邪神の使徒

12

黒い壁を怪しんで、相手は距離を取っていた。
そのお陰で、敵との間に罠を張ることができた。
その罠に敵がかかり、一人死ぬ。
「いつでも発動出来るようにしておけ」
「ええ、大丈夫よ」
敵はこれまでの行動からか慎重に動いている。
その間に罠の種類を増やす。
近くに人が来たら発動するもの、一定時間後に発動するもの、少数の任意で発動するもの。
それらは更なるプレッシャーとなったみたいだ。
話し合い始めたところに罠で水を差す。
それでも少しは話せたようで、これまで以上の連携で襲いかかられた。
敵が一人死ぬ間に距離を詰められる。
これが繰り返され、直接攻撃は当たらないものの余波は届くようになった。
背後に敵がいないことを利用して、後退しながら戦ってきたがもう間合いがない。
セクタがどうなったか分からない。
勝っているのなら良いが、殺されていたら更に敵が増える。
もう猶予はない。
一旦エルザのことはおいといて、更に広い範囲、密度で罠を張る。
次々に張られていく罠を見て、スピードがもっと落ちる。
「エルザ、まだ大丈夫か」
「今のところはね。回復しておくわ」
そう言われると、液体をかけられた。
そのお陰で、細やかな傷と体力が戻り、まだ戦える気がした。
後ろに引きながら攻撃をする俺ら、それを追う敵、こちらは回復し、敵は死んでいく。
次第にこちらが有利になる状況は続かなかった。
多分セクタが殺された。
ただ敵から逃げていただけなので、どのように逃げたか分からない。
そしてセクタに向けられてただろう敵が加勢に来た。
罠のない、それまで向き合っていた敵の反対から。
とっさに張れた罠は三つ。
それが張り終わる前に、早い敵は一番近い罠を越えた。
更に罠を張っていく。
対処できたのは、三人目までだった。
後方からも罠を回避した敵、前方にももちろん敵。
ザシュｯ
エルザは刺された。