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【裏】ヒーローside
ヒーローside3
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ミリーが階段から落下してから、二ヶ月が経った。
ミリーの手首は複雑骨折、という酷い状態だったが、治癒師が完璧に治してくれた。そのお陰で、ミリーはいつも通りの日常を送れている。
俺はあのあとすぐにミリーを王城の俺の隣の部屋へと住まわせた。反対なんか誰にもさせなかった。
それだけの下準備をしてきたし、結婚と同時に公爵の爵位に降下するという約束のもと、父上と王妃を味方につけてきた。
何せ、側室の子の俺がいつまでも王城にいたんじゃ反対分子になり得る。兄上を王にしたい二人からすれば、力のない子爵家の令嬢を嫁にもらうことは喜ばしいことだったようだ。
それなら、最初から爵位の低い婚約者を用意すれば良いと思うかもしれないが、それは世間体が許してくれない。
だから、俺自らが恋に溺れて降下する道を選んだことを表情には出さないものの、応援してくれた。リーチェの希望で国外追放の体をとり、想いを寄せ合っている騎士と国外で暮らせる手はずも黙認してくれた。
流石に鉄格子をつけたりとミリーを閉じ込めていたことには引いていたみたいだが。
それなのに、閉じ込められた当人はいつもにこにこしていた。理由を聞けば「ずっと一緒にいられて嬉しい……」だなんて可愛すぎる。
残念ながらキス止まりで全く手は出せていないが、それも結婚するまでの話。ゴールが見えている今、焦ることはない。
「結婚したら我慢しないから……」
と思わず伝え、軽く首を噛んで痕をつけしまった時はマズイ! と冷や汗をかいたが、ミリーはそれも許してくれた。
いつもミリーが隣にいる二ヶ月はあっという間で本当に幸せだった。
そして、今日は断罪の日。
この日のために作っておいたドレスは本当にミリーに似合っていて、誰にも見せたくない。今すぐ、部屋に閉じ込めてしまいたい。
だが、今日はミリーと結ばれる最後の布石であり、親友のリーチェを自由にする日でもある。己の欲望で台無しにするわけにはいかない。
「ねぇ、レン様。レン様って、私のストーカーでしたよね?」
可愛いミリーに、まるで日常会話をするかのように言われ、一瞬何を言われているのか分からなかった。
何時バレたのか。なぜ、ミリーは微笑んでるのか。もしかしたら、別れを告げられるのではないか……。
何かを返さなければいけないと思えば思うほど、どうしたら良いのか分からなくなる。
「そのくらい、私のことが好きってことですよね?」
その言葉に驚きと嬉しさと欲情が入り交じる。もしかしたら、ミリーは全てに気がついた上で俺を愛してくれているのではないか……、そんな期待を頭を占めた。
「好きなんかじゃ足りない。どうしたら良いのか分からないほど、焦がれてしまうんだ。俺だけを見て欲しい。ミリーを誰にも見せたくない。閉じ込めてしまいたい……」
好きで、好きで、好き過ぎて辛い気持ちを吐き出せば、ミリーは本当に嬉しそうに笑った。
「いつもレン様だけを見ているわ。でもね、閉じ込めないで。そうしたら、レン様と色々なものを見に行けないもの。レン様の隣にいられないもの」
「あぁ、ミリー! 絶対に離さないからな……」
力強く抱き締めれば、ミリーは俺の背中に手を回す。そんなミリーに、絶対に離さないと心のなかで誓う。この幸せを永遠にしてみせる、という決意とともに。
さぁ、作りあげた物語のエンドへと向かおう。
それぞれが幸せになれる最高のエンドへ──。
ヒーローside END
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