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10月16日(放課後)
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幼馴染の亜紀はどさくさに紛れて相合傘してくる
今日からB組との朝練とお昼は亜紀と悠木涼も含めた4人で食べる事になった。凪沙と悠木涼。最近2人は急激に仲良くなった気がする。目の前で凪沙が悠木涼にお弁当のおかずをあーんして食べさせてあげたりして、あたし達がいる事忘れてるんじゃないだろうか…
あたし達だけじゃない。
教室じゃ目立つと思って屋上にしたけど、屋上にも他に生徒がいるんだけどな。
悠木涼も凪沙もモテる2人だ。そんな2人が仲良くお昼食べていたらあっという間に注目の的。噂が広がって大変なことにならないといいけど…
特に凪沙だ。
噂では凪沙にはファンクラブがあるらしい。実際にどういう活動をしていてどんな人物がいるのかは知らないし、噂の域を抜けないけど凪沙自身に何かされたりだとかはないから追求もしていない。何かあったらあたしが黙っちゃいないけど…
悠木涼も最近やたらと凪沙に構っている。もしかして、悠木涼は凪沙のことが好きなんだろうか…悠木涼はボーイッシュな見た目でバスケ部に所属している為か女子からの人気もある。元々人懐っこい性格をしているから、知り合ったばかりの凪沙が気になっているだけなのかもしれない。
昇降口で靴を履き替え空を見上げる。いつの間にか空は暗く冷たい雨が降ってきていた。今は少し肌寒く感じる。
2人は付き合ってないって言っていたけど、あの2人結構お似合いなのではないだろうか…
女の子同士で付き合っているという話はたまに聞く。幸せならそれで良いと思うし、普通に祝福もするだろう。あたしは…まだ誰も好きになったことはないから…相談とかされても良い回答ができないかもしれないけど、話を聞くくらいはしてあげなくもない。――ちょっと気になるし……
あたしはカバンから折り畳み傘を取り出そうとカバンの中を探った。
視界が少し暗くなった。見上げると亜紀が傘を広げて目の前に立っていた。
「ちさき?なんだかぼーっとしてるね」
「そう?」
「だって、ずっと喋らないし」
「ちょっと考え事してただけだよ」
「涼さんと凪沙さんの事?」
「え?」
「お昼終わったくらいからぼーっとしてる気がする」
「亜紀にはバレバレか」
これだから幼馴染は侮れない。
「もしかして涼さんの事好きなの?」
「全然違うわ!!!」
侮れなくなかったわ!どこをどう進めばそんな考えに行き着くんだ。あたしは悠木涼と仲良くなんてしてないだろうに…
「はぁ、違う違う。凪沙と悠木涼って意外とお似合いなのかもしれないって思っただけ。最近知り合ったばかりのはずなのにあんなに仲良くなっててさ」
「凪沙さんも涼さんも良い人だから私は2人が仲良くなってくれて嬉しいけど…」
「けど?」
「お昼の本の感想話すのも楽しかったから、少し寂しいかも」
「あー亜紀の読書感想会に付き合ってやれるのあいつだけだったか…」
一年の時、同じクラスだった亜紀と悠木涼は図書委員でその頃からお昼は他の図書委員と一緒に食べていて、亜紀と本の感想を語り合う唯一の読書仲間って感じだった。それが今日からは悠木涼の提案で4人で食べることになり、本の感想を話すような時間がなくなってしまった。お昼は悠木涼が凪沙にベッタリだったな…
「東雲!!!」
下駄箱の方を振り向くと上下ジャージ姿の悠木涼が走ってこちらに向かってきていた。
「良かった。まだ学校にいたんだ」
「どうしたの?」
亜紀が悠木涼に振り向いて小首を傾げる。可愛らしい仕草だ。
手に持っていた文庫本を差し出し「これ。お昼に返そうって思ってたんだけど忘れてて…」
「返すのいつでも良かったのに…」
「東雲がオススメする本ってどれも面白いね。またお薦めの本貸してよ。あ、この本の感想はまた今度でいい?これから部活なんだ」
「うん」
高坂と東雲も気をつけて帰れよと笑って言ってさっさと部活に向かってしまった。
「あいつやっぱいい奴だな」
「だよね」
ああいう気遣いやら笑顔やらで色んな女の子を落として泣かせてきたんだろう。いい奴なんだろうけど凪沙を泣かすようなことになったらあたしがしばいてやる。
「帰ろちさき」
「あ、ちょっと待ってまだ傘……」
亜紀があたしの手を握って引く
「一緒に入って行けばいいよ」
「いや、傘あるんだって」
「傘が濡れる」
「傘は濡れるためにあるんだけど!?」
グイグイと手を引っ張られて亜紀が持っている少し大きめの傘に入る。
「もう少しこっち寄って肩濡れる」
「はいはい」
肩が触れ合う距離。握られる手。亜紀を見ると少し頬が染まっている。
「手繋いで傘持ってるの大変じゃない?」
そう思って手を離そうとするけど、ギュッと握られて離してはくれなかった。
「た、大変じゃないから」
「じゃあ、あたしが傘刺そうか?」
「ちさきの方が背が小さいんだから私がさす。それに手繋いでたら状況は一緒だよ」
「確かに…ってあたし亜紀と5センチしか違わないからね!?」
駅までの道のりを一つの傘の中で手を繋いで2人で一緒に歩く。今日はもう雨は止まないかもしれない。こうして一緒の傘に入って帰るのはいつぶりだろうか…中学生の頃はあった気がする。小学生の頃もあったような…でも、こうして手を繋いで帰るのはなかったと思う。あたしより大きい手は包み込むように握られていて雨で少し濡れていた。
「誰かに見られたらどうするんだよ」
「気にしなければいいよ」
絶対誰かには見られてるだろう。学校から駅までの道のりなんて生徒が大勢歩いてるわけで…
傘で顔が隠れてればいいな、なんて思いながら駅まで手を繋いで帰った。
今日からB組との朝練とお昼は亜紀と悠木涼も含めた4人で食べる事になった。凪沙と悠木涼。最近2人は急激に仲良くなった気がする。目の前で凪沙が悠木涼にお弁当のおかずをあーんして食べさせてあげたりして、あたし達がいる事忘れてるんじゃないだろうか…
あたし達だけじゃない。
教室じゃ目立つと思って屋上にしたけど、屋上にも他に生徒がいるんだけどな。
悠木涼も凪沙もモテる2人だ。そんな2人が仲良くお昼食べていたらあっという間に注目の的。噂が広がって大変なことにならないといいけど…
特に凪沙だ。
噂では凪沙にはファンクラブがあるらしい。実際にどういう活動をしていてどんな人物がいるのかは知らないし、噂の域を抜けないけど凪沙自身に何かされたりだとかはないから追求もしていない。何かあったらあたしが黙っちゃいないけど…
悠木涼も最近やたらと凪沙に構っている。もしかして、悠木涼は凪沙のことが好きなんだろうか…悠木涼はボーイッシュな見た目でバスケ部に所属している為か女子からの人気もある。元々人懐っこい性格をしているから、知り合ったばかりの凪沙が気になっているだけなのかもしれない。
昇降口で靴を履き替え空を見上げる。いつの間にか空は暗く冷たい雨が降ってきていた。今は少し肌寒く感じる。
2人は付き合ってないって言っていたけど、あの2人結構お似合いなのではないだろうか…
女の子同士で付き合っているという話はたまに聞く。幸せならそれで良いと思うし、普通に祝福もするだろう。あたしは…まだ誰も好きになったことはないから…相談とかされても良い回答ができないかもしれないけど、話を聞くくらいはしてあげなくもない。――ちょっと気になるし……
あたしはカバンから折り畳み傘を取り出そうとカバンの中を探った。
視界が少し暗くなった。見上げると亜紀が傘を広げて目の前に立っていた。
「ちさき?なんだかぼーっとしてるね」
「そう?」
「だって、ずっと喋らないし」
「ちょっと考え事してただけだよ」
「涼さんと凪沙さんの事?」
「え?」
「お昼終わったくらいからぼーっとしてる気がする」
「亜紀にはバレバレか」
これだから幼馴染は侮れない。
「もしかして涼さんの事好きなの?」
「全然違うわ!!!」
侮れなくなかったわ!どこをどう進めばそんな考えに行き着くんだ。あたしは悠木涼と仲良くなんてしてないだろうに…
「はぁ、違う違う。凪沙と悠木涼って意外とお似合いなのかもしれないって思っただけ。最近知り合ったばかりのはずなのにあんなに仲良くなっててさ」
「凪沙さんも涼さんも良い人だから私は2人が仲良くなってくれて嬉しいけど…」
「けど?」
「お昼の本の感想話すのも楽しかったから、少し寂しいかも」
「あー亜紀の読書感想会に付き合ってやれるのあいつだけだったか…」
一年の時、同じクラスだった亜紀と悠木涼は図書委員でその頃からお昼は他の図書委員と一緒に食べていて、亜紀と本の感想を語り合う唯一の読書仲間って感じだった。それが今日からは悠木涼の提案で4人で食べることになり、本の感想を話すような時間がなくなってしまった。お昼は悠木涼が凪沙にベッタリだったな…
「東雲!!!」
下駄箱の方を振り向くと上下ジャージ姿の悠木涼が走ってこちらに向かってきていた。
「良かった。まだ学校にいたんだ」
「どうしたの?」
亜紀が悠木涼に振り向いて小首を傾げる。可愛らしい仕草だ。
手に持っていた文庫本を差し出し「これ。お昼に返そうって思ってたんだけど忘れてて…」
「返すのいつでも良かったのに…」
「東雲がオススメする本ってどれも面白いね。またお薦めの本貸してよ。あ、この本の感想はまた今度でいい?これから部活なんだ」
「うん」
高坂と東雲も気をつけて帰れよと笑って言ってさっさと部活に向かってしまった。
「あいつやっぱいい奴だな」
「だよね」
ああいう気遣いやら笑顔やらで色んな女の子を落として泣かせてきたんだろう。いい奴なんだろうけど凪沙を泣かすようなことになったらあたしがしばいてやる。
「帰ろちさき」
「あ、ちょっと待ってまだ傘……」
亜紀があたしの手を握って引く
「一緒に入って行けばいいよ」
「いや、傘あるんだって」
「傘が濡れる」
「傘は濡れるためにあるんだけど!?」
グイグイと手を引っ張られて亜紀が持っている少し大きめの傘に入る。
「もう少しこっち寄って肩濡れる」
「はいはい」
肩が触れ合う距離。握られる手。亜紀を見ると少し頬が染まっている。
「手繋いで傘持ってるの大変じゃない?」
そう思って手を離そうとするけど、ギュッと握られて離してはくれなかった。
「た、大変じゃないから」
「じゃあ、あたしが傘刺そうか?」
「ちさきの方が背が小さいんだから私がさす。それに手繋いでたら状況は一緒だよ」
「確かに…ってあたし亜紀と5センチしか違わないからね!?」
駅までの道のりを一つの傘の中で手を繋いで2人で一緒に歩く。今日はもう雨は止まないかもしれない。こうして一緒の傘に入って帰るのはいつぶりだろうか…中学生の頃はあった気がする。小学生の頃もあったような…でも、こうして手を繋いで帰るのはなかったと思う。あたしより大きい手は包み込むように握られていて雨で少し濡れていた。
「誰かに見られたらどうするんだよ」
「気にしなければいいよ」
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