続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

文字の大きさ
404 / 453
深淵のダンジョン 〜オリオンの元へ〜

402

「・・・ったく。
 本気で黒狼の尻尾を踏む奴がいるとはね。
 考えなしの馬鹿は気楽でいいねぇ。」

 ルゴーが深い溜息を吐いている頃、イルツクの街をゆっくりと馬車で移動していたイオリ達である。

「おい。
 ギルマスは何て言ってたんだ?」

 御者席からヒューゴが聞けばイオリは苦笑した。

「あ~。
 なんか、ダンジョン攻略者の宝を狙っている輩もいるから気を付けろって。
 Sランク冒険者を狙うなんて考えられないと思うかもしれないが、世の中には馬鹿がいるからなって言ってました。」

「・・・成程な。
 だから、変な気配がするのか。」

 冒険者ギルドから出て来てから、ねっとりとした視線を感じていた。
 それは子供達も同じようで、場数を踏んでいる双子と違ってナギとニナは落ち着かないようだ。

「ギルドで張ってた奴だろう。
 襲ってくるのは街の外でか・・・。」

 ヒューゴの呟きにもイオリが気にするでもなくゼンを撫でていると、なんだか街の入り口が騒がしい。

「何っ?あっ・・・。
 ギロック伯爵騎士団だ」

 馬車から顔を出したスコルが驚いた声を出した。

「ふふふ。」
「っははは。」

 事の終わりに気が付いたイオリが笑い出すとヒューゴも可笑しいと笑っている。
 それをパティが訳わからないと首を傾げる。

「何?ねぇ、何?」

 街の入り口には幾人もがロープで縛り上げられ一塊になっていた。

 騎士達の先頭には馬に乗った状態のディエゴ・ギロック騎士団長がおり、自身の前に子息であるリーベンを乗せていた。

 リーベン少年は小さな馬車を見つけると一生懸命手を振っている。

「見送りに来てくれたんですか?」

 イオリが馬車から降りると、ディエゴ・ギロック騎士団長が馬上から微笑んで頷いた。

「リーベンが見送りに行くと言って聞かなくてな。
 ついでに小蝿の駆除にきた。」

 小蝿と言った時、一瞬だけ捕縛された一団に目をやった騎士団長の目が鋭くなった。

「有難う御座います。
 旅が快適になります。」

「“深淵のダンジョン”の攻略者に迷惑をかける阿呆共をイルツクの街から出すわけにはいかないからな。」

 怒っている様子のディエゴ・ギロック騎士団長であったが、抱えていた息子に小さな手でパシパシと叩かれると瞬時に笑顔に戻っていた。

「父うえ。
 いけないことばを使っています。
 ダメですよ。」

「あぁ、そうだな。」
 
 騎士団長は眉を下げると賢い息子の頭を優しく撫でてやった。
 まだまだ幼い声の少年にイオリも微笑む。

「リーベン様。
 見送りに来てくれて有難う御座います。」

「また、イルツクきてくれますか?」

「えぇ。この街には大切な友人がいるんです。
 また来ますよ。」

 イオリの言葉にリーベン少年は首を傾げる。

「ゆうじん?」

「お友達の事です。
 リーベン様もうちの子達とお友達になってくれたでしょう?」

 馬車から手を振るスコル、パティ、ナギ、ニナを見てリーベン少年は顔を綻ばした。

「はい! 
 ゆうじんです!」

「では、またお会いしましょう。」

 イオリは手を伸ばして小さい手と握手をした。

「それでは。」

 騎士団長とも目を合わせて笑顔で別れを告げたイオリは走り出した小さな馬車に飛び乗った。

「「「「リーベンさまぁぁ。またねぇぇぇ。」」」」

 子供達の別れの言葉にリーベン少年も一生懸命に手を振った。

「またね。」

「さぁ、帰ろうか。
 リーベン。」
 
 ディエゴ・ギロック騎士団長は騎士達を見渡した。

「ダンジョン攻略の英雄を狙った不届者は1人残らず捕まえろ。
 逃げ延びてる者は街から逃すな。」

 ディエゴ・ギロック騎士団長は小さな馬車が街の門から出て行くのを見送ると息子と一緒に妻の待つ屋敷へと帰って行くのだった。


※※※※※ ※※※※※

 いつも『続々・拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』をご覧頂きまして有難うございます。

 『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の書籍化第5弾が各書店に発送されております。
 ただし書店や地域によって数日後ろに倒れる事があります。
 
 それに伴いましてアルファポリス様に投稿している『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』の[302話]までを引き下げ、レンタル版との差し替えをさせて頂きます。ご了承下さい。

 引き続き『拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~』、その続編とお楽しみ下さい。
 そちらの方でショートストーリーも投稿しています。是非、ご覧ください。
 宜しくお願い致します。

 ぽん

あなたにおすすめの小説

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

番(つがい)と言われても愛せない

黒姫
恋愛
竜人族のつがい召喚で異世界に転移させられた2人の少女達の運命は?

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。