな、と微笑まれ、ウェズレイ父さんの頬に赤みが差し、そのまま親父の手を握りしめる。
「セオドア…」
うん、そうだよね。親父、見た目に反して激情型だから。でもさ、夫夫関係が円満なのはなによりなんだけど、いい雰囲気になっている場合じゃないと思うんだよな。
師匠、いや実母も思いは同じだったようで、「良い雰囲気になるのは後にしろ!」と一刀両断した。
「ともかくだ、ユキヤとそのバカ王子が決闘する事が決まった今、相手の手の内を少しでも知った方がいいだろう。ウェズレイ、お前何かバカ王子のスキルとか知らないのか?」
師匠…基い母の言葉に俺も頷く。確かにそれは超知りたい。
俺は師匠…じゃなくて母さんか。未だ実感はないけど、母さんに色々な武術や剣術を学んでいるから、肉弾戦だったらそこそこいいとこまではいけると思う。
ただ俺、魔力量はすごく高いらしいんだけど、制御の方はいまいちなんだよ。
使えないという訳では無いんだけど、どれも安定しない。たとえば炎の球を出そうとしたら、静電気程度の火花が散ったり、逆にドラゴンブレスのような火柱を起こしてしまったり。
水系も風系も同様だ。土系に至っては、全くもって扱えない。
こんなロシアンルーレット並みの魔力発動率で、魔力勝負はかなり厳しいだろう。だから、相手がどのようなスキルを持っていてどういった攻撃が得意かっては、とても重要だ。
「…師匠。ローレンス王子は『召喚士』です」
「――ッ!なんだと!?では……王子のスキルは『魅了』か?!」
魅了?召喚士?なんだそれ?……待てよ。確か生前やっていたゲームで…。あ、思い出した。
「はい。王子は12歳の頃、突如魅了のスキルが顕現したそうです。武術や他の魔力は平均スレスレのようですが、魅了の力だけは突出しているそうで。今現在、かなり強力な魔物を複数使役しているとの事です。将来は国の軍事を支える要職に就くのは確実。ゆえに王も王子の我儘を勅命をもって叶えたのでしょう」
「ふむ…召喚士か、やっかいな……。しかしお前、よくその情報を掴んだな」
「はぁ…。本来なら、こういった事は極秘事項なのですが…。当の本人がそういった事を自慢げに吹聴しているそうで……。割と容易く情報が得られました」
「……そういえばアホ王子だったな」
呆れた様子で溜息をつく母だったが、少し考え込んだ後、真顔になった。
「とにかく、王子が召喚士である以上、まともに戦ってもユキヤに勝機は無い。下位の魔物であれば力技で倒せようが、上位種がいた場合、魔力を上手く使えないユキヤでは勝負にならん。……だが、召喚士か……」
「師匠。何かお考えが?」
「……ユキヤが勝てる、唯一の方法がある。が、上手くいくかは分からん」
「師匠!?まさか…」
「師匠!それは一体?!」
揃って声をあげた二人の父親に答えず、母はクルリと俺の方を向く。
「ユキヤ!」
「な、なに?!」
名を呼ばれ、思わずどもった俺に母は真剣な顔でこう言い放った。
「お前も召喚士として戦いなさい」
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