番なんて要らない

桜 晴樹

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気になるあいつ

気になるあいつ。でも嫌い28

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「どうしたんだよ?なんか、たくと、こわいよ‥。」

何時もなら、怯える俺に対して、優しくしてくれる。
だから、今回も怒りを治めてくれると思ったんだ。

「どうして?」

その唇は、皮肉げに口角を上げ、瞳は寂しさを訴えている様に濡れている。その寂しさとやるせ無さを表情に乗せる拓人に、申し訳なさが襲う。

「ねえ、どうしてだと思う?」

手が、俺の顔に触れる。それは、何時もの優しさが感じられなくて、いつも見たいな温もりが感じられ無い。

「あおい‥。」

拓人の瞳から、一雫、涙が零れ落ちた。

「‥拓人‥。」

ここまで、追い込んだのは、初めてかもしれない。いや、出会った頃にも似た様な事はあった。けれども、あの頃と今では思いの丈も違う。
拓人は、何時も自身の想いを、抑え込んで一緒にいてくれた。それも、俺の最近の行動で、拓人を凄く傷付けたんだ。
傷付けたい訳ではない。ただ俺自身でも最近の拓人に対する想いに翻弄されていたのだ。だからまだ待ってもらいたい気持ちが強かった。でも、拓人をここまで傷付けていたなんて。俺の心臓辺りが、きゅうっと痛み出した。
拓人が俺を抱き締めようとする。俺は、思わず反射的に身体が逃げていた。

「そんなに俺に触られたくない?」

違うそうじゃない。と、言おうとして、拓人の方を見た。そこには、俺の知らない表情をしている男の顔があった。

「‥本当は、こんな事したくはなかったんだけど‥。」

そういった拓人は、俺を壁際に追い込む。
怖い。反射的になのか、俺は恐怖に打ち震えた。
壁に追い込まれた俺を、囲う様に壁に手を突いて、逆らえない様に顎に手を添え、上を向かせる。所謂、壁ドンというやつだ。

「もう鬼ごっこは終わりにしよう?」

そう、耳元で囁いた拓人は、薄らと微笑んだ。
俺の中の得体の知れない恐怖が更に増す。

「どうして俺から逃げる?」

分かっているだろうに、敢えて俺から言わせようとしているのか、それとも‥。
逃げられない様に、囲われている俺は絶対絶命の窮地に立たされた。

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