壬生の狼〜散りゆく人の運命

桜 晴樹

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1人の隊士が散った。
刀で袈裟斬りに斬られた背中は痛々しく、夥しい血が辺りに血溜まりとなり、地面に吸い込まれていく。
まだ少年といえる年齢の隊士は呻き苦しみながらこの世を去った。
それは、とても短い命だった。
その少年隊士は、後世に名も残る事がない隊士だった。
それは、隊士が入隊し間も無く戦いに身を投じ、名を記す前であった。

少年が生きた時代は、ちょうど国が大きく動き変わる節目だった。
新政府軍と幕府軍の争いの最中、新撰組は幕府から甲陽鎮撫を命じられ、名を改め甲陽鎮撫隊になったその頃に、隊士をもっと集め、大きくなっていった。
そうして少年は、甲陽鎮撫隊に入隊した。
この頃の歴史とは、皮肉な者で大きなうねりの中に歴史に残る世の乱れ動乱の世だ。それは止められない歴史の流れだった。
少年が現れたのは、そんな激動に呑まれる頃の事だった。
彼は齢14になったばかりの若者だった。
剣術なんて遊び程度にしかやった事がない。度胸だけでいつ死ぬかもわからない隊の門を叩いた。
彼にはやらねばならない事があった。
幼少期に、武家だった父が辻斬りに会い、家が没落し病気になった母がつい先月他界した。
孤児になった彼は、身を寄せる所がない。幸いにして、彼の年齢ならば何処へでも行けた。
どうせならばと、家の再興と父の仇を取れる所といえば、新撰組しかなかった。
新撰組が名を改めてからではあったが、甲陽鎮撫隊に入った。
彼の特質すべき点は特に無い。
唯彼は運が無かった。
そして戦と死を漠然としか考えてなかった。
彼は死に際に何を思ったのか。






~散りゆく人の運命~










慶応4年1868年
新政府軍と旧幕府軍の争いの最中。
その年、新撰組が旧幕府軍から甲州鎮撫を命ぜられた。
まさに
その頃、少年は新撰組屯所に向かっていた。
少年の名は、小太郎という。
新撰組は途中に名を変えたが、小太郎にとっては名よりも武勲が欲しかった。
何も出来なくても、そのうちに腕も上がるだろうと思っていた。

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