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第四章
心は自由であるべき
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「黒の魅了師殿。一つお聞きしても宜しいでしょうか?」
「あ、はい?」
「何故、我々に襲われた時、魅了の力を使われなかったのでしょうか?」
「あー…..」
ああ、うん。至極尤もな疑問ですね。そうだよな、しのごの言わずに魅了を駆使してれば、俺的は手間もかけずに事態を収拾できてた訳で。
仮にも『魅了師』がいの一番に魅了の力を使わないなんて、当然、疑問に思うよな。まあ、魅了師じゃないから魅了の力が使えなかったって事もあるんだけど…。
「こんな事、俺が言うのもなんだけど。…人の心は自由であるべきだと思ってるから」
ザビア将軍が驚愕したように目を見開く。多分だけど、「こいつ、何言ってんだ」とか思ってるんだろうな。
でもこれは嘘偽りない、俺の本音だ。
だって、力を使って嫌がる相手を無理矢理縛り付け、従わせるのはやはり間違っていると思う。だから俺が魅了師になったとしても、出来る限り人を救う以外で魅了の力を使わないようにしたいんだ。
「…黒の魅了師殿…」
ザビア将軍が居住まいを正すと俺に向かい、騎士の礼を取った。
「ザビア将軍?」
「…全てを…お話致します。ですからどうか、我が国と聖獣様を…そして姫をお救い下さいませ」
顔を上げたザビア将軍が強い光の宿った目を俺に向けてくる。その中にはしっかりと俺に対する信頼の色が溢れていた。
「伺いましょう」
俺はその言葉に頷く。そしてグッと腹に力を入れ、気を引き締めた。
◇◇◇
肥沃なる大地に恵まれた農業国家。カルカンヌ。
常夏の気候を生かして、サトウキビを作り、貴重とされる砂糖を各国に輸出する事で栄えている小国。
国民の半数以上が農業に従事し、残りの半数近くが、作物の加工作業に関わっている。
民の気質は総じて穏やかで、争いを好まない。それゆえこの国には明確に軍隊と呼べるものは存在しなかった。
豊かで軍隊の無い国など、いつ周辺国に攻め込まれ、侵略されてもおかしくない。いや、過去において実際侵略されそうになった事があったのだそうだ。
だがその時、一人の巫女姫が召喚魔法を発動させ魔獣を召喚し、国は救われた。
そしてカルカンヌ王国は魔獣を聖獣とみなして誓約を交わし、聖獣は『神獣』として国の守護神となったのだった。
また、聖獣による恩恵は他国からの侵略阻止だけではなかった。
この国は常夏ゆえに、年間を通じて作物を収穫する事が出来た。だがその反面、頻発する暴風や大雨に始終見舞われていた。その為、水害により作物の収穫量も不安定であったという。
だが、風を司る聖獣は吹き荒れる暴風を制御し、雨雲を吹き散らして適度な潤いを大地に注いだ。結果、通年に渡って安定した収穫を得る事が出来るようになり、この国は栄えてきた。
つまり聖獣は、他国からの軍事的介入を退けるだけではなく、その司る風の力をもって 天災からも国を守り、民からの尊敬と崇拝を捧げられてきたのだった。
「ですが突如、国は飢饉に喘ぎ苦しむ事となりました。何故なら、あれだけ頻繁に降っていた雨が、ある時を境に全く降らなくなってしまったのです」
幸いというか、国民の飲み水だけは地下水脈で何とかなっていたが、国土全体の大地を潤す事は出来なかった。
なので作物はあっという間に枯れ果て、今は国の備蓄によって餓死者が出るのを何とか防いでいる状態なのだという。
王は名のある魔法使い、召喚士に依頼し、何とか雨雲を呼び大地の息吹を復活させようと、打てる手は全て打った。だが驚くべきことに、それらは全てかの国…オンタリアによって潰されてきたのだそうだ。
「あ、はい?」
「何故、我々に襲われた時、魅了の力を使われなかったのでしょうか?」
「あー…..」
ああ、うん。至極尤もな疑問ですね。そうだよな、しのごの言わずに魅了を駆使してれば、俺的は手間もかけずに事態を収拾できてた訳で。
仮にも『魅了師』がいの一番に魅了の力を使わないなんて、当然、疑問に思うよな。まあ、魅了師じゃないから魅了の力が使えなかったって事もあるんだけど…。
「こんな事、俺が言うのもなんだけど。…人の心は自由であるべきだと思ってるから」
ザビア将軍が驚愕したように目を見開く。多分だけど、「こいつ、何言ってんだ」とか思ってるんだろうな。
でもこれは嘘偽りない、俺の本音だ。
だって、力を使って嫌がる相手を無理矢理縛り付け、従わせるのはやはり間違っていると思う。だから俺が魅了師になったとしても、出来る限り人を救う以外で魅了の力を使わないようにしたいんだ。
「…黒の魅了師殿…」
ザビア将軍が居住まいを正すと俺に向かい、騎士の礼を取った。
「ザビア将軍?」
「…全てを…お話致します。ですからどうか、我が国と聖獣様を…そして姫をお救い下さいませ」
顔を上げたザビア将軍が強い光の宿った目を俺に向けてくる。その中にはしっかりと俺に対する信頼の色が溢れていた。
「伺いましょう」
俺はその言葉に頷く。そしてグッと腹に力を入れ、気を引き締めた。
◇◇◇
肥沃なる大地に恵まれた農業国家。カルカンヌ。
常夏の気候を生かして、サトウキビを作り、貴重とされる砂糖を各国に輸出する事で栄えている小国。
国民の半数以上が農業に従事し、残りの半数近くが、作物の加工作業に関わっている。
民の気質は総じて穏やかで、争いを好まない。それゆえこの国には明確に軍隊と呼べるものは存在しなかった。
豊かで軍隊の無い国など、いつ周辺国に攻め込まれ、侵略されてもおかしくない。いや、過去において実際侵略されそうになった事があったのだそうだ。
だがその時、一人の巫女姫が召喚魔法を発動させ魔獣を召喚し、国は救われた。
そしてカルカンヌ王国は魔獣を聖獣とみなして誓約を交わし、聖獣は『神獣』として国の守護神となったのだった。
また、聖獣による恩恵は他国からの侵略阻止だけではなかった。
この国は常夏ゆえに、年間を通じて作物を収穫する事が出来た。だがその反面、頻発する暴風や大雨に始終見舞われていた。その為、水害により作物の収穫量も不安定であったという。
だが、風を司る聖獣は吹き荒れる暴風を制御し、雨雲を吹き散らして適度な潤いを大地に注いだ。結果、通年に渡って安定した収穫を得る事が出来るようになり、この国は栄えてきた。
つまり聖獣は、他国からの軍事的介入を退けるだけではなく、その司る風の力をもって 天災からも国を守り、民からの尊敬と崇拝を捧げられてきたのだった。
「ですが突如、国は飢饉に喘ぎ苦しむ事となりました。何故なら、あれだけ頻繁に降っていた雨が、ある時を境に全く降らなくなってしまったのです」
幸いというか、国民の飲み水だけは地下水脈で何とかなっていたが、国土全体の大地を潤す事は出来なかった。
なので作物はあっという間に枯れ果て、今は国の備蓄によって餓死者が出るのを何とか防いでいる状態なのだという。
王は名のある魔法使い、召喚士に依頼し、何とか雨雲を呼び大地の息吹を復活させようと、打てる手は全て打った。だが驚くべきことに、それらは全てかの国…オンタリアによって潰されてきたのだそうだ。
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