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第三章
決意
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だいたいからして、この誘拐劇はおかしな所が多すぎた。
まず第一に、隣室にいた筈の自分とテオノアが、なぜ襲撃が始まった時点で異変に気が付かなかったのか。しかも何故か、ユキヤがいた部屋だけが綺麗に崩壊していて、自分達がいた部屋はまるで無傷だったのだ。上級悪魔がわざわざ周囲を気遣いながら襲撃するなど、有り得ない事だ。
しかも、何故あの王子はタイミング良くその場に居たのだ?しかも共も連れずに。
というか、自分は元凶とされるその上級悪魔が、ユキヤと縁を結んだ従魔もどきである事を既に知っている。
しかも本当は上級悪魔などではなく、悪魔公であるという、とんでもない事実も。
『あの時、ベルが自分をあの場から追い払ったのは、ユキヤを連れ去る為だったのだろうか…?』
だが、『仮契約』までしてわざわざユキヤの傍にいた彼が、なぜ急にユキヤを攫う必要があるというのか。もし攫うのであれば、ユキヤが彼を召喚した時にとっくにそうしている筈だ。
しかも…。
『彼は…。ベルはユキヤをとても大切に想っているように見えた。悪魔に対し、甘い考えかもしれないが…そんな彼が、ユキヤが傷付くような事をしようとするだろうか?』
しかも、仮契約…つまりは未契約者であるベルが、召喚者の同意なく行動を起こせば、世界から制裁を受けるのは必至。
だとすれば、ひょっとしてベルはユキヤを攫ったのではなく『逃げた』のではないのだろうか。
……だが、誰から?
『彼は、「妙な気配がある」と言っていた…。もしかしたら、この逃走劇と関連があるのかもしれないな』
だとすれば、一方的に怪我を負わされ、婚約者を連れされたとされる第一王子ランスロット。彼は、被害者などではなく、今回の騒動の黒幕である可能性が高い。
ひょっとしたらその『妙な気配』と繋がっている可能性もある。
『しかし…。分からないのは、そんな事をして彼に何の益があるのかという事だ』
ウェズレイによれば、ここ数年にわたる第二王子の傍若無人な振る舞いに「いくら魔力が高くても、あの調子で王位を継げるのか」という声が高まり、魔力が無くとも人格者で知られ、国民の支持も高い第一王子を次期王位継承者に…という声が高まっていたそうだ。
しかも今回のユキヤとの決闘によるトラブル、そして第一王子派によるユキヤとの婚約で、第二王子が王太子になる道は閉ざされる寸前だった。
なのにこの騒動で、結局第一王子も第二王子も立ち位置は同じに戻ってしまった。彼…ランスロットにとっては何の利益も無いばかりか、次期国王への道を遠ざける結果となってしまった訳で、悪手にも程がある。
『考えれば考える程、混乱する。…が…』
考え続けていなければ、どうしてもユキヤに思いを馳せ、不安に押し潰されそうになってしまう。
「…どうか無事でいてくれ…!」
今現在国王直々の命により、城に留め置かれているこの身では、ユキヤを探しに行く事は叶わない。だがウェズレイだけでなく、ユキヤの実母でもある師匠のベハティもユキヤを血眼になって探してくれている事だろう。ならば自分はここでしか出来ない事をすればいい。
「失礼いたします」
ドアがノックされ、ユキヤの執事であるジョナサンが声をかけてくる。
「何だ?」
「はい。第一王子ランスロット様が、是非ともお茶をご一緒にとの事で御座いますが…如何致しましょう?」
今迄思案を巡らせていた張本人からのお茶のお誘いだった。
「…分かった。お誘い有難う御座います。喜んでお伺い致しますと、そう伝えてくれ」
少し気づかわし気なジョナサンにそう告げると、セオドアは支度を整える為、衣装室へと向かった。
「少しでも、何かを引き出せたらいいのだが…な」
そう、ここでしか出来ない事。
第一王子、ランスロットと直接接する事の出来るこの状況を利用し、ユキヤの事を少しでも探り出すのだ。
まず第一に、隣室にいた筈の自分とテオノアが、なぜ襲撃が始まった時点で異変に気が付かなかったのか。しかも何故か、ユキヤがいた部屋だけが綺麗に崩壊していて、自分達がいた部屋はまるで無傷だったのだ。上級悪魔がわざわざ周囲を気遣いながら襲撃するなど、有り得ない事だ。
しかも、何故あの王子はタイミング良くその場に居たのだ?しかも共も連れずに。
というか、自分は元凶とされるその上級悪魔が、ユキヤと縁を結んだ従魔もどきである事を既に知っている。
しかも本当は上級悪魔などではなく、悪魔公であるという、とんでもない事実も。
『あの時、ベルが自分をあの場から追い払ったのは、ユキヤを連れ去る為だったのだろうか…?』
だが、『仮契約』までしてわざわざユキヤの傍にいた彼が、なぜ急にユキヤを攫う必要があるというのか。もし攫うのであれば、ユキヤが彼を召喚した時にとっくにそうしている筈だ。
しかも…。
『彼は…。ベルはユキヤをとても大切に想っているように見えた。悪魔に対し、甘い考えかもしれないが…そんな彼が、ユキヤが傷付くような事をしようとするだろうか?』
しかも、仮契約…つまりは未契約者であるベルが、召喚者の同意なく行動を起こせば、世界から制裁を受けるのは必至。
だとすれば、ひょっとしてベルはユキヤを攫ったのではなく『逃げた』のではないのだろうか。
……だが、誰から?
『彼は、「妙な気配がある」と言っていた…。もしかしたら、この逃走劇と関連があるのかもしれないな』
だとすれば、一方的に怪我を負わされ、婚約者を連れされたとされる第一王子ランスロット。彼は、被害者などではなく、今回の騒動の黒幕である可能性が高い。
ひょっとしたらその『妙な気配』と繋がっている可能性もある。
『しかし…。分からないのは、そんな事をして彼に何の益があるのかという事だ』
ウェズレイによれば、ここ数年にわたる第二王子の傍若無人な振る舞いに「いくら魔力が高くても、あの調子で王位を継げるのか」という声が高まり、魔力が無くとも人格者で知られ、国民の支持も高い第一王子を次期王位継承者に…という声が高まっていたそうだ。
しかも今回のユキヤとの決闘によるトラブル、そして第一王子派によるユキヤとの婚約で、第二王子が王太子になる道は閉ざされる寸前だった。
なのにこの騒動で、結局第一王子も第二王子も立ち位置は同じに戻ってしまった。彼…ランスロットにとっては何の利益も無いばかりか、次期国王への道を遠ざける結果となってしまった訳で、悪手にも程がある。
『考えれば考える程、混乱する。…が…』
考え続けていなければ、どうしてもユキヤに思いを馳せ、不安に押し潰されそうになってしまう。
「…どうか無事でいてくれ…!」
今現在国王直々の命により、城に留め置かれているこの身では、ユキヤを探しに行く事は叶わない。だがウェズレイだけでなく、ユキヤの実母でもある師匠のベハティもユキヤを血眼になって探してくれている事だろう。ならば自分はここでしか出来ない事をすればいい。
「失礼いたします」
ドアがノックされ、ユキヤの執事であるジョナサンが声をかけてくる。
「何だ?」
「はい。第一王子ランスロット様が、是非ともお茶をご一緒にとの事で御座いますが…如何致しましょう?」
今迄思案を巡らせていた張本人からのお茶のお誘いだった。
「…分かった。お誘い有難う御座います。喜んでお伺い致しますと、そう伝えてくれ」
少し気づかわし気なジョナサンにそう告げると、セオドアは支度を整える為、衣装室へと向かった。
「少しでも、何かを引き出せたらいいのだが…な」
そう、ここでしか出来ない事。
第一王子、ランスロットと直接接する事の出来るこの状況を利用し、ユキヤの事を少しでも探り出すのだ。
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