8 / 15
神の名を騙る者
しおりを挟む
──アジア南部、ベリス共和国。 世界地図には小さくしか描かれないこの国は、長年内戦が続いた結果、国際社会の中で孤立を深めていた。 その政治体制は独裁でありながら、宗教的理念を前面に掲げ、国民に信仰と忠誠を強いた。
ベリス国防省長官……ハサン・アル・ザイーム。 彼は軍事力と宗教指導者としての地位を併せ持つ“国家そのもの”と称されている。
各地で続発する爆破事件、 欧州の難民キャンプ襲撃、 中東石油施設への無人攻撃ドローン……
その背後には、必ずこの小国が資金提供していた。 兵器を送り、戦闘員を訓練し、国家ぐるみでテロネットワークを支援してきたのだ。
国際社会は証拠不十分を理由に、静観を続けてきた。 なぜなら、ザイームは“国家元首”として扱われ、 公にはいかなる非難も出来ない“外交上の聖域”にあったからだ。
だがその実、国境を越えたテロリズムの多くはこの男の「信仰」によって支えられていた。
ある夜、ザイームの執務室に漆黒の封筒が届く。 封蝋には銀色の“0”。
『ZEROより……汝、神を騙る者よ。裁きの時が来た。』
ベリス共和国建国記念日。 市民が広場に集い、ザイームの演説に喝采を送る。
「我らは神の民である!西洋の毒を断ち切り、神の名のもと世界を正すのだ!」
その瞬間、首都中心部の電力が遮断される。 巨大スクリーンが切り替わり、かつて支援されたテロ組織の犯行映像が流される。
「この武器を与えたのは……」 「この資金を供与したのは……」 「この命を弄んだのは……」
ベリス政府の裏金口座、ザイームのサイン入りの軍事輸送命令書、 国家主導の“殉教者育成施設”の映像までが順に晒されていく。
群衆が騒然とする中、ザイームは軍に命じようとするが、 その通信ラインすらも既に遮断されていた。
地下へ逃れたその時、待っていたのは黒衣の人物。
「お前は国を騙り、神を騙った。 だが裁くのは神ではない。 それでも人は、裁きを欲している。」
ザイームは叫ぶ。 「我が正義は世界の浄化だ!それが罪か!」
黒衣の者はただ一言、告げた。 「ZEROが裁くのは、人を装い、人を弄ぶ者……それだけだ」
制裁は無音で下され、彼の“国”は一夜にして機能を停止した。 軍事ネットワークは無力化され、武器庫は遠隔で焼かれ、 秘密支援口座は全て世界へ公開された。
翌朝、ベリスは沈黙していた。 ザイームは“行方不明”とだけ報じられ、国家は形だけ残された。
だが誰も、ZEROの姿を見た者はいない。
ハサン・アル・ザイーム。 彼もまた、かつてはこの小国を立て直そうと願った一人の青年だった。 国際社会に見捨てられ、援助も届かぬ国土で、 彼は「外敵と戦える強さこそが正義」と信じていた。
だが、その正義がいつしか他国を“敵”と定義し、 自国民を“盾”とし、信仰を“武器”とする体制を築き上げてしまった。
ZEROの裁きが正しかったかは、誰にもわからない。 だが彼の正義が、どこかで歪み、 神の名を使って命を弄ぶものへと変わっていったことだけは……事実だった。
ベリス国防省長官……ハサン・アル・ザイーム。 彼は軍事力と宗教指導者としての地位を併せ持つ“国家そのもの”と称されている。
各地で続発する爆破事件、 欧州の難民キャンプ襲撃、 中東石油施設への無人攻撃ドローン……
その背後には、必ずこの小国が資金提供していた。 兵器を送り、戦闘員を訓練し、国家ぐるみでテロネットワークを支援してきたのだ。
国際社会は証拠不十分を理由に、静観を続けてきた。 なぜなら、ザイームは“国家元首”として扱われ、 公にはいかなる非難も出来ない“外交上の聖域”にあったからだ。
だがその実、国境を越えたテロリズムの多くはこの男の「信仰」によって支えられていた。
ある夜、ザイームの執務室に漆黒の封筒が届く。 封蝋には銀色の“0”。
『ZEROより……汝、神を騙る者よ。裁きの時が来た。』
ベリス共和国建国記念日。 市民が広場に集い、ザイームの演説に喝采を送る。
「我らは神の民である!西洋の毒を断ち切り、神の名のもと世界を正すのだ!」
その瞬間、首都中心部の電力が遮断される。 巨大スクリーンが切り替わり、かつて支援されたテロ組織の犯行映像が流される。
「この武器を与えたのは……」 「この資金を供与したのは……」 「この命を弄んだのは……」
ベリス政府の裏金口座、ザイームのサイン入りの軍事輸送命令書、 国家主導の“殉教者育成施設”の映像までが順に晒されていく。
群衆が騒然とする中、ザイームは軍に命じようとするが、 その通信ラインすらも既に遮断されていた。
地下へ逃れたその時、待っていたのは黒衣の人物。
「お前は国を騙り、神を騙った。 だが裁くのは神ではない。 それでも人は、裁きを欲している。」
ザイームは叫ぶ。 「我が正義は世界の浄化だ!それが罪か!」
黒衣の者はただ一言、告げた。 「ZEROが裁くのは、人を装い、人を弄ぶ者……それだけだ」
制裁は無音で下され、彼の“国”は一夜にして機能を停止した。 軍事ネットワークは無力化され、武器庫は遠隔で焼かれ、 秘密支援口座は全て世界へ公開された。
翌朝、ベリスは沈黙していた。 ザイームは“行方不明”とだけ報じられ、国家は形だけ残された。
だが誰も、ZEROの姿を見た者はいない。
ハサン・アル・ザイーム。 彼もまた、かつてはこの小国を立て直そうと願った一人の青年だった。 国際社会に見捨てられ、援助も届かぬ国土で、 彼は「外敵と戦える強さこそが正義」と信じていた。
だが、その正義がいつしか他国を“敵”と定義し、 自国民を“盾”とし、信仰を“武器”とする体制を築き上げてしまった。
ZEROの裁きが正しかったかは、誰にもわからない。 だが彼の正義が、どこかで歪み、 神の名を使って命を弄ぶものへと変わっていったことだけは……事実だった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる