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3話目 居場所
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僕は今日病院の日だ。
今日も待合室には沢山の人がいる。
いつもなら僕は憂鬱な気持ちで待っているけど、紡さんのおかげで少し前向きな気持ちでいれる。
今の僕なら病気と向き合える気がしている。
診察室に呼ばれた僕は椅子に座り、先生と対峙した。
「調子はどうだい?」
「比較的安定している方です。不安な事があっても少し物事を前向きに捉える事ができるようになってきたと思います。」
先生は驚いた表情をしている。
そりゃそうだ。僕は診察でいつも俯いてマイナスな事ばかり言っている。
そんな僕が上を向いた発言をしているのだ。
「そっか。何か君の中であったのかな?」
「そうですね。友人とあと……訪問看護の方々の言葉に助けられています!」
色々な人に支えられて今の僕がいるという事を最近しみじみと感じている。
前までは他人と関わる事自体に恐怖心を抱いていた。
土足で自分のテリトリーに入られるのも精神的にきつかったし、何より僕自身を否定されるのが怖かった。
先生に訪問看護をいれないかと勧められた時、最初は拒否反応を起こしていた。
仕事以外引きこもって家の事もできず、人との接触を極力避けていた僕を先生は引っ張り出そうとしてくれた。
その気持ちを汲み取って、僕は訪問看護を受け入れた。
仕事でも極力話さない僕が、看護師と週二で、しかも家に招き入れて会話したりすることに戸惑いや緊張があった。
そして何より何もできない自分を否定されるのが怖かった。
でもそんな僕に理解を示してくれて、改善策を一緒に考えてくれる。
そして何より訪問看護をいれたから、紡さんという素敵な方に出会えた。
「そっか、いい表情してるよ。人と話したり、コミュニケーションを取ることも難しかった君が、いい人に巡り会えて少しずつ会話とかができるようになったんだね。いい傾向だよ。」
「このまま前に進めたら嬉しいです。」
「現実は残酷で厳しい。だから何をどうしたいか少しずつ点を作って線を結んでみると未来が見えてくるかもね。」
「点と線ですか……?」
「そう、いつまでにこうなりたいという点を何個か作り、それに向けて何をするか、その思考や行動が理にかなっているか、計画と確認をして線で結ぶんだ。そうする事によって自分がどうすればいいか見出せるよ。」
なるほど、人生計画みたいなものか。
未来の自分が全く想像できない。
いや、未来を想像するための最初のステップなのか。
「まあそう簡単なものではないよ。まずは君にとって必要だと思う大きな核を一つ掲げてみよう。何かあるかい?」
考えると頭の中に紡さんの言葉が浮かんだ。
「居場所です。安心できる居場所が欲しいです。」
僕は常に孤独感を感じて生きている。
家族に見捨てられた僕は常にどこかで寂しさを感じていた。
温もりや安心というものを肌で感じたい。
「居場所ねえ……恋人や家族、友達、仕事。人間とは何かしらに依存していないと生きていけないのではないかと僕は考えているんだけど、君にとってそういうの何かあるかい?」
「僕には何もないんです。前の仕事も頑張ってやってきたつもりでしたけど、パワハラに耐え切れずこうやって精神疾患になって。かと言って今の仕事が好きというわけではないし。強いて言えば親友がいますけど、あっちはキャリア積んでるし、何だか取り残されている気がして辛いです。」
僕は感情を押し殺して生きてきた。
自分の事は後回しにして、他人の顔色をうかがってきた。
家族の前では意思を主張せず、父親の言う事に従う事が暴力から逃れる手段だったためである。
学校生活は根暗なのに無理して明るく振る舞っていた。
こんな僕だが果たして素を出して笑って安心できる居場所ができるだろうか。
「自分から作り出すっていうのも一つの手だよ。居場所がないなら居場所を作ろう。」
「具体的にどうすればいいですか?」
「誰か大切な人はいる?」
頭の中で紡さんの顔が浮かんだ。
「はい……います……」
僕はなんだか恥ずかしくなった。
そしてはっきりと自分の気持ちに気づいた。
これは恋愛感情だ。
「そういう人と互いに尊重し合えるのが理想だね。そして何より自分を大切にできない人は人を大切にできない。よく覚えといて。」
「肝に銘じておきます。」
先生の言葉をそして紡さんを大切にしたい。
紡さんへのこの気持ち、いつか実るように頑張りたい。
今日を、そしてまだ見ぬ明日に向けて生きていこう。
今日も待合室には沢山の人がいる。
いつもなら僕は憂鬱な気持ちで待っているけど、紡さんのおかげで少し前向きな気持ちでいれる。
今の僕なら病気と向き合える気がしている。
診察室に呼ばれた僕は椅子に座り、先生と対峙した。
「調子はどうだい?」
「比較的安定している方です。不安な事があっても少し物事を前向きに捉える事ができるようになってきたと思います。」
先生は驚いた表情をしている。
そりゃそうだ。僕は診察でいつも俯いてマイナスな事ばかり言っている。
そんな僕が上を向いた発言をしているのだ。
「そっか。何か君の中であったのかな?」
「そうですね。友人とあと……訪問看護の方々の言葉に助けられています!」
色々な人に支えられて今の僕がいるという事を最近しみじみと感じている。
前までは他人と関わる事自体に恐怖心を抱いていた。
土足で自分のテリトリーに入られるのも精神的にきつかったし、何より僕自身を否定されるのが怖かった。
先生に訪問看護をいれないかと勧められた時、最初は拒否反応を起こしていた。
仕事以外引きこもって家の事もできず、人との接触を極力避けていた僕を先生は引っ張り出そうとしてくれた。
その気持ちを汲み取って、僕は訪問看護を受け入れた。
仕事でも極力話さない僕が、看護師と週二で、しかも家に招き入れて会話したりすることに戸惑いや緊張があった。
そして何より何もできない自分を否定されるのが怖かった。
でもそんな僕に理解を示してくれて、改善策を一緒に考えてくれる。
そして何より訪問看護をいれたから、紡さんという素敵な方に出会えた。
「そっか、いい表情してるよ。人と話したり、コミュニケーションを取ることも難しかった君が、いい人に巡り会えて少しずつ会話とかができるようになったんだね。いい傾向だよ。」
「このまま前に進めたら嬉しいです。」
「現実は残酷で厳しい。だから何をどうしたいか少しずつ点を作って線を結んでみると未来が見えてくるかもね。」
「点と線ですか……?」
「そう、いつまでにこうなりたいという点を何個か作り、それに向けて何をするか、その思考や行動が理にかなっているか、計画と確認をして線で結ぶんだ。そうする事によって自分がどうすればいいか見出せるよ。」
なるほど、人生計画みたいなものか。
未来の自分が全く想像できない。
いや、未来を想像するための最初のステップなのか。
「まあそう簡単なものではないよ。まずは君にとって必要だと思う大きな核を一つ掲げてみよう。何かあるかい?」
考えると頭の中に紡さんの言葉が浮かんだ。
「居場所です。安心できる居場所が欲しいです。」
僕は常に孤独感を感じて生きている。
家族に見捨てられた僕は常にどこかで寂しさを感じていた。
温もりや安心というものを肌で感じたい。
「居場所ねえ……恋人や家族、友達、仕事。人間とは何かしらに依存していないと生きていけないのではないかと僕は考えているんだけど、君にとってそういうの何かあるかい?」
「僕には何もないんです。前の仕事も頑張ってやってきたつもりでしたけど、パワハラに耐え切れずこうやって精神疾患になって。かと言って今の仕事が好きというわけではないし。強いて言えば親友がいますけど、あっちはキャリア積んでるし、何だか取り残されている気がして辛いです。」
僕は感情を押し殺して生きてきた。
自分の事は後回しにして、他人の顔色をうかがってきた。
家族の前では意思を主張せず、父親の言う事に従う事が暴力から逃れる手段だったためである。
学校生活は根暗なのに無理して明るく振る舞っていた。
こんな僕だが果たして素を出して笑って安心できる居場所ができるだろうか。
「自分から作り出すっていうのも一つの手だよ。居場所がないなら居場所を作ろう。」
「具体的にどうすればいいですか?」
「誰か大切な人はいる?」
頭の中で紡さんの顔が浮かんだ。
「はい……います……」
僕はなんだか恥ずかしくなった。
そしてはっきりと自分の気持ちに気づいた。
これは恋愛感情だ。
「そういう人と互いに尊重し合えるのが理想だね。そして何より自分を大切にできない人は人を大切にできない。よく覚えといて。」
「肝に銘じておきます。」
先生の言葉をそして紡さんを大切にしたい。
紡さんへのこの気持ち、いつか実るように頑張りたい。
今日を、そしてまだ見ぬ明日に向けて生きていこう。
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