24 / 50

23話 神様の力



 おばあちゃんの後をついて行きながら、店内を見回す。

 飾りボタンやレース、ガラスビーズなど、西洋っぽいデザインのものもたくさん売られている。まるでこのお店自体が宝箱の中みたいでわくわくする。

 これは絶対に何を買おうか迷うやつだ。折角だから、他にも色々と作って効果があるのか、あったとしたら違いがあるのかを試しておきたいけど、目に映る布もレースも魅力的過ぎる。決められるかな……。
 でも、その迷ってる時間が幸せなんだよなぁ。気が付いたら時間が溶けてなくなってるという摩訶不思議現象に出会うことになっちゃいそう。
 白樹もいるから、夢中になりすぎないように気を付けないと……。 


「ほら、ついたよ。あたしゃ戻るから、ゆっくり見な」 
「店主、感謝する」 
「そう思うなら、たんと買っとくれ。あんたが来るのは、うんと久しぶりだろ」 

 そう言って、返事も待たずにおばあちゃんは行ってしまった。 

「……気付いていたのか」 
おさだってことに?」 

 私の問いに白樹は首を横に振ると、少し懐かしむような表情で口を開いた。 

「髪色と瞳を変えれば印象は大きく変わるから、そうは気付かれない。加えて、印象が変わるよう操作もしている」 
「そんなこともできるの!?」 
「あぁ。だから、店が出来たばかりの頃に一度だけ来たことを言っているのだろう。それも五十年以上は前だろうな。以前来た時は、店主も若かった」 

 そんなに昔のことなのに、気がつくの!?  っていうか、昔と変わらない姿だったら、白樹の子どもだと思うんじゃ……。 
 一体、おばあちゃんの目に白樹はどう映っているのだろう。 

「契約かな?」 
「いや、契約を使った様子はなかった」
 
「契約を使ったとかって、自分以外の人にも分かるの?」
「分かる。俺は風鈴の音が、花は金木犀の香りがするだろ?」 

 なるほど、と思う。確かに白樹が契約を使うときは風鈴の音が鳴っていた。 

「……ということは、浄化の力も契約なの?」 
「いや、浄化の力は神からの授かり物だ」 

「契約と授かり物の違いって何?」 

 いつまでも話ばかりしているわけにはいかないので、商品棚の絹糸を眺めがら白樹へと聞く。
 糸は、単色からグラデーションになっているものまであり、種類が豊富だ。どれにしようか、どの糸も編んでみたくて迷ってしまう。 

「契約は対価を支払って手に入れるが、授かる力は神だけが与えることのできるものだ」
「契約は何でもできるんでしょ?」 

 白樹が言っていたはずだ。そう思って聞いたのだが、言葉を探しているのだろうか、なかなか返事がない。 

「俺も選んでいいか?」 
「え? あ、うん。もちろんだけど……」 
「感謝する」 

 白樹は、白い絹糸を商品棚の引き出しから取り出すとかごに入れた。 

「この色は白龍様の色だ。白は浄化の意味を持つことは花も知ってたな?」 

 その問いに頷く。白樹の組紐を編む時も、意味合いを意識して作った。 

「契約は何でもできると説明したが、正確にはほぼ・・何でもだ」 
「ほぼ?」 
「白龍様のお力は浄化、無力化、治癒、結界など守りや癒しに特化している。その中から花嫁に力を与えてくださる。それが契約ではできない、神からしか与えられない力だ」 
「神様だけが持ってる力……」 

「その中でも浄化は特別だ。無力化や結界は穢れを退けられるが、倒すことはできない。治癒は怪我を治せるが、穢れを倒すことも退けることもできない。浄化だけが穢れを消滅させられる」 

 花嫁が特別だという意味が、本当の意味でやっと分かった気がする。 
 浄化の花嫁だと白樹が慌てて四ヵ国会議をしようとした意味も。 

「他の神様はどんな力を与えてくれるの?」 
「他国のことはあまり詳しくはないが、西の紅虎こうこ様は主に攻撃に関する内容が多い。炎を操ったり、攻撃力を増幅させたりと聞く」 

 そう言いながら、白樹は紅い絹糸を駕籠へと入れると、青い糸を手に取った。 

「北の青武せいぶ様は、予知やお告げなど未来の可能性を知る手段を与えてくれることが多い。南の黒鳥こくちょう様は、主に守備にけているそうだ。……だが、稀に穢れを操れる力を持つ花嫁も現れると聞く」 

 今度は黒い糸が駕籠へと入っていく。 

「穢れを操れるって……」
「ただの言い伝えだ。俺が見たわけではない。穢れを操った花嫁は、穢れに──」
「穢れに?」

 心臓の音が頭のなかで響いている。想像するだけで、怖い。悪用されたら、とんでもないことになってしまう。
感想 1

あなたにおすすめの小説

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。