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第二章
騙された!
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「え!?本当!」
『ああ。魔術の腕は超一級な上、武術も私と張る腕前だ。…けど、ちょっと…いや、かなり癖のある奴でね。というか、お前を探索するのに頼ろうと思っていた昔馴染みってのが、奴なんだ』
母さんが言うには、遠い遠い昔、母さんが勇者達と共に世界を救った時、一緒のパーティーにいた人物らしい。
…って、その昔馴染み、何歳なんだよ!?まさか母さんと一緒にドラゴンの血を浴びて不老不死に…?!
『いや、奴はエルフだから長命なだけなんだ。…まあ、それにしたって長生きだけどな』
「…ちなみに今、何歳?」
『…長生きとだけ言っておこう』
う~ん。やっぱ教えてくれないか。
そうだよな、教えれば自動的に自分の年もバレるし。
『奴は究極な引きこもりな上、偏屈でね。仕事以外は自分の魔力を張った隠家に住んでいるから、私と一緒じゃないと辿り着く事が出来ないだろう。だからどこかで合流して…』
「必要ない」
ずっと黙っていたベルが一言呟いた。次の瞬間。
「――へ?」
俺の目の前には目を見開き、呆然とした母さんが立っていたのだった。
「こ…ここは…?」
呆然といった様子の母だったが、俺の姿を見るなり目をクワッと見開き俺へと突進し、抱き着いた。
「ぐえっ!」
いや、抱き着いたというよりもサバ折りだ、これ。
俺は抱き締める腕になおもギリギリ力を込めてくる怪力母の背中を必死に叩いた。
「か…母さん。く…るしい…」
俺の声にハッとしたように、母が腕の力を緩めた。
ああ…。やっと息が出来る…。
「す、すまん!お前の姿を見て理性が飛んだ。ああ…それにしても、よくぞ無事で…!…ってか、何で私はここにいるんだろうか?」
そこ、やっと気が付きましたか。遅いですよ母さん。
「これからユキヤの師匠候補とやらの所にいくんだろう?だから手間を省いてやっただけだ」
「貴方がユキヤの従魔…「仮契約者だ!」」
「ベル!今そこは拘る所じゃないから!」
「ベル…。そういえば、ユキヤが貴方に向かってそう言っていたっけな」
壮絶な美貌に魅了されるでもなく、ましてや圧倒的な魔力に畏怖するでもなく。ベハティは、どこからどう見ても上級悪魔だと分かるベルと臆する事無く対峙した。
「召喚に失敗して、うっかり呼び出した下級魔獣というユキヤの言葉を疑いもしなかったが…。ユキヤの魅了スキルの高さを考慮しなかった私の判断ミスだったな…。空間転移をこんな一瞬で…。まさか、このような強大な…」
「俺は魔力を極限まで抑えていたからな。お前らごときに見破れられる事の方が問題だ。よって、そこら辺は消沈する事も恥じる事もないぞ?」
「…それは…。お心遣い痛み入る」
苦笑しながらそう言うと、ベハティは居住まいを正し、ベルに深々と頭を下げた。
「此度、愚息を救って下さった事、深く感謝申し上げます。偉大なる黒の王よ。貴方がおられなければ、私はユキヤとこうして会う事も話す事も出来なかった」
「気にするな。将来の伴侶を守るのは当然の事だ」
「…はい…?」
母さんは一瞬呆けた後、恐る恐るといった様子で俺の方へと顔を向けた。
「ユ…ユキヤ…?お前…まさか…!自分の身を引き換えに契約を…」
「ち、違う!違います!!ベル!何が伴侶だ!勝手な事言うなよ!もう!」
俺は必死に否定すると、契約に至った様子を事細かに説明した。すると何故か、母さんが呆れ顔になった。
「…それは…。最初のハードルを高く設定し過ぎましたね。いや、囚われる前だから強気に出たんでしょうが、見事に自分で言った言葉に足元を掬われておられる。悪魔とは本来、そういった心理戦にはずば抜けて長けた種族と聞き及んでおりましたが?」
囚われる?何にだ?
母さんが、意味不明な台詞をベルに向かって言っている。しかも何となく皮肉気だ。対するベルはそれに対して反論するでもなく、苦虫を噛み潰したような顔になっている。
「あ、そうだベル!お前、身体平気か?母さん呼び出すなんて、物凄い魔力使ったろ?」
「ああ?…いや、そうでもない。お前のそのブレスレットを触媒にしたから、使った魔力は…そうだな。せいぜい今朝喰った朝食程度だ」
「あ、そうか。それは良かっ…た…?」
ホッとしたついでに気が付いた。
あれ?確かブレスレットを触媒に夢に干渉するのに、食事じゃ対価に足りないからって俺、ディープキス強請られたよな?
慌てて母さんに聞いたところによると、精霊系は夢に…というより、精神干渉が最も得意な種族だから、今の状態のベルでも簡単に干渉出来ただろうとの事。
「ましてや、そのブレスレットを触媒にしたのなら、殆ど魔力は要らなかったと思うぞ?」
母の言葉を聞き、俺はブルブルと拳を震わせた。
お…俺のあの羞恥と苦悩と葛藤は一体…!?
『ああ。魔術の腕は超一級な上、武術も私と張る腕前だ。…けど、ちょっと…いや、かなり癖のある奴でね。というか、お前を探索するのに頼ろうと思っていた昔馴染みってのが、奴なんだ』
母さんが言うには、遠い遠い昔、母さんが勇者達と共に世界を救った時、一緒のパーティーにいた人物らしい。
…って、その昔馴染み、何歳なんだよ!?まさか母さんと一緒にドラゴンの血を浴びて不老不死に…?!
『いや、奴はエルフだから長命なだけなんだ。…まあ、それにしたって長生きだけどな』
「…ちなみに今、何歳?」
『…長生きとだけ言っておこう』
う~ん。やっぱ教えてくれないか。
そうだよな、教えれば自動的に自分の年もバレるし。
『奴は究極な引きこもりな上、偏屈でね。仕事以外は自分の魔力を張った隠家に住んでいるから、私と一緒じゃないと辿り着く事が出来ないだろう。だからどこかで合流して…』
「必要ない」
ずっと黙っていたベルが一言呟いた。次の瞬間。
「――へ?」
俺の目の前には目を見開き、呆然とした母さんが立っていたのだった。
「こ…ここは…?」
呆然といった様子の母だったが、俺の姿を見るなり目をクワッと見開き俺へと突進し、抱き着いた。
「ぐえっ!」
いや、抱き着いたというよりもサバ折りだ、これ。
俺は抱き締める腕になおもギリギリ力を込めてくる怪力母の背中を必死に叩いた。
「か…母さん。く…るしい…」
俺の声にハッとしたように、母が腕の力を緩めた。
ああ…。やっと息が出来る…。
「す、すまん!お前の姿を見て理性が飛んだ。ああ…それにしても、よくぞ無事で…!…ってか、何で私はここにいるんだろうか?」
そこ、やっと気が付きましたか。遅いですよ母さん。
「これからユキヤの師匠候補とやらの所にいくんだろう?だから手間を省いてやっただけだ」
「貴方がユキヤの従魔…「仮契約者だ!」」
「ベル!今そこは拘る所じゃないから!」
「ベル…。そういえば、ユキヤが貴方に向かってそう言っていたっけな」
壮絶な美貌に魅了されるでもなく、ましてや圧倒的な魔力に畏怖するでもなく。ベハティは、どこからどう見ても上級悪魔だと分かるベルと臆する事無く対峙した。
「召喚に失敗して、うっかり呼び出した下級魔獣というユキヤの言葉を疑いもしなかったが…。ユキヤの魅了スキルの高さを考慮しなかった私の判断ミスだったな…。空間転移をこんな一瞬で…。まさか、このような強大な…」
「俺は魔力を極限まで抑えていたからな。お前らごときに見破れられる事の方が問題だ。よって、そこら辺は消沈する事も恥じる事もないぞ?」
「…それは…。お心遣い痛み入る」
苦笑しながらそう言うと、ベハティは居住まいを正し、ベルに深々と頭を下げた。
「此度、愚息を救って下さった事、深く感謝申し上げます。偉大なる黒の王よ。貴方がおられなければ、私はユキヤとこうして会う事も話す事も出来なかった」
「気にするな。将来の伴侶を守るのは当然の事だ」
「…はい…?」
母さんは一瞬呆けた後、恐る恐るといった様子で俺の方へと顔を向けた。
「ユ…ユキヤ…?お前…まさか…!自分の身を引き換えに契約を…」
「ち、違う!違います!!ベル!何が伴侶だ!勝手な事言うなよ!もう!」
俺は必死に否定すると、契約に至った様子を事細かに説明した。すると何故か、母さんが呆れ顔になった。
「…それは…。最初のハードルを高く設定し過ぎましたね。いや、囚われる前だから強気に出たんでしょうが、見事に自分で言った言葉に足元を掬われておられる。悪魔とは本来、そういった心理戦にはずば抜けて長けた種族と聞き及んでおりましたが?」
囚われる?何にだ?
母さんが、意味不明な台詞をベルに向かって言っている。しかも何となく皮肉気だ。対するベルはそれに対して反論するでもなく、苦虫を噛み潰したような顔になっている。
「あ、そうだベル!お前、身体平気か?母さん呼び出すなんて、物凄い魔力使ったろ?」
「ああ?…いや、そうでもない。お前のそのブレスレットを触媒にしたから、使った魔力は…そうだな。せいぜい今朝喰った朝食程度だ」
「あ、そうか。それは良かっ…た…?」
ホッとしたついでに気が付いた。
あれ?確かブレスレットを触媒に夢に干渉するのに、食事じゃ対価に足りないからって俺、ディープキス強請られたよな?
慌てて母さんに聞いたところによると、精霊系は夢に…というより、精神干渉が最も得意な種族だから、今の状態のベルでも簡単に干渉出来ただろうとの事。
「ましてや、そのブレスレットを触媒にしたのなら、殆ど魔力は要らなかったと思うぞ?」
母の言葉を聞き、俺はブルブルと拳を震わせた。
お…俺のあの羞恥と苦悩と葛藤は一体…!?
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