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第二章
回顧⑤【ベリアル視点】
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ユキヤに戦いを挑んだ第二王子。…確かに見た目だけは中々のものだ。
魅了の力も備わっているから、上手くすれば下級の精霊系を使役する事ぐらいは可能かもしれない。特に明るい髪色や瞳の色は黒の精霊達に好まれる。
だが、惜しむらくはその魂だ。
変な方向にねじ曲がってしまっている上に淀んでいる。あれでは魔獣ならともかく、幻獣系や精霊系は進んで力を貸そうとはすまい。
だがあの王子。見た目だけは優れているから、召喚術を行う時に裸で尻でも振ってれば、淫魔あたりだったら出て来るかもしれないが…。
まあ、単純な小悪党という感じのあの王子では口八丁手八丁で丸め込まれた挙句、精気を吸い尽くされて終わりだろう。
辛辣な口撃を受け、怒った第二王子の決闘を受けたユキヤ。だが、周囲の予想を裏切り度肝を抜きながら順当に勝ち進んでいったのだった。
死霊系の死霊騎士を倒した時点で、流石にくたびれ果てていたが、見たところあの王子が使役する従魔は打ち止めのようだから問題ないだろう。
…そう思っていたのに。
自分が所有する全ての従魔を打ち破られて激高した第二王子は、よりにもよって『全能召喚』を行ったのだ。
空間に、五芒星の魔法陣が浮かび上がった。
「ダメだ!それを使うな、ローレンス王子!」
安直に其れを使用する恐ろしさを我が身で経験しているユキヤは、第二王子を止めようと絶叫する。
だがなりふり構わない愚かな少年は、当然ユキヤの制止を聞き入れなかった。
『我が名と魂において命ずる。何でもいい!僕に勝利をもたらす者よ、この場に顕現しろ!』
魔法陣が金色の粒子へと姿を変える。そして、浮かび上がるのは様々な模様の魔法陣。現れては消え、現れては消えていく。
ユキヤの時と状況は同じ。
だが違うのは、魔法陣が現れては消えていっている理由だ。
ユキヤの時は、俺が現れる従魔候補が作る道を潰しまくったから魔法陣が次々と消えていったのだ。
だがこの王子の場合、魔法陣が消えてしまうのは、興味本位で呼ばれて来た魔物達が己が仕えるに値せずと判断し、自ら召喚を止めて帰ってしまっているからだ。
それもその筈。魔力量は元より、ここまで歪んだ魂に従魔として仕えてもメリットは少ない。
だが、寧ろ帰ってくれた方が術師としては幸運な事なのだ。
『全能召喚』の恐ろしい所は、普通、己が召喚する事の出来ない上級な魔物すら召喚する事が出来てしまう点にあるのだから。
案の定、最後に現れたのは、黒の精霊系である下位悪魔だった。
大方、『全能召喚』を使ったのはどんな奴なのかと興味を持ってやって来たようだ。
ユキヤほど強大な力が無くとも、あの王子が純粋な魂を持ってさえいれば、あるいは下位悪魔程度なら契約できたかもしれない。
だがやはりと言うか、第二王子は下位悪魔のお眼鏡にすら叶わなかったようだ。
興味が失われ、ゆらりと下位悪魔の手が上がる。…殺す気か。
まぁ、仕方がない。あの王子はやり過ぎたし、支配階級の馬鹿はそこに在るだけで周囲にとっての有害となる。始末しておいた方がこの世の為だろう。
だが、そこでユキヤが動いた。
俺の忠告を無視し、助ける価値も無い相手を自分が怪我を負ってまで助けたのだ。
――まったく本当に、こいつときたら…。
『本当に、お前はお人好しなうえに愚かしいな。…だが、俺としては、お前のそういった所がたまらなく好ましい。馬鹿な子ほど可愛いとも言うしな』
これは偽らざる本音だ。
こいつがこういう奴でなければ、俺は今こうしてこの場にいない。
下位悪魔を見てみると、ユキヤの魅了に縛られ、堕とされてしまっていた。
当然か、この俺が堕とされた相手だ。下位悪魔ごとき、ひとたまりもないだろう。
今もユキヤの元に近寄りたくてウズウズしている。自分が誤って負わせてしまった傷を癒し、己の主と仰ぎ、仕えるつもりなのだろう。
下位悪魔ごときが。何とも腹の立つ事だ。
『ユキヤ。召喚士として俺を呼べ』
今流れ出ているユキヤの血。それを対価として自分を呼べとユキヤに告げる。ユキヤも覚悟を決めたか、召喚士として俺を召喚した。
「貴様ごとき雑兵が。よくぞ俺のモノに傷をつけてくれたもんだ。しかもあわよくば…とばかりに、鼻の下伸ばしやがって。身の程知らずのクズが…!」
召喚される形で本来の自分の姿を晒し、下位悪魔に対峙する。
驚いた事に、下位悪魔は勝てる筈もない、魔界の頂点の一角であるこの俺に向かって牙を剥いた。
自分が滅せられる恐怖より、今ここにいる稀有な魂を失う事の方こそ恐怖だ…とでも言わんばかりに。
だが残念だったな。こいつはお前ごときが傍にいられるようなタマじゃない。何よりお前は俺の愛しい相手を傷付けた。報いを受けるがいい。
俺はゆっくりと下位悪魔を嬲った後、核すら残さぬよう、完全に消滅させた。
魅了の力も備わっているから、上手くすれば下級の精霊系を使役する事ぐらいは可能かもしれない。特に明るい髪色や瞳の色は黒の精霊達に好まれる。
だが、惜しむらくはその魂だ。
変な方向にねじ曲がってしまっている上に淀んでいる。あれでは魔獣ならともかく、幻獣系や精霊系は進んで力を貸そうとはすまい。
だがあの王子。見た目だけは優れているから、召喚術を行う時に裸で尻でも振ってれば、淫魔あたりだったら出て来るかもしれないが…。
まあ、単純な小悪党という感じのあの王子では口八丁手八丁で丸め込まれた挙句、精気を吸い尽くされて終わりだろう。
辛辣な口撃を受け、怒った第二王子の決闘を受けたユキヤ。だが、周囲の予想を裏切り度肝を抜きながら順当に勝ち進んでいったのだった。
死霊系の死霊騎士を倒した時点で、流石にくたびれ果てていたが、見たところあの王子が使役する従魔は打ち止めのようだから問題ないだろう。
…そう思っていたのに。
自分が所有する全ての従魔を打ち破られて激高した第二王子は、よりにもよって『全能召喚』を行ったのだ。
空間に、五芒星の魔法陣が浮かび上がった。
「ダメだ!それを使うな、ローレンス王子!」
安直に其れを使用する恐ろしさを我が身で経験しているユキヤは、第二王子を止めようと絶叫する。
だがなりふり構わない愚かな少年は、当然ユキヤの制止を聞き入れなかった。
『我が名と魂において命ずる。何でもいい!僕に勝利をもたらす者よ、この場に顕現しろ!』
魔法陣が金色の粒子へと姿を変える。そして、浮かび上がるのは様々な模様の魔法陣。現れては消え、現れては消えていく。
ユキヤの時と状況は同じ。
だが違うのは、魔法陣が現れては消えていっている理由だ。
ユキヤの時は、俺が現れる従魔候補が作る道を潰しまくったから魔法陣が次々と消えていったのだ。
だがこの王子の場合、魔法陣が消えてしまうのは、興味本位で呼ばれて来た魔物達が己が仕えるに値せずと判断し、自ら召喚を止めて帰ってしまっているからだ。
それもその筈。魔力量は元より、ここまで歪んだ魂に従魔として仕えてもメリットは少ない。
だが、寧ろ帰ってくれた方が術師としては幸運な事なのだ。
『全能召喚』の恐ろしい所は、普通、己が召喚する事の出来ない上級な魔物すら召喚する事が出来てしまう点にあるのだから。
案の定、最後に現れたのは、黒の精霊系である下位悪魔だった。
大方、『全能召喚』を使ったのはどんな奴なのかと興味を持ってやって来たようだ。
ユキヤほど強大な力が無くとも、あの王子が純粋な魂を持ってさえいれば、あるいは下位悪魔程度なら契約できたかもしれない。
だがやはりと言うか、第二王子は下位悪魔のお眼鏡にすら叶わなかったようだ。
興味が失われ、ゆらりと下位悪魔の手が上がる。…殺す気か。
まぁ、仕方がない。あの王子はやり過ぎたし、支配階級の馬鹿はそこに在るだけで周囲にとっての有害となる。始末しておいた方がこの世の為だろう。
だが、そこでユキヤが動いた。
俺の忠告を無視し、助ける価値も無い相手を自分が怪我を負ってまで助けたのだ。
――まったく本当に、こいつときたら…。
『本当に、お前はお人好しなうえに愚かしいな。…だが、俺としては、お前のそういった所がたまらなく好ましい。馬鹿な子ほど可愛いとも言うしな』
これは偽らざる本音だ。
こいつがこういう奴でなければ、俺は今こうしてこの場にいない。
下位悪魔を見てみると、ユキヤの魅了に縛られ、堕とされてしまっていた。
当然か、この俺が堕とされた相手だ。下位悪魔ごとき、ひとたまりもないだろう。
今もユキヤの元に近寄りたくてウズウズしている。自分が誤って負わせてしまった傷を癒し、己の主と仰ぎ、仕えるつもりなのだろう。
下位悪魔ごときが。何とも腹の立つ事だ。
『ユキヤ。召喚士として俺を呼べ』
今流れ出ているユキヤの血。それを対価として自分を呼べとユキヤに告げる。ユキヤも覚悟を決めたか、召喚士として俺を召喚した。
「貴様ごとき雑兵が。よくぞ俺のモノに傷をつけてくれたもんだ。しかもあわよくば…とばかりに、鼻の下伸ばしやがって。身の程知らずのクズが…!」
召喚される形で本来の自分の姿を晒し、下位悪魔に対峙する。
驚いた事に、下位悪魔は勝てる筈もない、魔界の頂点の一角であるこの俺に向かって牙を剥いた。
自分が滅せられる恐怖より、今ここにいる稀有な魂を失う事の方こそ恐怖だ…とでも言わんばかりに。
だが残念だったな。こいつはお前ごときが傍にいられるようなタマじゃない。何よりお前は俺の愛しい相手を傷付けた。報いを受けるがいい。
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