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深淵のダンジョン 〜オリオンの元へ〜
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「・・・ったく。
本気で黒狼の尻尾を踏む奴がいるとはね。
考えなしの馬鹿は気楽でいいねぇ。」
ルゴーが深い溜息を吐いている頃、イルツクの街をゆっくりと馬車で移動していたイオリ達である。
「おい。
ギルマスは何て言ってたんだ?」
御者席からヒューゴが聞けばイオリは苦笑した。
「あ~。
なんか、ダンジョン攻略者の宝を狙っている輩もいるから気を付けろって。
Sランク冒険者を狙うなんて考えられないと思うかもしれないが、世の中には馬鹿がいるからなって言ってました。」
「・・・成程な。
だから、変な気配がするのか。」
冒険者ギルドから出て来てから、ねっとりとした視線を感じていた。
それは子供達も同じようで、場数を踏んでいる双子と違ってナギとニナは落ち着かないようだ。
「ギルドで張ってた奴だろう。
襲ってくるのは街の外でか・・・。」
ヒューゴの呟きにもイオリが気にするでもなくゼンを撫でていると、なんだか街の入り口が騒がしい。
「何っ?あっ・・・。
ギロック伯爵騎士団だ」
馬車から顔を出したスコルが驚いた声を出した。
「ふふふ。」
「っははは。」
事の終わりに気が付いたイオリが笑い出すとヒューゴも可笑しいと笑っている。
それをパティが訳わからないと首を傾げる。
「何?ねぇ、何?」
街の入り口には幾人もがロープで縛り上げられ一塊になっていた。
騎士達の先頭には馬に乗った状態のディエゴ・ギロック騎士団長がおり、自身の前に子息であるリーベンを乗せていた。
リーベン少年は小さな馬車を見つけると一生懸命手を振っている。
「見送りに来てくれたんですか?」
イオリが馬車から降りると、ディエゴ・ギロック騎士団長が馬上から微笑んで頷いた。
「リーベンが見送りに行くと言って聞かなくてな。
ついでに小蝿の駆除にきた。」
小蝿と言った時、一瞬だけ捕縛された一団に目をやった騎士団長の目が鋭くなった。
「有難う御座います。
旅が快適になります。」
「“深淵のダンジョン”の攻略者に迷惑をかける阿呆共をイルツクの街から出すわけにはいかないからな。」
怒っている様子のディエゴ・ギロック騎士団長であったが、抱えていた息子に小さな手でパシパシと叩かれると瞬時に笑顔に戻っていた。
「父うえ。
いけないことばを使っています。
ダメですよ。」
「あぁ、そうだな。」
騎士団長は眉を下げると賢い息子の頭を優しく撫でてやった。
まだまだ幼い声の少年にイオリも微笑む。
「リーベン様。
見送りに来てくれて有難う御座います。」
「また、イルツクきてくれますか?」
「えぇ。この街には大切な友人がいるんです。
また来ますよ。」
イオリの言葉にリーベン少年は首を傾げる。
「ゆうじん?」
「お友達の事です。
リーベン様もうちの子達とお友達になってくれたでしょう?」
馬車から手を振るスコル、パティ、ナギ、ニナを見てリーベン少年は顔を綻ばした。
「はい!
ゆうじんです!」
「では、またお会いしましょう。」
イオリは手を伸ばして小さい手と握手をした。
「それでは。」
騎士団長とも目を合わせて笑顔で別れを告げたイオリは走り出した小さな馬車に飛び乗った。
「「「「リーベンさまぁぁ。またねぇぇぇ。」」」」
子供達の別れの言葉にリーベン少年も一生懸命に手を振った。
「またね。」
「さぁ、帰ろうか。
リーベン。」
ディエゴ・ギロック騎士団長は騎士達を見渡した。
「ダンジョン攻略の英雄を狙った不届者は1人残らず捕まえろ。
逃げ延びてる者は街から逃すな。」
ディエゴ・ギロック騎士団長は小さな馬車が街の門から出て行くのを見送ると息子と一緒に妻の待つ屋敷へと帰って行くのだった。
※※※※※ ※※※※※
いつも『続々・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難うございます。
『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の書籍化第5弾が各書店に発送されております。
ただし書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
それに伴いましてアルファポリス様に投稿している『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の[302話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。ご了承下さい。
引き続き『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』、その続編とお楽しみ下さい。
そちらの方でショートストーリーも投稿しています。是非、ご覧ください。
宜しくお願い致します。
ぽん
本気で黒狼の尻尾を踏む奴がいるとはね。
考えなしの馬鹿は気楽でいいねぇ。」
ルゴーが深い溜息を吐いている頃、イルツクの街をゆっくりと馬車で移動していたイオリ達である。
「おい。
ギルマスは何て言ってたんだ?」
御者席からヒューゴが聞けばイオリは苦笑した。
「あ~。
なんか、ダンジョン攻略者の宝を狙っている輩もいるから気を付けろって。
Sランク冒険者を狙うなんて考えられないと思うかもしれないが、世の中には馬鹿がいるからなって言ってました。」
「・・・成程な。
だから、変な気配がするのか。」
冒険者ギルドから出て来てから、ねっとりとした視線を感じていた。
それは子供達も同じようで、場数を踏んでいる双子と違ってナギとニナは落ち着かないようだ。
「ギルドで張ってた奴だろう。
襲ってくるのは街の外でか・・・。」
ヒューゴの呟きにもイオリが気にするでもなくゼンを撫でていると、なんだか街の入り口が騒がしい。
「何っ?あっ・・・。
ギロック伯爵騎士団だ」
馬車から顔を出したスコルが驚いた声を出した。
「ふふふ。」
「っははは。」
事の終わりに気が付いたイオリが笑い出すとヒューゴも可笑しいと笑っている。
それをパティが訳わからないと首を傾げる。
「何?ねぇ、何?」
街の入り口には幾人もがロープで縛り上げられ一塊になっていた。
騎士達の先頭には馬に乗った状態のディエゴ・ギロック騎士団長がおり、自身の前に子息であるリーベンを乗せていた。
リーベン少年は小さな馬車を見つけると一生懸命手を振っている。
「見送りに来てくれたんですか?」
イオリが馬車から降りると、ディエゴ・ギロック騎士団長が馬上から微笑んで頷いた。
「リーベンが見送りに行くと言って聞かなくてな。
ついでに小蝿の駆除にきた。」
小蝿と言った時、一瞬だけ捕縛された一団に目をやった騎士団長の目が鋭くなった。
「有難う御座います。
旅が快適になります。」
「“深淵のダンジョン”の攻略者に迷惑をかける阿呆共をイルツクの街から出すわけにはいかないからな。」
怒っている様子のディエゴ・ギロック騎士団長であったが、抱えていた息子に小さな手でパシパシと叩かれると瞬時に笑顔に戻っていた。
「父うえ。
いけないことばを使っています。
ダメですよ。」
「あぁ、そうだな。」
騎士団長は眉を下げると賢い息子の頭を優しく撫でてやった。
まだまだ幼い声の少年にイオリも微笑む。
「リーベン様。
見送りに来てくれて有難う御座います。」
「また、イルツクきてくれますか?」
「えぇ。この街には大切な友人がいるんです。
また来ますよ。」
イオリの言葉にリーベン少年は首を傾げる。
「ゆうじん?」
「お友達の事です。
リーベン様もうちの子達とお友達になってくれたでしょう?」
馬車から手を振るスコル、パティ、ナギ、ニナを見てリーベン少年は顔を綻ばした。
「はい!
ゆうじんです!」
「では、またお会いしましょう。」
イオリは手を伸ばして小さい手と握手をした。
「それでは。」
騎士団長とも目を合わせて笑顔で別れを告げたイオリは走り出した小さな馬車に飛び乗った。
「「「「リーベンさまぁぁ。またねぇぇぇ。」」」」
子供達の別れの言葉にリーベン少年も一生懸命に手を振った。
「またね。」
「さぁ、帰ろうか。
リーベン。」
ディエゴ・ギロック騎士団長は騎士達を見渡した。
「ダンジョン攻略の英雄を狙った不届者は1人残らず捕まえろ。
逃げ延びてる者は街から逃すな。」
ディエゴ・ギロック騎士団長は小さな馬車が街の門から出て行くのを見送ると息子と一緒に妻の待つ屋敷へと帰って行くのだった。
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ぽん
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