159 / 452
王都へ 〜ポーレット領〜
157
アースガイルにある数ある騎士団の衣装は全て白で統一されている。
そこにデザインや装飾の色や模様によって領地の騎士団に区別をつけているのだ。
ポーレット公爵家騎士団の衣装には白いカーバンクルの刺繍が守護符として施されている。
普段なら目立たぬ白い刺繍糸は、特別製で太陽の光の加減などで浮き出て輝いて見える事から人々から憧れの視線を集める事も多い。
その先頭に立つ騎士団長という責務は憧れだけでは務まらない。
以前、ヴァルトは騎士団長アイザックについて「愛情深い頑固ジジイ」と評していた。
恐らく、アイザックから剣の指南を受けているヴァルトにとって優しさだけではない側面を見ているのだろう。
イオリから見た印象は、逞しく豪快でありながら頼り甲斐のある優しい人だ。
それに戦闘についての良き相談相手の1人でもある。
今日も夜間くらいイオリも休めと言われていた。
これまでの旅路で魔獣を追い払ったり、食事の準備をしたり何かと忙しく動き回っていたイオリを労っての事だろう。
しかし、護衛の依頼を受けておいて呑気に眠っているのも違うだろうと、イオリは日中御者席を預けているヒューゴの代わりに夜中は起きている事にしたのだ。
「昼間に寝させて貰えば良いからね。」
絶対神リュオンの魔法のテントがあれば、寝ずの番などしなくても安心して眠れるのだが、失ったものに執着してばかりではつまらない。
「こんな風に過ごすのも悪くないよね。」
いつの間にかアウラの足の間で眠っていたゼンを見つめてイオリは微笑み、満天の星空を見上げた。
イオリは普通の旅を楽しんでいた。
_____
とある北方の領地にある屋敷で酒を酌み交わす者達の会話が聞こえてくる・・・。
「何とも長い婚約期間であったな。」
「王太子殿下が望んだと聞いていたが、存外本気ではなかったのではないか?」
「ハハハ。
であるなら、我が娘にもまだ機会があるやもしれませんな。」
「はしたない事を仰る。
お相手は侯爵家の御令嬢でありながら軍の副官を最年少で務めておられた素晴らしい女性ですわよ。」
「いやいや、剣を握り戦場を駆け巡る女性よりも淑女である我が娘の方が彼の方の癒しなるのではないかと思った次第で、他意はないのですよ。
ハハハ。
例え、王妃になれなくともお側に侍る可能だってありますからね。」
酒を煽る1人の男に感情様々な視線が集まる。
「此度は目出度い日を迎える王都行きですぞ。
あまり滅多な事を申されますな。
シェイムレス伯爵。」
老齢の貴族に嗜められても男は饒舌だった。
「なに。
我が娘を一度ご覧いただければ、彼の方もお求め頂けるはずなのです。
皆様も如何です?
我が娘を推挙して頂ければ、何かと良い事もありましょう。
いやいや、そんな事は夢でしょうかな。
ハハハハ。」
「それは、楽しそうな夢の話ですな。」
「ハハハ。
シェイムレス伯爵は夢を語られるのがお好きなようだ。」
酒の入った男は陽気に冗談めかして話しているが、皆シェイムレス伯爵が本気である事は分かっていた。
その中でいて、隠すことなく会話を冷淡な眼差しで見つめる女がいた。
「ギロック伯爵様。
追加のワインは如何ですか?」
侍女の背後にはワインが入ったデキャンタが見える。
「結構よ。
王都に着く前に悪酔いしたくないの。」
男の戯言に耳を塞ぎたいとばかりに、残り少なくなったワイングラスを手にしたイルツクの領主アナスタシア・ギロック女伯爵は、夜風にあたる為にバルコニー移動すると不愉快に染まった心を癒すのだった。
そこにデザインや装飾の色や模様によって領地の騎士団に区別をつけているのだ。
ポーレット公爵家騎士団の衣装には白いカーバンクルの刺繍が守護符として施されている。
普段なら目立たぬ白い刺繍糸は、特別製で太陽の光の加減などで浮き出て輝いて見える事から人々から憧れの視線を集める事も多い。
その先頭に立つ騎士団長という責務は憧れだけでは務まらない。
以前、ヴァルトは騎士団長アイザックについて「愛情深い頑固ジジイ」と評していた。
恐らく、アイザックから剣の指南を受けているヴァルトにとって優しさだけではない側面を見ているのだろう。
イオリから見た印象は、逞しく豪快でありながら頼り甲斐のある優しい人だ。
それに戦闘についての良き相談相手の1人でもある。
今日も夜間くらいイオリも休めと言われていた。
これまでの旅路で魔獣を追い払ったり、食事の準備をしたり何かと忙しく動き回っていたイオリを労っての事だろう。
しかし、護衛の依頼を受けておいて呑気に眠っているのも違うだろうと、イオリは日中御者席を預けているヒューゴの代わりに夜中は起きている事にしたのだ。
「昼間に寝させて貰えば良いからね。」
絶対神リュオンの魔法のテントがあれば、寝ずの番などしなくても安心して眠れるのだが、失ったものに執着してばかりではつまらない。
「こんな風に過ごすのも悪くないよね。」
いつの間にかアウラの足の間で眠っていたゼンを見つめてイオリは微笑み、満天の星空を見上げた。
イオリは普通の旅を楽しんでいた。
_____
とある北方の領地にある屋敷で酒を酌み交わす者達の会話が聞こえてくる・・・。
「何とも長い婚約期間であったな。」
「王太子殿下が望んだと聞いていたが、存外本気ではなかったのではないか?」
「ハハハ。
であるなら、我が娘にもまだ機会があるやもしれませんな。」
「はしたない事を仰る。
お相手は侯爵家の御令嬢でありながら軍の副官を最年少で務めておられた素晴らしい女性ですわよ。」
「いやいや、剣を握り戦場を駆け巡る女性よりも淑女である我が娘の方が彼の方の癒しなるのではないかと思った次第で、他意はないのですよ。
ハハハ。
例え、王妃になれなくともお側に侍る可能だってありますからね。」
酒を煽る1人の男に感情様々な視線が集まる。
「此度は目出度い日を迎える王都行きですぞ。
あまり滅多な事を申されますな。
シェイムレス伯爵。」
老齢の貴族に嗜められても男は饒舌だった。
「なに。
我が娘を一度ご覧いただければ、彼の方もお求め頂けるはずなのです。
皆様も如何です?
我が娘を推挙して頂ければ、何かと良い事もありましょう。
いやいや、そんな事は夢でしょうかな。
ハハハハ。」
「それは、楽しそうな夢の話ですな。」
「ハハハ。
シェイムレス伯爵は夢を語られるのがお好きなようだ。」
酒の入った男は陽気に冗談めかして話しているが、皆シェイムレス伯爵が本気である事は分かっていた。
その中でいて、隠すことなく会話を冷淡な眼差しで見つめる女がいた。
「ギロック伯爵様。
追加のワインは如何ですか?」
侍女の背後にはワインが入ったデキャンタが見える。
「結構よ。
王都に着く前に悪酔いしたくないの。」
男の戯言に耳を塞ぎたいとばかりに、残り少なくなったワイングラスを手にしたイルツクの領主アナスタシア・ギロック女伯爵は、夜風にあたる為にバルコニー移動すると不愉快に染まった心を癒すのだった。
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
「ちょっと待った」コールをしたのはヒロインでした
みおな
恋愛
「オフェーリア!貴様との婚約を破棄する!!」
学年の年度末のパーティーで突然告げられた婚約破棄。
「ちょっと待ってください!」
婚約者に諸々言おうとしていたら、それに待ったコールをしたのは、ヒロインでした。
あらあら。婚約者様。周囲をご覧になってくださいませ。
あなたの味方は1人もいませんわよ?
ですが、その婚約破棄。喜んでお受けしますわ。
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
⚪︎
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました
ララ
恋愛
3話完結です。
大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。
それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。
そこで見たのはまさにゲームの世界。
主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。
そしてゲームは終盤へ。
最後のイベントといえば断罪。
悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。
でもおかしいじゃない?
このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。
ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。
納得いかない。
それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?
なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました
ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、小さい頃から、妹のエルーシアにネックレスや髪飾りなどのお気に入りの物を奪われてきた。
とうとう、婚約者のルシアンまでも妹に奪われてしまい……