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第三章
第一王子とのお茶会③
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「へえ。御子息もあまり甘い物は好きではないのですか?」
「いえ。甘い物は自分で作る程好物です」
「え?御子息はご自分で菓子を作られるのですか?」
「はい。その方が美味しいからと。「わざわざ貴重な砂糖をバカスカ使って不味いモン作るって、どうなんだ?貴族の権威って馬鹿みてぇ!」というのが、あの子の口癖でしたね」
それを聞いた途端、ランスロットが盛大に噴き出した。
「ははっ!弟へ啖呵を切った時も痛快だったが、実にユキヤらしい。セオドア殿、出来ましたら私に御子息の話を聞かせて頂けませんでしょうか?」
「ええ、構いませんよ」
その後、セオドアはユキヤに関する話を嘘偽りなく請われるがままにランスロットに話して聞かせた。
いわく、貴族の服は窮屈だからと、わざわざ庶民の服を好んで着ている事。
暇さえあれば新作の菓子や料理を作って、いつも粉まみれになっていた事。
砕けた口調で話すのを、いつも弟に叱られていた事…等々。
傍に控えているモリスや他の近衛達が、話の内容に引き攣ったり目を丸くする中、当のランスロットはセオドアから語られるユキヤの様子を実に楽しそうに聞いていた。
その表情は嬉しそうですらあって、セオドアは内心驚きを隠せなかった。
ユキヤの行動は貴族の子息の基準からしても有り得ないもので、ましてやユキヤ本人を見た後では、その完璧な貴公子然とした見た目のギャップから驚愕するなり幻滅するかと思っていたのだが….。これは予想外だった。
「ふふ…。本当に楽しい人だな、ユキヤは。もし彼と結婚出来たなら、とても楽しい毎日が送れそうだ」
どうやらランスロットはユキヤを気に入ってしまったようだ。
むしろ「そんなのが婚約者だなんて冗談じゃない!」…と言われるのを密かに期待していたのだが、完璧に裏目に出た。
「…失礼ですが殿下、割と恋愛対象の趣味が悪いと言われた事などありませんか?」
「おやおや、そんなにご自身の息子を卑下なさらなくとも。こう見えて、私は趣味が良い方だと自負しておりますよ?こと、人を見る目に関しては…ね」
その時一瞬だけ、その空色の瞳が強く鋭く光ったように感じ、背筋に冷たいものが流れる。
美貌と人徳を兼ねた人当たりの良い好人物…。そんな完璧な仮面が取り払われ、刹那、本当の彼が透けて見えた様な…。そしてその感覚には覚えがあった。そう……ユキヤを愛している、あの悪魔と対峙した時と同じだ。
「ユキヤは素晴らしい人物ですよ。少なくとも私は心の底からそう思います」
自分以外は誰にも知られる事なく穏やかな色に戻し、ランスロットはそう言うとフッと微笑んだ。
先程の鋭さとは違い、その微笑と空色はどこか憂いを帯びていて、セオドアは内心混乱する。
『この王子は一体…何者なのだろうか』
この王子がユキヤの失踪に一枚噛んでいるのは間違いない。だがそれは何故なのか。なんの目的があってした事なのか、まるで理解出来ない。
彼のユキヤに対する反応を見れば、少なくともユキヤを邪魔に思って…という理由では無い筈だ。だから余計に分からない。
「セオドア殿。ユキヤと一日でも早く再会出来る事を、私も心の底から祈っておりますよ」
まるでセオドアの胸中を察したかのようにそう言うと、ランスロットは優雅な仕草で紅茶を口に含んだ。
「いえ。甘い物は自分で作る程好物です」
「え?御子息はご自分で菓子を作られるのですか?」
「はい。その方が美味しいからと。「わざわざ貴重な砂糖をバカスカ使って不味いモン作るって、どうなんだ?貴族の権威って馬鹿みてぇ!」というのが、あの子の口癖でしたね」
それを聞いた途端、ランスロットが盛大に噴き出した。
「ははっ!弟へ啖呵を切った時も痛快だったが、実にユキヤらしい。セオドア殿、出来ましたら私に御子息の話を聞かせて頂けませんでしょうか?」
「ええ、構いませんよ」
その後、セオドアはユキヤに関する話を嘘偽りなく請われるがままにランスロットに話して聞かせた。
いわく、貴族の服は窮屈だからと、わざわざ庶民の服を好んで着ている事。
暇さえあれば新作の菓子や料理を作って、いつも粉まみれになっていた事。
砕けた口調で話すのを、いつも弟に叱られていた事…等々。
傍に控えているモリスや他の近衛達が、話の内容に引き攣ったり目を丸くする中、当のランスロットはセオドアから語られるユキヤの様子を実に楽しそうに聞いていた。
その表情は嬉しそうですらあって、セオドアは内心驚きを隠せなかった。
ユキヤの行動は貴族の子息の基準からしても有り得ないもので、ましてやユキヤ本人を見た後では、その完璧な貴公子然とした見た目のギャップから驚愕するなり幻滅するかと思っていたのだが….。これは予想外だった。
「ふふ…。本当に楽しい人だな、ユキヤは。もし彼と結婚出来たなら、とても楽しい毎日が送れそうだ」
どうやらランスロットはユキヤを気に入ってしまったようだ。
むしろ「そんなのが婚約者だなんて冗談じゃない!」…と言われるのを密かに期待していたのだが、完璧に裏目に出た。
「…失礼ですが殿下、割と恋愛対象の趣味が悪いと言われた事などありませんか?」
「おやおや、そんなにご自身の息子を卑下なさらなくとも。こう見えて、私は趣味が良い方だと自負しておりますよ?こと、人を見る目に関しては…ね」
その時一瞬だけ、その空色の瞳が強く鋭く光ったように感じ、背筋に冷たいものが流れる。
美貌と人徳を兼ねた人当たりの良い好人物…。そんな完璧な仮面が取り払われ、刹那、本当の彼が透けて見えた様な…。そしてその感覚には覚えがあった。そう……ユキヤを愛している、あの悪魔と対峙した時と同じだ。
「ユキヤは素晴らしい人物ですよ。少なくとも私は心の底からそう思います」
自分以外は誰にも知られる事なく穏やかな色に戻し、ランスロットはそう言うとフッと微笑んだ。
先程の鋭さとは違い、その微笑と空色はどこか憂いを帯びていて、セオドアは内心混乱する。
『この王子は一体…何者なのだろうか』
この王子がユキヤの失踪に一枚噛んでいるのは間違いない。だがそれは何故なのか。なんの目的があってした事なのか、まるで理解出来ない。
彼のユキヤに対する反応を見れば、少なくともユキヤを邪魔に思って…という理由では無い筈だ。だから余計に分からない。
「セオドア殿。ユキヤと一日でも早く再会出来る事を、私も心の底から祈っておりますよ」
まるでセオドアの胸中を察したかのようにそう言うと、ランスロットは優雅な仕草で紅茶を口に含んだ。
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