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3.魔法学院3年生 前編

(72).事件の原因究明

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「なるほど。森の中に魔法の痕跡がな。すぐに確認しよう。あの時と同じならば何かしら情報があるかもしれぬ。」


 ハロルドはすぐに森に行き、痕跡の跡を数箇所見つけた。ランベールを探していたジルベールも、話を聞き確認に来ている。


「これは…あの時と同じですね。魔法痕だけ見ても何の魔法なのか予測がつかない。」

「今回は魔物を呼ぶためと想定して、目的は…パーティーの中止?他国からの妨害だろうか?」

「…この魔法痕がここにあるという事実が問題なのでは?場内の警備やシールドを潜り抜けてきたとすると、相手はこの王場内にいるのでは?」

「ガンダルグはクロエ以外魔法はないとみて良い。怪しいのはヴィレス国の魔法使いたちか、他国か。」

「交流中に疑うのもアレですが、不信感はありますね。」


ハロルド、ジルベール、ランベールは頭を悩ませた。
ヴィレス国はあまりにも情報が少ない。


(そう言えば、彼は森の中から現れたな…ここはテオの出番かな?)



場所を移し、ソフィアも呼んで対策を練る。
魔物に荒らされた土地の癒しは精霊王たちの協力が必要だ。


「フィー、協力してもらえるかな?」

「はい。」


 精霊召喚の魔法陣で、いつものみんなを呼び出す。


「何か久しぶりじゃない?ご無沙汰してたわょね。」
「あまり呼ばれないのも、寂しいものね。」
「今回は出番なのか⁈」
「祝い事が続いておったからのぉ。良いことじゃ。」
「ソフィー、久しぶり!」
「…久しぶり。」


しばらく王宮での生活が続いていたため、精霊たちには極力精霊界で過ごして貰っていた。
 聖女だと噂されても困るからなのだが、寂しくさせてしまったらしい。
 イソールとエンギルはソフィアの側にくっついて離れない。

ランベールから説明を受け、土地の再生と癒しをヴォルグ、ユーティリア、イソールにお願いする。


「魔物が出て大変なら、しばらく私たちも出番じゃない?」


カルディナはアルフレッドに付いていた頃が楽しかったのだろう。またみんなで連絡を取り合う役割がしたいようだ。


「この王宮内だけでも保護しましょうか?ソフィーの暮らす場所だし。」


お姉様ユーティリアは久々の仕事に大盤振る舞いのようだ。


ガチャ、と入室の音がしてアルフレッドがノアと共に現れる。


「呼ばれるとは思ってなかったよ。何か分かったのか?」


ハロルドやランベールの説明で疑いをもつのはヴィレス国だ。


「その魔法痕、僕も見てみたいな。ノア、お願い出来る?」


ノアの転移でアルフレッドは確認に行ったようだ。
直ぐに戻ってきたアルフレッドたちはぶつぶつと討論している。


「ノア?どうかしたの??」


一瞬躊躇うも、覚悟してる方が皆動きやすいか…
フクロウ姿から人間の姿に変えると、真剣な表情で話し出した。


「創造主の関与を否定出来ない。」

「「「「え?」」」」



ノアを番人だと知る人間、ソフィアの関係者はその存在を知らされている。
6人の番人と、それを創り出し好きに動かす創造主。


「創造主が動き出したのか?」

「断定は出来ないが、以前の魔法痕の時期、アルやハロルドでも分からない魔法、不可解な魔物の登場…創造主のような愉快犯なら楽しみそうじゃないか?」

「以前の魔法痕の時期とは?」


 ハロルドの問いに、ノアは答える。


「以前ノアスフォード領内、王都で魔法痕が見つかった時期、特に大きな問題は起きなかったよな?」

「そうだな、何が目的なのかわからないのに、魔法痕が広がって、他国からの侵入も疑ったが、特には…」

「その時期、ソフィーの周りは慌ただしかったはずだ。マルク、テオドールと立て続けに番人だと分かって驚いただろう?」

「あぁ、その時期だっけ?ランが突撃御宅訪問してソフィー困らせたの。」

「困らせてたの?早く仲良くなりたかったんだよ。」

「まぁまぁまあ。」


ジルベールがとりなして、ノアに続きを促す。



「番人の動きと魔法痕の繋がりを疑うと、時期としては合うんだ。ここ最近新たな番人もなく、ソフィアの周りは落ち着いていた。俺の予想だと、新たな番人もしくは創造主のお出ましの時期なんじゃないかと…」

「それって危険なの?」

「正直、予想がつかない。番人の登場イコール悪ではないのはマルクやテオで分かるだろう?ただ、最近の落ち着きから考えると動きがあってもおかしくない。」

「注意が必要だな。」

「ヴィレス国の人間の中に番人がいる可能性も出てきたな…」


「ノアもテオも創造主や番人は判断出来ないんだょね?」


 ランベールの言葉に頷く。



「逆に何も分からないからこそ、怪しいとも?」

「テオの言うことも一理あるね。」


方針は決まった。
ヴィレス国の面々との会合にテオドールを連れて行く。
精霊王たちには護衛も兼ねて分散してもらう。


「ここにいるとクロエ様に会う可能性もあるからね?」

「1人蚊帳の外よりマシさ。覚悟はしてる。」



 ひとまず解散となって、ソフィアはランベールと共に魔物発生の場所に向かう。
 イソール達に癒しをかけてもらうためだ。


「ソフィー、魔力ちょうだいね。」
「やるゎよー。元気いっぱい。」
「心地よいのー、其方の魔力は。」

イソールが荒れた木々を癒し、ヴォルグがボコボコの地面を整え、ユーティリアが全体を総合的にキレイにしていく。
 折れたり倒れたりした木々は元に戻り、大地は滑らかに、シャワーのように水の膜が森に広がり元通りの姿に戻っていく。


(いつ見ても爽快だなぁ、精霊王たちの魔法は。その根源がフィー1人ってのも、想像出来ないよな…)


目の当たりにしている光景にランベールは感嘆していた。ソフィアの元に精霊王たちが戻り、任務終了。


「明日も早いですし、戻りましょうか。」


ランベールに笑顔で問いかけ、2人で仲良く戻る。
そんな後ろ姿を見ている人影が…

ガサッ。

森の中からこっそり出てきた彼は、全てを目撃していた。なかなか見られない大規模な魔法。
その魔法が彼女から発されていること。


(これは報告しなければ)
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