氷の令嬢は愛されたい

むんず

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49話・再会

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私はあまり飾っていない青いドレスを見に纏、お屋敷を出る。

随分長い間光を浴びてなかった為、太陽の光に当たると頭痛がした。

私はズキズキと音を立てている頭を少し抑える。

「ソフィー、大丈夫?」

優しい声が横から降ってくる。
私がずっと聞きたかった、あのホッとする声だった。

私は思わず、笑顔で顔を上げようとする。

そこで思い直した。
ダメだ、今日は王太子と他愛もない話をするために、来たわけじゃない。

それに、今日呼び出されているのは、王太子じゃなくて王様だ。

私は唇を少し噛む。

落ち着いてきた頭から手を離し、真顔で王太子の方を向いた。

王太子は相変わらずキラキラとしたオーラがあった。

「殿下、ご心配をおかけしました。大丈夫です」

私は静かに告げる。

王太子は私を少し見た後、頷いて私を馬車へと促す。

私は頷いて、王太子が用意してくれたであろう、馬車に乗った。

王太子が私の向かいに座ると、馬車は物凄い勢いで走り出す。

「殿下、本日帝王様は、どんな理由で私を呼び出したのですか?」

私は王太子の顔を見て尋ねる。

王太子は少し考え込む素振りを見せた後、少し笑った。

「やっと会えたね」

質問した答えは、帰ってこなかった。

聞こえなかったわけではないだろう。
つまり、答えたくないと言うことだ。

私は少しため息を吐く。

「やっと会えた、とはどういう意味でしょうか?」

「君は、あの事件の後屋敷に篭ってしまった。だから、毎週様子を見に行っていたのだが、どうやら風邪を引いていた様だな。もう治ったか?」

風邪?
何のこと……。

それに、王太子が毎週私を訪ねていただなんて、知らなかった。

そうか、今日見た義母の不機嫌そうな態度の答えはこれだ。

王太子が毎週私に会いに来ている。
だからどうにかして、私たちを合わせない様に私が風邪だと嘘をついて追い払っていた。

なるほど、大体分かった。

「えぇ、お陰様で。魔力を使いすぎて風邪を引いてしまって。なかなか魔力が回復しなくて、ご迷惑をお掛けしました」

私は取り敢えず、義母の嘘に従う。

王太子は私の表情を探る様に眺めた後、口を開く。

「そうか、良かった。これからはまた会えそうだな」

私は少し笑った。

この笑顔をこの人の前でする日が来るなんて、思いもしなかった。

胸が苦しい。
王太子だけには、こんな嘘の笑顔なんて見せたく無かったのに。
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