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第一章
やはり一癖ありました
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第一王子様、やはり父さんの思っていた通り一癖ありました。
「な…なんですか、その『消えてもらう』って…?」
前世では、テレビや映画でよく見た台詞。悪役なんかの決め台詞の一つだけど……まさか、それか?それなのか!?
「え~?まんま、言葉の意味だけど?君にこのままこの国にいられたら、君もだけど私もちょっと……いや、かなり困る事態になってしまってね」
相変わらず物騒な事言いながら、朗らかなイケメンスマイルをふりまく王子様が恐い……。俺がこの国にいて困る事って一体全体何なんだ!?
「実はね。君が眠っている間に、君の処遇を元老院どもが内々に決めてしまったんだよ。君を私の正妃にしようってね」
「……せい……ひ?」
せいひ……せいひって、あれかな?正否……いや、成否?
「なんか現実逃避しているっぽいから、ちゃんとした意味を教えてあげる。正妃……つまり、私の妻、ワイフ、嫁。分かった?」
……分かりたくなかったけど、分かった。ご説明有難う御座いました!
「さっきも話したけど、私の長年の努力(?)により、時期王太子はほぼローレンスで決まりな雰囲気になっていたんだ。だけど、ほら……ここにきて、ローレンスが色々やらかしてくれただろう?」
ベルによって目を壊された事により、第二王子の立太子は取り消された。そして王太子選びは、再び振り出しに戻ってしまったのだ。
「箝口令が敷かれても、王宮では既に周知の事実となっている為、私を推す派閥が俄然張り切り出してしまってねぇ。更にこれ幸いと君に目を付けたって訳」
「……何でそこで俺に目をつけるんですか!?」
あり得ないだろう!という意味を込めて思わず叫んだ俺を、ランスロットが残念な子を見るような目で見つめる。
「そりゃあ、武力、魔力、家柄、美貌……どれを取っても秀逸だからに決まってるだろう?しかも精霊系にすら喧嘩をふっかけるその度胸。そんな相手を伴侶に据えれば、私が魔力無しでも十分国王としてやっていける……というのが第一王子派の言い分だよ」
……そう言えばこの王子様、官民問わず滅茶苦茶評判の良い人で、魔力無しって事だけが唯一の弱点とされていたんだったっけ。
「元老院は元より、父上も……ひょっとしたら悪魔公を召喚出来るかもしれない者をこちら側に取り込んでおくべき……って考えたんだろうね。そういう訳で、双方の思惑が上手く合致して、君を私の正妃に宛がうって話になった訳」
なんだその勝手な思惑。そんな事を本人達のいない間に決めやがって何様だ!?俺の気持ちや目の前のランスロット王子の気持ちなんて、どーでもいいですって言っているようなもんだろ!失礼にもほどがある!
「そんなの絶対お断りです!」
俺は憤慨しながらキッパリ言い切ったが、王子の返事は実に容赦がなかった。
「断れると本気で思ってるの?大貴族の息子とはいえ、なんの爵位も肩書も持っていない君が、国の決めた決定事項に。ハッキリ言うけど、国の決め事に君が拒否する権利なんてないんだよ」
「そ、それじゃあ、貴方が断れば…」
そもそも彼は王太子候補であり、次期国王候補者だ。その彼が拒否をすれば、いくら元老院とかでも無碍な事は出来まい。
「生憎、いくら私が王族とは言え、国の機関をおいそれと敵には回せないよ。親族間のトラブルもしかり。政治はパワーバランスで成り立つものだからね。それこそ王族の一人として、反発や混乱は避けたい。それに……」
ランスロット王子の顔から笑みが消えた。
「ここで私が君との結婚を拒否すれば、君にとってもっと最悪な事が起こる可能性が高い。例えば、そもそもあの悪魔公を呼び出したのは実は君で、混乱に乗じて第二王子を殺そうとした……とか、罪状をでっち上げて罪人にした挙句、奴隷にするとか。それをネタにアスタール公爵家の取り潰しをちらつかせ、君に何でも言う事を聞かせようとする……とかね」
「そ…そんな…こと…」
まさかそんな。何でそこまでする必要があるって言うんだ。
「むしろ、そっちの方が大多数にとって美味しい事になる。私の父やその兄弟、他の王族関係者達にとって、君の父上はいまだに憧れと欲望の対象だ。その息子……しかも彼と瓜二つの容姿を持つ君を隷属させる事が出来るんだから、それは魅力的だろう」
……つまり、もし俺が国家に隷属されたりなんてしたら、公然と見知らぬ野郎共の慰み者になる……って事か。うわ、全身鳥肌立ってきた。
「君の両親も、そういう事態をちゃんと想定して、君を籠の鳥にしていたんだろう。……だが、君は既に安全な籠から外界へと出てしまった。君は世にも珍しい、美しく希少な金の鳥。ハッキリ言って私との結婚強要なんて、ぬるい方だよ」
「………」
「ショックを受けた?温室育ちの君には、ちょっとキツイ話だったかもしれないね」
いや、確かにこの17年間は温室育ちだったけど、それ以前の16年間は一般庶民やっていた。それで映画やドラマ、アニメや漫画や小説…等を観たり読んだりしていたから、そういうディープで汚い世界の事は知識としては割とよく知っている。
ただ、そういう事態が自分の身に降り掛かってきたという事実にショックを受けただけだ。
「正直、君が私の妃っての自体は悪くないと思う。君は正義感が強くて優しくて、とても魅力的な人だからね。でもだからこそ、君が私の正妃になってしまえば、私が王太子となり次期国王になってしまうだろう。私はそんなの御免だ。だから、君には消えてもらいたいんだ」
「な…なんですか、その『消えてもらう』って…?」
前世では、テレビや映画でよく見た台詞。悪役なんかの決め台詞の一つだけど……まさか、それか?それなのか!?
「え~?まんま、言葉の意味だけど?君にこのままこの国にいられたら、君もだけど私もちょっと……いや、かなり困る事態になってしまってね」
相変わらず物騒な事言いながら、朗らかなイケメンスマイルをふりまく王子様が恐い……。俺がこの国にいて困る事って一体全体何なんだ!?
「実はね。君が眠っている間に、君の処遇を元老院どもが内々に決めてしまったんだよ。君を私の正妃にしようってね」
「……せい……ひ?」
せいひ……せいひって、あれかな?正否……いや、成否?
「なんか現実逃避しているっぽいから、ちゃんとした意味を教えてあげる。正妃……つまり、私の妻、ワイフ、嫁。分かった?」
……分かりたくなかったけど、分かった。ご説明有難う御座いました!
「さっきも話したけど、私の長年の努力(?)により、時期王太子はほぼローレンスで決まりな雰囲気になっていたんだ。だけど、ほら……ここにきて、ローレンスが色々やらかしてくれただろう?」
ベルによって目を壊された事により、第二王子の立太子は取り消された。そして王太子選びは、再び振り出しに戻ってしまったのだ。
「箝口令が敷かれても、王宮では既に周知の事実となっている為、私を推す派閥が俄然張り切り出してしまってねぇ。更にこれ幸いと君に目を付けたって訳」
「……何でそこで俺に目をつけるんですか!?」
あり得ないだろう!という意味を込めて思わず叫んだ俺を、ランスロットが残念な子を見るような目で見つめる。
「そりゃあ、武力、魔力、家柄、美貌……どれを取っても秀逸だからに決まってるだろう?しかも精霊系にすら喧嘩をふっかけるその度胸。そんな相手を伴侶に据えれば、私が魔力無しでも十分国王としてやっていける……というのが第一王子派の言い分だよ」
……そう言えばこの王子様、官民問わず滅茶苦茶評判の良い人で、魔力無しって事だけが唯一の弱点とされていたんだったっけ。
「元老院は元より、父上も……ひょっとしたら悪魔公を召喚出来るかもしれない者をこちら側に取り込んでおくべき……って考えたんだろうね。そういう訳で、双方の思惑が上手く合致して、君を私の正妃に宛がうって話になった訳」
なんだその勝手な思惑。そんな事を本人達のいない間に決めやがって何様だ!?俺の気持ちや目の前のランスロット王子の気持ちなんて、どーでもいいですって言っているようなもんだろ!失礼にもほどがある!
「そんなの絶対お断りです!」
俺は憤慨しながらキッパリ言い切ったが、王子の返事は実に容赦がなかった。
「断れると本気で思ってるの?大貴族の息子とはいえ、なんの爵位も肩書も持っていない君が、国の決めた決定事項に。ハッキリ言うけど、国の決め事に君が拒否する権利なんてないんだよ」
「そ、それじゃあ、貴方が断れば…」
そもそも彼は王太子候補であり、次期国王候補者だ。その彼が拒否をすれば、いくら元老院とかでも無碍な事は出来まい。
「生憎、いくら私が王族とは言え、国の機関をおいそれと敵には回せないよ。親族間のトラブルもしかり。政治はパワーバランスで成り立つものだからね。それこそ王族の一人として、反発や混乱は避けたい。それに……」
ランスロット王子の顔から笑みが消えた。
「ここで私が君との結婚を拒否すれば、君にとってもっと最悪な事が起こる可能性が高い。例えば、そもそもあの悪魔公を呼び出したのは実は君で、混乱に乗じて第二王子を殺そうとした……とか、罪状をでっち上げて罪人にした挙句、奴隷にするとか。それをネタにアスタール公爵家の取り潰しをちらつかせ、君に何でも言う事を聞かせようとする……とかね」
「そ…そんな…こと…」
まさかそんな。何でそこまでする必要があるって言うんだ。
「むしろ、そっちの方が大多数にとって美味しい事になる。私の父やその兄弟、他の王族関係者達にとって、君の父上はいまだに憧れと欲望の対象だ。その息子……しかも彼と瓜二つの容姿を持つ君を隷属させる事が出来るんだから、それは魅力的だろう」
……つまり、もし俺が国家に隷属されたりなんてしたら、公然と見知らぬ野郎共の慰み者になる……って事か。うわ、全身鳥肌立ってきた。
「君の両親も、そういう事態をちゃんと想定して、君を籠の鳥にしていたんだろう。……だが、君は既に安全な籠から外界へと出てしまった。君は世にも珍しい、美しく希少な金の鳥。ハッキリ言って私との結婚強要なんて、ぬるい方だよ」
「………」
「ショックを受けた?温室育ちの君には、ちょっとキツイ話だったかもしれないね」
いや、確かにこの17年間は温室育ちだったけど、それ以前の16年間は一般庶民やっていた。それで映画やドラマ、アニメや漫画や小説…等を観たり読んだりしていたから、そういうディープで汚い世界の事は知識としては割とよく知っている。
ただ、そういう事態が自分の身に降り掛かってきたという事実にショックを受けただけだ。
「正直、君が私の妃っての自体は悪くないと思う。君は正義感が強くて優しくて、とても魅力的な人だからね。でもだからこそ、君が私の正妃になってしまえば、私が王太子となり次期国王になってしまうだろう。私はそんなの御免だ。だから、君には消えてもらいたいんだ」
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