続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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王都へ 〜ポーレット領〜

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 アースガイルにある数ある騎士団の衣装は全て白で統一されている。
 そこにデザインや装飾の色や模様によって領地の騎士団に区別をつけているのだ。
 
 ポーレット公爵家騎士団の衣装には白いカーバンクルの刺繍が守護符として施されている。
 普段なら目立たぬ白い刺繍糸は、特別製で太陽の光の加減などで浮き出て輝いて見える事から人々から憧れの視線を集める事も多い。

 その先頭に立つ騎士団長という責務は憧れだけでは務まらない。

 以前、ヴァルトは騎士団長アイザックについて「愛情深い頑固ジジイ」と評していた。

 恐らく、アイザックから剣の指南を受けているヴァルトにとって優しさだけではない側面を見ているのだろう。

 イオリから見た印象は、逞しく豪快でありながら頼り甲斐のある優しい人だ。 
 それに戦闘についての良き相談相手の1人でもある。
 
 今日も夜間くらいイオリも休めと言われていた。

 これまでの旅路で魔獣を追い払ったり、食事の準備をしたり何かと忙しく動き回っていたイオリを労っての事だろう。
 しかし、護衛の依頼を受けておいて呑気に眠っているのも違うだろうと、イオリは日中御者席を預けているヒューゴの代わりに夜中は起きている事にしたのだ。

「昼間に寝させて貰えば良いからね。」

 絶対神リュオンの魔法のテントがあれば、寝ずの番などしなくても安心して眠れるのだが、失ったものに執着してばかりではつまらない。

「こんな風に過ごすのも悪くないよね。」

 いつの間にかアウラの足の間で眠っていたゼンを見つめてイオリは微笑み、満天の星空を見上げた。

 イオリは普通の旅を楽しんでいた。


_____

 とある北方の領地にある屋敷で酒を酌み交わす者達の会話が聞こえてくる・・・。

「何とも長い婚約期間であったな。」

「王太子殿下が望んだと聞いていたが、存外本気ではなかったのではないか?」

「ハハハ。
 であるなら、我が娘にもまだ機会があるやもしれませんな。」

「はしたない事を仰る。
 お相手は侯爵家の御令嬢でありながら軍の副官を最年少で務めておられた素晴らしい女性ですわよ。」

「いやいや、剣を握り戦場を駆け巡る女性よりも淑女である我が娘の方が彼の方の癒しなるのではないかと思った次第で、他意はないのですよ。
 ハハハ。
 例え、王妃になれなくともお側に侍る可能だってありますからね。」

 酒を煽る1人の男に感情様々な視線が集まる。

「此度は目出度い日を迎える王都行きですぞ。
 あまり滅多な事を申されますな。
 シェイムレス伯爵。」

 老齢の貴族に嗜められても男は饒舌だった。

「なに。
 我が娘を一度ご覧いただければ、彼の方もお求め頂けるはずなのです。
 皆様も如何です?
 我が娘を推挙して頂ければ、何かと良い事もありましょう。
 いやいや、そんな事は夢でしょうかな。
 ハハハハ。」

「それは、楽しそうな夢の話ですな。」

「ハハハ。
 シェイムレス伯爵は夢を語られるのがお好きなようだ。」

 酒の入った男は陽気に冗談めかして話しているが、皆シェイムレス伯爵が本気である事は分かっていた。

 その中でいて、隠すことなく会話を冷淡な眼差しで見つめる女がいた。

「ギロック伯爵様。 
 追加のワインは如何ですか?」

 侍女の背後にはワインが入ったデキャンタが見える。

「結構よ。
 王都に着く前に悪酔いしたくないの。」

 男の戯言に耳を塞ぎたいとばかりに、残り少なくなったワイングラスを手にしたイルツクの領主アナスタシア・ギロック女伯爵は、夜風にあたる為にバルコニー移動すると不愉快に染まった心を癒すのだった。

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