幸せの形

野良猫

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第1章 迷い人・雪の話

第7話 迷い人・雪の過去

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気が付くと、最初に通された部屋のソファーで横たわっていた。

雪「・・・今の・・・何・・・?」

まだ混乱している雪に、入れ直したホットミルクを差し出しながら、幸が声をかける。

幸「おはようございます。ぐっすりと眠られていた様なので、こちらまで運ばせていただきました。」

コトンとテーブルにホットミルクが置かれる。

雪は泣きそうな表情を浮かべながら、そのまま横になっている。

幸「今貴女様が見ていたものは、雪様の幸せだった頃の思い出でございます。」

幸は向かい側の椅子に腰をかけると、ひらりと福が膝の上に登った。

雪「・・・あ、猫ちゃん・・・。私、ごめんなさい・・・勝手に他の部屋に・・・。」

福の姿を見た雪は、勝手に部屋に入った事を謝罪しようとしたが、その声を遮られる様にして幸が答えた。

幸「構いませんよ。あちらの部屋には皆様の幸せの形を保管させていただいております。貴女様は雪の結晶だったようですね。」

膝の上に乗っている福を撫でながら、優しい口調で続けた。

幸「過去に雪様は1度当店にご来訪されているのですよ。その際に幸せの形・・・雪の結晶を置いていかれたのです。」

その言葉を聞き、雪は段々と記憶を取り戻したのか、ポツリポツリとこぼし始めた。
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