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小太郎が生を受けたのは1854年安政元年だった。
その頃、年号が変わる前の嘉永7年に日米和親条約が締結した年だ。
年号が嘉永から安政に変わってから、江戸で小太郎が生まれた。
その頃の江戸後期は、慌ただしく変わっていく時代の中で、武士の家の子供は、大人達が交わす物騒な世の中の心配事も、子供なりに案じてはいたが、何処か他人事で自分達の身の上に降り掛かるなんて思わなかった。
1864年元治元年、世間は新撰組の池田屋事件、蛤御門の変、度重なる事件の最中に小太郎は10歳の頃、父が過激派の志士達の手により討たれた。
それを教えてくたのは、その場で難を逃れた父の仕事仲間であり同志だった。
難を逃れた同志を助けたのは、偶々江戸に隊士募集の為に来ていた新撰組だった。
あくる日、仕事仲間から訃報を聞いた母は倒れた。そのまま寝たきりになり、住んでいた家も追い出され、狭い長屋住まいになった。
父の親族と母は折り合いが悪く、そして、母の親も亡くなったばかりで、母の味方はいなかった。だから、寝たきりになった母を助ける様な親族は1人もいない。
(‥父上‥。父上‥。)
辛い時に、父を思い出す小太郎に手を差し伸べる者はいない。
(私が、父上の仇を討ちます。だから、父上見ていてください。)
そんな小太郎を病床に臥せっている母は心配していた。
いつか、子供が何処か遠くへ消えてしまうのではないか。自身の病が治ればどうにか子の哀しみを癒せる筈なのに、自身の不甲斐なさで泣きたくなる。
だから、布団の中で何時も子に言い聞かせた。
「小太郎や、仇討ちなど考えるでないぞ。」
「母上、何を仰いますか。此れは父の名誉の為ですぞ。私は剣の稽古をして立派な侍になり、父上を斬った男を見つけて成敗しますぞ!」
息を巻いて話す小太郎に、でも、と母は心配そうにする。
「母上、今はこんな長屋住まいですが、私が新撰組に入れる様になり、俸禄がもらえる様になれば、少しは良い暮らしもできましょう!そして、父上の仇を討ち、断罪するべき悪を全て懲らしめるのです!」
小太郎が決意に満ちた瞳で熱く語る。それを母が静かに静止をかける。
「仇討ち等しても良い事等なりませぬ。静かに暮らすべきなのです。」
「如何してですか!それでは哀しみだけを背負って行けというのですか!?」
嫌々と駄々をこねる様に胸の内から叫ぶ。父を殺された。それは子供心に深く傷を負い闇が出来る。その闇が膿の様になり、心に広がりを見せる。その闇はいつか自身をも傷付けるであろう。きっといつか後悔する。それを小太郎自身も分かってはいた。母の心配も分かっている。それでも何もしないのも許せない。だから、小太郎は決意した。自分と同じ目に合う者を、少しでも減らす為にも悪を斬る。その決意は固いものになっていた。
その頃、年号が変わる前の嘉永7年に日米和親条約が締結した年だ。
年号が嘉永から安政に変わってから、江戸で小太郎が生まれた。
その頃の江戸後期は、慌ただしく変わっていく時代の中で、武士の家の子供は、大人達が交わす物騒な世の中の心配事も、子供なりに案じてはいたが、何処か他人事で自分達の身の上に降り掛かるなんて思わなかった。
1864年元治元年、世間は新撰組の池田屋事件、蛤御門の変、度重なる事件の最中に小太郎は10歳の頃、父が過激派の志士達の手により討たれた。
それを教えてくたのは、その場で難を逃れた父の仕事仲間であり同志だった。
難を逃れた同志を助けたのは、偶々江戸に隊士募集の為に来ていた新撰組だった。
あくる日、仕事仲間から訃報を聞いた母は倒れた。そのまま寝たきりになり、住んでいた家も追い出され、狭い長屋住まいになった。
父の親族と母は折り合いが悪く、そして、母の親も亡くなったばかりで、母の味方はいなかった。だから、寝たきりになった母を助ける様な親族は1人もいない。
(‥父上‥。父上‥。)
辛い時に、父を思い出す小太郎に手を差し伸べる者はいない。
(私が、父上の仇を討ちます。だから、父上見ていてください。)
そんな小太郎を病床に臥せっている母は心配していた。
いつか、子供が何処か遠くへ消えてしまうのではないか。自身の病が治ればどうにか子の哀しみを癒せる筈なのに、自身の不甲斐なさで泣きたくなる。
だから、布団の中で何時も子に言い聞かせた。
「小太郎や、仇討ちなど考えるでないぞ。」
「母上、何を仰いますか。此れは父の名誉の為ですぞ。私は剣の稽古をして立派な侍になり、父上を斬った男を見つけて成敗しますぞ!」
息を巻いて話す小太郎に、でも、と母は心配そうにする。
「母上、今はこんな長屋住まいですが、私が新撰組に入れる様になり、俸禄がもらえる様になれば、少しは良い暮らしもできましょう!そして、父上の仇を討ち、断罪するべき悪を全て懲らしめるのです!」
小太郎が決意に満ちた瞳で熱く語る。それを母が静かに静止をかける。
「仇討ち等しても良い事等なりませぬ。静かに暮らすべきなのです。」
「如何してですか!それでは哀しみだけを背負って行けというのですか!?」
嫌々と駄々をこねる様に胸の内から叫ぶ。父を殺された。それは子供心に深く傷を負い闇が出来る。その闇が膿の様になり、心に広がりを見せる。その闇はいつか自身をも傷付けるであろう。きっといつか後悔する。それを小太郎自身も分かってはいた。母の心配も分かっている。それでも何もしないのも許せない。だから、小太郎は決意した。自分と同じ目に合う者を、少しでも減らす為にも悪を斬る。その決意は固いものになっていた。
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