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第三章
愛されてるけど相手が悪い
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ユキヤの話では、契約にあたって最初は『魂と純潔』を求められたという。
だがユキヤがそれに命懸けで逆らったら、その気になるまで契約は保留の意味での『仮契約』に落ち着いたのだそうだ。
仮契約…。つまりは『召喚された』状態のまま、なんの縛りもなく傍にいる状態である。
召喚士と繋がりが無いので、魔力供給は唯一、自分を呼び出した召喚士からしか得られず、力を振るうにはその都度召喚士から対価を得なくてはならない。
その上、召喚士との魂の繋がりが無いが故にこの世界で存在を認められず、自分勝手に力を振るえば魔力を枯渇させる。そして存在する事すらままならず、最悪魔界に戻らなくてはならなくなるのだ。ハッキリ言って、普通そこまでして留まるメリットは何も無い。
『それだけ、ユキヤに捕らわれているのだろうな…』
『契約』とは、対価をもって自分を呼び出した召喚士のパートナーとなる事。そしてその対価を一度口にしてしまえば、それ以外での契約は不可能になる。
もし召喚士がその契約に納得できない場合。一度召喚自体を解除し、再召喚して再び契約を結び直すという手もあるが、ユキヤが悪魔公…もといベルを呼び出してしまったのはあくまでも手違いによるものだ。
だから召喚を解除してしまえば、ユキヤが再召喚をする可能性は無いに等しい。実際「契約解除してもいいのに」と言っていたから、それは間違いない。
ならば『従魔』として魂の繋がりを得ればいいと思うのだが、そうなると対等の立場ではなく、ユキヤがベルの『主』になってしまうのだ。
従魔は主が嫌がる事は決して出来ない。つまりは、ベルがユキヤに手を出す事が事実上不可能になってしまうのだ。
だからこそ、この世界の『異物』として、満足に力を行使出来ない不自由を甘んじて受け入れてでも、彼の悪魔公はユキヤの傍にいるのだ。
『愛されているがゆえ、か。…が、相手が悪過ぎる』
悪魔とは、狡猾で気まぐれで残忍な面がある一方、己が認めた者や愛する者に対する情が非常に篤いとされている。
ベリアルという悪魔公は、誰よりも悪魔らしい悪魔と言われているそうだ。
きっとその情愛も誰よりも篤く、深いのだろう。その溺れるような情愛に、愛する息子が飲み込まれないようにと願うしか、今の自分には出来ない。
幾ら「自分は異性愛者だ」と主張していても、機微の隙をつけば絆されてしまう可能性は高い。
現に、ユキヤはあの悪魔に忌避感は微塵もなかった。寧ろ、独りという状況下においてアレの存在に頼っている節すら見受けられたのだ。
その点、ウォレンの弟子になれれば少なくとも自衛をするだけの知識や力を得られる筈。ユキヤが魅了師の力を使いこなし、あの悪魔を従僕に出来れば...全てを奪われずに済む。
が、悪魔公がその可能性に考えが至らない訳がない。そうなる前に、何としてでもユキヤを逆に魅了する算段でもしているのか…。
『吉と出るか凶と出るか。まあ、それもこれもユキヤが無事試験をクリアしてからだがな』
幸いなことに、ウォレンはユキヤを気に入ってくれたようだ。
永い付き合いだからこそ、自分には分かる。
ウォレンのあの態度。普通の者が見れば、いつもと変わらず飄々としている風に映るが、間違いなくあれは面白い玩具を目にした時の子供と同じ反応だった。
だからユキヤが試験をクリアさえすれば、間違いなくウォレンはユキヤを弟子に迎え入れてくれるだろう。
だがユキヤがそれに命懸けで逆らったら、その気になるまで契約は保留の意味での『仮契約』に落ち着いたのだそうだ。
仮契約…。つまりは『召喚された』状態のまま、なんの縛りもなく傍にいる状態である。
召喚士と繋がりが無いので、魔力供給は唯一、自分を呼び出した召喚士からしか得られず、力を振るうにはその都度召喚士から対価を得なくてはならない。
その上、召喚士との魂の繋がりが無いが故にこの世界で存在を認められず、自分勝手に力を振るえば魔力を枯渇させる。そして存在する事すらままならず、最悪魔界に戻らなくてはならなくなるのだ。ハッキリ言って、普通そこまでして留まるメリットは何も無い。
『それだけ、ユキヤに捕らわれているのだろうな…』
『契約』とは、対価をもって自分を呼び出した召喚士のパートナーとなる事。そしてその対価を一度口にしてしまえば、それ以外での契約は不可能になる。
もし召喚士がその契約に納得できない場合。一度召喚自体を解除し、再召喚して再び契約を結び直すという手もあるが、ユキヤが悪魔公…もといベルを呼び出してしまったのはあくまでも手違いによるものだ。
だから召喚を解除してしまえば、ユキヤが再召喚をする可能性は無いに等しい。実際「契約解除してもいいのに」と言っていたから、それは間違いない。
ならば『従魔』として魂の繋がりを得ればいいと思うのだが、そうなると対等の立場ではなく、ユキヤがベルの『主』になってしまうのだ。
従魔は主が嫌がる事は決して出来ない。つまりは、ベルがユキヤに手を出す事が事実上不可能になってしまうのだ。
だからこそ、この世界の『異物』として、満足に力を行使出来ない不自由を甘んじて受け入れてでも、彼の悪魔公はユキヤの傍にいるのだ。
『愛されているがゆえ、か。…が、相手が悪過ぎる』
悪魔とは、狡猾で気まぐれで残忍な面がある一方、己が認めた者や愛する者に対する情が非常に篤いとされている。
ベリアルという悪魔公は、誰よりも悪魔らしい悪魔と言われているそうだ。
きっとその情愛も誰よりも篤く、深いのだろう。その溺れるような情愛に、愛する息子が飲み込まれないようにと願うしか、今の自分には出来ない。
幾ら「自分は異性愛者だ」と主張していても、機微の隙をつけば絆されてしまう可能性は高い。
現に、ユキヤはあの悪魔に忌避感は微塵もなかった。寧ろ、独りという状況下においてアレの存在に頼っている節すら見受けられたのだ。
その点、ウォレンの弟子になれれば少なくとも自衛をするだけの知識や力を得られる筈。ユキヤが魅了師の力を使いこなし、あの悪魔を従僕に出来れば...全てを奪われずに済む。
が、悪魔公がその可能性に考えが至らない訳がない。そうなる前に、何としてでもユキヤを逆に魅了する算段でもしているのか…。
『吉と出るか凶と出るか。まあ、それもこれもユキヤが無事試験をクリアしてからだがな』
幸いなことに、ウォレンはユキヤを気に入ってくれたようだ。
永い付き合いだからこそ、自分には分かる。
ウォレンのあの態度。普通の者が見れば、いつもと変わらず飄々としている風に映るが、間違いなくあれは面白い玩具を目にした時の子供と同じ反応だった。
だからユキヤが試験をクリアさえすれば、間違いなくウォレンはユキヤを弟子に迎え入れてくれるだろう。
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