拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

文字の大きさ
150 / 333
新たな旅 ー王都ー

370

「現在は衛兵に身柄を引き渡し、余罪を含め取り調べ中とのこと。
 この度はポーレットから起きました事、お手数をおかけしました。」

 夕日が傾き始めた王室の庭。
 タヴァロス侯爵一家を拘束したとの報告を終えるとポーレット公爵テオルドは国王アルフレッドに頭を下げた。

「いいや、これは国難に続く話であると思った方がいい。
 むしろ、よく気づいてくれたものだ。
 
 それにしても敵陣に乗り込んだのに、専属冒険者殿は連れてはいかなかったのか?」

 先程から、庭で焚き火をしている真っ黒な青年に視線をやりアルフレッドは微笑んだ。

「貴族の政治など本来イオリには関係のない事。
 何よりもタヴァロスを追い詰めていた時の我々の顔もさぞ醜かっただろう。
 イオリは神の愛し子・・・。見せなくても良いものだ。」

 呟くテオルドにアルフレッドは頷いた。

「愛し子か・・・我が時代に現れるとは思わなんだ。
 あの子の力は凄まじいか?」

「強いぞ。我々には扱えない武器を容易に使いこなす。
 聞けば答えてくれるだろう。
 しかしなアル・・・。愛し子とは武力ではないと私は思っている。
 愛し子の力とはアレだ。」

 テオルドが顎でしゃくるのを見てアルフレッドは視線を動かした。

 イオリが焚き火で煮込んでいる大鍋を、覗いている子供達が湯気を顔に当てて笑っている。

「死戦をくり抜け、親とは死に別れたり売られたり、心に傷をおった者達をイオリは癒した。
 砂糖や塩など我々には思いつかない技術を持ち込み、あの子はそれを自分の利益にはしないのだ。
 騙し騙され、試し試されの貴族社会にドップリ浸かってきた私には眩しい子なんだ。」

「そうか・・・。
 それならば私も同じだな。我らは同じ魂を持った兄弟なのだから。」

 顔を見合わせた2人は微笑むと立ち上がりイオリ達の元に足を向けた。


_______

 テオルド達がタヴァロス侯爵家に向かって行ったその頃、離宮・シグマには国王陛下からオルガ夫人宛に《イオリや子供達も連れて遊びにおいで》と言伝が届いた。

 緊張するヒューゴといつもと変わらず、お構いなしの子供達を引き連れてオルガはイオリと共に王城の奥まで足を運んだのであった。

「国王陛下のお招きにより参上致しました」

 スカートを持ち上げカーテシーをするオルガの後ろにイオリ達は並んだ。

「よく来たな。オルガ。
 今日はここで好きに過ごすが良い。」

「ありがたき幸せにございます。
 では・・・。イオリちゃんがお菓子を作ってくれたのよ。
 シシィちゃん一緒に食べましょう!」

 先程までの淑女のマナーなど関係なくオルガは王妃シシリアに手を振った。

「キャー!嬉しい!!紅茶にしましょう。」

「待て。2人共・・・。
 オルガそれよりも先に紹介をしてもらえるか?」

 呆れたように言うアルフレッドにオルガ夫人は「あら、忘れてた。うふふ」とイオリ達の元に戻った。

「コホンっ。
 ご存知こちらが冒険者のイオリちゃん。
 いつもお世話になっているの。

 みんなー。あの方々が国王アルフレッド様と王妃シシリア様よ。」

 イオリはニッコリとし前に出ると膝をついた。

「国王陛下とはご挨拶をさせて頂きましたが改めまして、冒険者をしておりますイオリと申します。
 ご招待いただきまして有難うございます。

 こちらにおりますのが、従魔のゼン・アウラ・ソル。
 双子のスコルとパティにエルフのナギ。
 兄妹のヒューゴとニナでございます。」

「弟達が世話になっている。
 アースガイルの各地での問題にも手を貸してくれていると聞いた。
 礼を言う。」

「誤解なきように言いますと俺は自由にしているに過ぎません。
 でも、褒められると嬉しいです。」

 照れるイオリにアルフレッドは好感を持った。

「これからもアースガイルの地において、自由に過ごすが良い。
 今日は無礼講だ。
 肩を張らずに楽しんでいくといい。」

「有難うございます。」

 イオリの後ろで一緒になって膝をつくヒューゴと真似をする子供達にアルフレッドは優しく微笑んだ。



「ねーねー。王様はテオのお兄ちゃんなの?」

 そんな中、イオリの後ろから小さい声が聞こえてきた。

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?

chocopoppo
ファンタジー
【毎日12:10更新!】 松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。 特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。 第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

三人の孤児の中から聖女が生まれると言われましたが、選ばれなかった私が“本物”でした

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
フクシア神教国では、聖女になることは最高の誉れとされている。 ある日、予言者は三人の孤児を指してこう告げた。 「この中から、一人は聖女になる」と。 長女カヤ、次女ルリア、そして三女ケイト。 社交的で人望のある姉たちは「聖女候補」として周囲に期待され、取り巻きに囲まれていた。 一方でケイトは、静かで目立たず、「何にもなれない」と言われる存在。 ――だが。 王族が倒れ、教会の治癒でも救えない絶望の中。 誰にも期待されていなかった少女が、ただ「助かってほしい」と願った瞬間――奇跡は起きた。 その日、教会は“本物”を見つける。 そして少女は、まだその意味も知らないまま、聖女として迎えられることになる。 これは、誰にも選ばれなかった少女が、神に選ばれるまでの物語。

神様の手違いで異世界転生した俺の魅了チートが、勇者のハーレムを根こそぎ奪って溺愛ハーレム作りました!

まさき
恋愛
ブラック企業で働き続けた俺、佐藤誠が過労で倒れ、気づけば異界の地。 「手違いで死なせちゃってごめん!」という神様から、お詫びに貰ったのは規格外の【魅了】スキル——。 だが、元社畜の俺にはその自覚が微塵もない! ​ただ誠実に、普通に生きようとしているだけなのに、エルフの賢者、獣人の少女、最強の聖女、さらには魔王の娘までもが、俺の「社畜仕込みの優しさ」に絆されて居座り始める。 ​一方で、10年かけて仲間を集めたはずの「勇者・勝利」は、自身の傲慢さゆえに、誠へとなびく仲間たちを一人、また一人と失っていく。 「俺は勇者だぞ! なぜ手違い転生者に負けるんだあああ!?」 ​人界から天界、そして宇宙の創造へ——。 無自覚な誠実さで世界を塗り替えてしまう、元社畜の究極溺愛ハーレムファンタジー、ここに開幕!

神様のミスで死んだので、神獣もふもふと異世界インターネットで快適スローライフ始めます ~最強生活チートと1000万ポイントでポチりまくり!~

幸せのオムライス
ファンタジー
★HOTランキング1位感謝!(2026.1.23) カクヨムコン異世界ファンタジー女性主人公部門 週間ランキング4位!★ 山根ことり、28歳OL。私の平凡な毎日は、上から降ってきた神様の植木鉢が頭に直撃したことで、あっけなく幕を閉じた。 神様の100%過失による事故死ということで、お詫びにもらったのは3つのチート能力。 ①通販サイトや検索が使える【異世界インターネット接続】 ②もふもふ動物と話せる【もふもふテイマー&翻訳】 ③戦闘はできないけど生活は最強な【生活魔法 Lv.99】 私の願いはただ一つ。働かずに、可愛いペットともふもふしながら快適なスローライフを送ること! のはずが、転生先は森のど真ん中。おまけに保護された先の孤児院は、ご飯はまずいしお風呂もない劣悪環境!? 「私の安眠のため、改革します!」 チート能力を駆使して、ボロ屋敷がピカピカに大変身! 現代知識と通販調味料で絶品ごはんを振る舞えば、心を閉ざした子供たちも次々と懐いてきて……? 気づけばギルドに登録し、薬草採取で荒稼ぎ。謎の天才少女として街の注目株に!? あれ、私のスローライフはどこへ? これは、うっかりチートで快適な生活基盤を整えすぎた元OLが、最強神獣もふもふや仲間たちとのんびり暮らすために、ついでに周りも幸せにしちゃう、そんな物語。 【今後のストーリー構想(全11章完結予定)】 第1章 森の生活と孤児院改革(完結済) 第2章 ヤマネコ商会、爆誕!(完結済) 第3章 ようこそ、ヤマネコ冒険部へ! 第4章 王都は誘惑の香り 第5章 救国のセラピー 第6章 戦場のロジスティクス・イノベーション 第7章 領主様はスローライフをご所望です 第8章 プロジェクト・コトリランド 第9章 ヤマネコ式教育改革 第10章 魔王対策は役員会にて 第11章 魔王城、買収しました(完結予定)

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!