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春暖【1話完結】
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4月末、季節は春だというのにまだ肌寒い。
「学校だる…」
小石を蹴飛ばしながらぶつぶつと呟く。
もちろん隣には誰もいない。
この通路は人通りも少ないから気に入っている。
桜もちらほら散っているし。
ぶつぶつと呟く私の耳には音楽が流れている。
数少ない友達からは「このバンド基本的に女々しいし重いね」と批判された曲だが私はこういうバンドが好みなので大変気に入っている。いわゆる「オキニ」というやつだ。
「あぁ、まだ私は高2なのか…」
ため息を吐き、イヤフォンを外す。私の通っている学科は少し特殊。だからこそ味気ないし、何より物足りない。もっと刺激が欲しい。一味唐辛子的な、そういうものが。
虚空から1枚の桜が降ってきた。
____________________
教室に着き、自分の座席に座る。
辺りは静寂としている。しかも、誰もいない。おかしい。普段なら嫌という程やかましいのに。
何故だろうと思い教室を見渡すと、黒板のところに貼られているカレンダーに目が止まった。
「今日……日曜日なのか」
私の顔はヒクヒクと痙攣し、落胆の色を隠せない。
最悪だ。せっかくの電車賃を無駄にしてしまった、せっかくの労力を無駄にしてしまった。最悪を通り越して極悪だ……。
「はぁ…さっさと家に帰ろう」
あぁ、今日が学校だと間違えてなければ今頃家でゲームしてたんだろうなあ。私の馬鹿。
教室を出ようとした瞬間、何かと衝突した。
「……痛!」
「え…?あぁ、ごめんね」
この人、声がうるさい。私の苦手なタイプだ。
同じクラスメイトの、うん。
誰だっけ名前。
「名前何?」
「なに、覚えてないの?!俺の名前」
「私人に興味ないから。ほら、とりあえず教えてよ」
「俺、名前ないよ」
「え?」
何言ってんだこの人。予想外の返答に、目を見開く。
昔、何かあったんだろうか。
「なんで……名前が無いの?」
「気になる?」
「まぁ、少しは」
「人に興味ないって言ったのに?」
「それは……」
「まぁいいや、俺親がいないの。俺が生まれてすぐに2人とも死んだってさ。だから名前付けられてないの。あっけないよね笑」
彼は笑顔を私に見せてくれたが、それは演技だとすぐに分かった。
「笑わなくていいのに」
「え?」
「いや、なんでもない」
というか、人とこんなに喋るの私らしくないな
「なんで美紅さんは人に興味がないの?」
彼からも質問がきた。
「なんでって…興味が無いから興味が無いの。」
「それ、理由になってる!?笑」
「うん、なってる。あ、だけど……」
「だけど?」
「名無しくんのことは興味あるかも」
悪戯で興味あるかもと言ってみたが、名無しくんは途端に顔を赤くする。
「何それ、てかそれ俺の名前?」
「何それって、興味あるかもって言ってるの。人に興味ないこの私が。そうよ、貴方の名前。どういうことか分かるよね?」
「た、多分…」
「多分じゃダメ、ちゃんと分かって」
「じゃあちゃんと、美紅さんがどういうことか教えてよ」
「それは嫌だ」
「我儘め」と彼は言い、私の頭をコツンと指で小突く。
「付き合って」
どちらが言った言葉なのかは、記憶が曖昧なので覚えていない。私たちの間を風が通る。虚空だった空はいつの間にか晴天になって、桜が満開になっていた。
「学校だる…」
小石を蹴飛ばしながらぶつぶつと呟く。
もちろん隣には誰もいない。
この通路は人通りも少ないから気に入っている。
桜もちらほら散っているし。
ぶつぶつと呟く私の耳には音楽が流れている。
数少ない友達からは「このバンド基本的に女々しいし重いね」と批判された曲だが私はこういうバンドが好みなので大変気に入っている。いわゆる「オキニ」というやつだ。
「あぁ、まだ私は高2なのか…」
ため息を吐き、イヤフォンを外す。私の通っている学科は少し特殊。だからこそ味気ないし、何より物足りない。もっと刺激が欲しい。一味唐辛子的な、そういうものが。
虚空から1枚の桜が降ってきた。
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教室に着き、自分の座席に座る。
辺りは静寂としている。しかも、誰もいない。おかしい。普段なら嫌という程やかましいのに。
何故だろうと思い教室を見渡すと、黒板のところに貼られているカレンダーに目が止まった。
「今日……日曜日なのか」
私の顔はヒクヒクと痙攣し、落胆の色を隠せない。
最悪だ。せっかくの電車賃を無駄にしてしまった、せっかくの労力を無駄にしてしまった。最悪を通り越して極悪だ……。
「はぁ…さっさと家に帰ろう」
あぁ、今日が学校だと間違えてなければ今頃家でゲームしてたんだろうなあ。私の馬鹿。
教室を出ようとした瞬間、何かと衝突した。
「……痛!」
「え…?あぁ、ごめんね」
この人、声がうるさい。私の苦手なタイプだ。
同じクラスメイトの、うん。
誰だっけ名前。
「名前何?」
「なに、覚えてないの?!俺の名前」
「私人に興味ないから。ほら、とりあえず教えてよ」
「俺、名前ないよ」
「え?」
何言ってんだこの人。予想外の返答に、目を見開く。
昔、何かあったんだろうか。
「なんで……名前が無いの?」
「気になる?」
「まぁ、少しは」
「人に興味ないって言ったのに?」
「それは……」
「まぁいいや、俺親がいないの。俺が生まれてすぐに2人とも死んだってさ。だから名前付けられてないの。あっけないよね笑」
彼は笑顔を私に見せてくれたが、それは演技だとすぐに分かった。
「笑わなくていいのに」
「え?」
「いや、なんでもない」
というか、人とこんなに喋るの私らしくないな
「なんで美紅さんは人に興味がないの?」
彼からも質問がきた。
「なんでって…興味が無いから興味が無いの。」
「それ、理由になってる!?笑」
「うん、なってる。あ、だけど……」
「だけど?」
「名無しくんのことは興味あるかも」
悪戯で興味あるかもと言ってみたが、名無しくんは途端に顔を赤くする。
「何それ、てかそれ俺の名前?」
「何それって、興味あるかもって言ってるの。人に興味ないこの私が。そうよ、貴方の名前。どういうことか分かるよね?」
「た、多分…」
「多分じゃダメ、ちゃんと分かって」
「じゃあちゃんと、美紅さんがどういうことか教えてよ」
「それは嫌だ」
「我儘め」と彼は言い、私の頭をコツンと指で小突く。
「付き合って」
どちらが言った言葉なのかは、記憶が曖昧なので覚えていない。私たちの間を風が通る。虚空だった空はいつの間にか晴天になって、桜が満開になっていた。
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