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1章 旅立ちの日に
#15 授与式⑦ 先導者と野生
しおりを挟むざわざわざわ
大半の鑑定が終わり、会場は緊張感を失っていた。
『えーでは次は、ルーク=スタールさんの鑑定です。』
シーン……。
司会がルークの名前を告げると、騒がしかった会場が静まり返る。
どうやらどの貴族もルークのゲインに興味があるようだ。
「じゃあ、お先―」
「おう!次の俺のゲインがかすまないくらいのゲインで頼むな!」
「そんなのわかんないよ」
二人は周りの緊張感などお構いなしに会話を交わすとルークは神父の前へと向かった。
「ほー、あれが王の血筋か…」
「騎士団最年少団長アナリスの弟だろ?これは楽しみだな。」
二階で見物しているスカウト達のひそひそ話が聞こえる。
『オー我らが神、メーラよ!この者に祝福をあたえたまえ!【神託】』
神父のクレモンテが魔法を唱え、ルークに手をかかげる。
【裁定眼の先導者】
「えっ…」
自分のゲインを見てルークは固まる。
「なんだあのゲインは?」
「見たことないが『裁定』ってことは神父のような能力か?」
ガヤガヤガヤ
会場が騒がしくなる。
「王族が生活ゲインって…」
「スタール家も終わりだな。」
「いや、長男がだめでもあのアナリス様がいらっしゃるから…」
【水槍】
ドガンッ
「あなたたち、黙りなさい。ルークに対する暴言は私に対する暴言にもなるとお分かりかしら?」
しーん…
グレアが会場の壁に向かって魔法を放ち、貴族たちを睨み付け黙らせると足を組んで席に座り直す。
「グレア…」
ルークはそんなグレアを驚いた表情で見つめ、そして席へ戻る。
(おっかねぇ…あの女…)
リオラは破壊された会場の壁を見て驚愕する。
『あのー聖堂を壊されては…』
「なにか問題があって?」
『い、いえ!で、では最後の鑑定へと参ります!えーリオラさん前の方へお願いいたします!』
司会はグレアの圧にそれ以上何も言えず、そそくさと式を進行する。
「おっ、俺の番か!よ、よしっ!」
リオラは柄にもなく緊張しているのか、同じ側の手足が同時に出てしまう。
クスクス
静まり返っていた会場に笑い声が広がる。
「おいおい、なんだあれ?緊張しすぎだろ」
「てかあいつ誰だ?あの服装見る限り平民じゃないのか?」
「なんで平民が混ざってんだよ!」
笑い声は徐々にリオラを見下すような声に変わる。
(さすがにこれは我慢することはできないな)
席についてぼんやりと眺めていたルークだが、リオラに対する罵声に我慢できず反論しようと立ち上がる。
「君たち、それは―」
「おい坊主!さっきの威勢はどうしたぁ?ガハハハッ!もしやビビッているのか?」
ルークの声が響く前に別の方向から大きな声が響いた。
どうやら二階からのようだ。
会場の人間がそちらに注目する。
「ビビッてなんかねぇよ!てか誰だよ一体…。うん?確かあのおっさんは…」
リオラもそちらを見るとそこには照明の光を反射するまばゆいスキンヘッドの男がいた。
「おっ!なーんだ、おっさんも見てたのか!」
「おーい」とリオラは手を振る。
その表情にはさきほどまでの緊張も見受けられない。
「お、おい!あれって帝国騎士団長じゃないか!?」
「なんでこの国のトップがわざわざ見に来てるんだよ!」
「てか、あいつディオメデス様と知り合いかよ…何者なんだ?」
会場の人々は先ほどまでの小馬鹿にした目ではなく、リオラに関心の目を向ける。
「あー僕の出る幕はなかったみたいだね。」
ルークは握ったこぶしをほどきつつ苦笑しながら着席する。
「ディオメデス様、あまり目立たれるのは…。」
ディオメデスの隣に立つ綺麗な女性が注意する。
「ガハハハッすまんすまん!いやー、あやつの息子だと思うとついはしゃいでしまうわい。」
「それでは鑑定の方を始めさせてもらう。『オー我らが―』」
「あのさ、あのさ!それ言わなきゃ鑑定ってできないの?前振りが長すぎて俺までまわってくるのすげー遅かったんだけど」
クスクスクス
リオラの指摘に会場が、特に二階の他のギルドのスカウト達から笑いが起こる。
「―オッホン。リオラ君だったかな?鑑定ができないから黙ってそこに立ってなさい。」
神父のクレモンテは顔を赤くしながらリオラに告げる。
「だって―」
まだ何か言いたそうなリオラを無視し、クレモンテは魔法を唱え始める。
『オー我らが神、メーラよ!この者に祝福をあたえたまえ!【神託】』
クレモンテが手をかざすとリオラの頭の上に文字が浮かび上がる。
【…に縛られ…野生…】
そこには途切れ途切れになり読めない文字が現れた。
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