氷の令嬢は愛されたい

むんず

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33話・図書館

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私は一つ深呼吸をして図書館に踏み入れた。

図書館は本の香りが漂っていて、家の書庫よりも遥かに沢山の本が置いてあった。

凄い。
その言葉しか思い浮かばない。

図書館の雰囲気に圧倒され、思わず立ち止まってしまう。

まるで違う世界に来たような錯覚に襲われる。

出来る事なら庶民になって何度もここへ通ってみたいなぁ。
本を、書庫を買って貰うんじゃなくて、大事に大事に一冊ずつ図書館で読み進める。

そういうのに憧れてしまう。

最近、夢のような妄想をするようになってしまった。
無駄な事なのに、考えずにはいられない。

私は少しため息をついて本棚に近寄った。

沢山の種類の本が古書から新書まで並んでいる。

私は本に沿って手を滑らして行き、気になった本の所で止めた。

“召喚術のメリットとデメリット”

魔法の参考本だ。
召喚術は命の危険も伴うと言うので、気軽に出来るわけじゃない。

これからもヴァッサーヌを召喚するのなら、もっと召喚術について知識を蓄えていないといけない。

いざと言う時に使えなかったら何の意味もないのだから。

私はこの本を手に取り、周りにいるみんなの様に好きな席に座り本を開く。

難しい文章もあるが、それも含めて調べるのが面白い。

本は無限の可能性が広がっていると思う。

あまり夢中になり過ぎるとヴァッサーヌが可哀想なので、ちゃんとキリをつけて辞めないと。

一時間経った頃には、私の机の周りには何冊もの本が積み上げられていた。

魔法の本以外にも、この国の歴史や政治なども勉強の一環として読んでみた。

一日中いられそうだけど、そろそろ時間だ。

私は思いっきり背伸びした後、本を元の位置に戻し、図書館を後にした。

外に出ると、そこにはヴァッサーヌが待っていた。

「待ったかしら?」

『ううん、今来たところ。美味しいもの食べれる?』

ヴァッサーヌは元気に返事する。

本当に食べ物が好きなんだろう。

「そうね、待っててくれたご褒美に美味しいもの食べに行きましょうか」

私はヴァッサーヌを少し眺めた後、あるお店を目標に歩き出した。

五分ほど歩いた私達は、今お洒落で雰囲気のあるお店の前にいる。

『ねぇ、ここ、美味しいもの食べれる?』

ヴァッサーヌは看板を読みながら私に尋ねる。

「えぇ、そうよ。すみません、このメニューを二つ」

私はメニューを指し、あるものを二つ頼んだ。

「お嬢ちゃん、君一人で二つも食べるのかい?お腹壊すぜい?」

身体つきが良いお店のお兄さんが注文を取りながら顔を顰める。

「えぇ、一人で食べるの。ダメかしら?」

「いや、良いんだ。お嬢ちゃん可愛いからおまけ」

お兄さんはメニューよりも盛られた商品を二つ渡してくれた。
私はメニューに書いてある金額を払いその場をさった。
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