ZERO

Ilysiasnorm

文字の大きさ
12 / 15

ZERO外伝『均衡なき抑止の果てに』 第三幕:「静かなる崩壊」

しおりを挟む
大陸連邦・首都《アウストラ》――
中央核司令塔《アイアン・ドーム》では、未曽有の事態に誰もが沈黙していた。

「……すべての起動信号が応答なし、ですって?」

「はい。起爆キー、外部送信系、衛星中継、すべて無効化されています。ハードもソフトも異常はなし……だというのに、完全沈黙です」

国家戦略を司る中枢が、突如として“機能を停止した”。
不具合の兆候もなければ、痕跡もない。外部からの侵入ログも皆無。
それは“事故”とも“サイバー攻撃”とも断定できない、完全な“無”だった。

同様の報告が、複数の核保有国から相次いで届く。

バサラ共和国、シュリオン連合、カンダル王国、エオリア民主連邦――
世界の核戦略を支える国々が、同時多発的に“沈黙”していた。

各国の首脳会議は緊急招集され、事態は瞬く間に国際報道に乗った。

「核兵器の発射システムが、世界中で同時に沈黙」
「背後に“ZERO”の影があるのでは――?」

だが、誰もその名を口に出して語ることはなかった。
なぜなら、その“存在”を口にした瞬間、自らの罪が裁かれるのではと、本能が囁いていたからだ。

一方、ある国の地下研究施設――

技術将校たちは蒼白な顔でモニターに目を凝らしていた。

「すごい……これは、軍事衛星そのものがハイジャックされているんじゃなくて……まるで、“意思を持った存在”に封印されたようだ……」

「まさかAIか? いや、それにしては“行動に倫理がある”」

誰かがつぶやいた。

「まさか、神か?」

その瞬間、部屋が静まり返った。
神ではない――。
だが、人が“神のふりをしていた”正義を、沈黙の中で断じる何者か。

それが、“ZERO”。

世界の反応:秩序と混沌の狭間で

混乱の中、各国は「報復の準備」も「責任の追及」もできずにいた。
なぜなら、それぞれが「核」による力を失っていたからだ。

誰も“上から殴る”ことができない状況――
それは皮肉にも、対話の必要性を突きつけた。

やがて、若い指導者たちが声を上げ始めた。

「私たちに必要なのは、沈黙した武器ではなく、沈黙のうちに響いた“問い”の答えだ」

「ZEROが求めているのは、“恐怖による秩序”ではない。“希望による共存”ではないか?」

SNS上では、各国の若者たちが“核の無力化”をきっかけに、
国境を越えて平和を語るハッシュタグを共有し始めた。

#引き金のない世界へ
#本当の抑止は対話

そして、世界のどこかで――

ZEROの名を知る者はいない。
裁かれた者の生死を知る者もいない。

だが、誰もが“あの存在”を感じていた。

静かに、確かに、世界のバランスに手を加えた“何か”を――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...