どさくさに紛れて触ってくる百合

シャクガン

文字の大きさ
8 / 20

10月16日(放課後)

しおりを挟む
幼馴染の亜紀はどさくさに紛れて相合傘してくる

今日からB組との朝練とお昼は亜紀と悠木涼も含めた4人で食べる事になった。凪沙と悠木涼。最近2人は急激に仲良くなった気がする。目の前で凪沙が悠木涼にお弁当のおかずをあーんして食べさせてあげたりして、あたし達がいる事忘れてるんじゃないだろうか…

あたし達だけじゃない。
教室じゃ目立つと思って屋上にしたけど、屋上にも他に生徒がいるんだけどな。

悠木涼も凪沙もモテる2人だ。そんな2人が仲良くお昼食べていたらあっという間に注目の的。噂が広がって大変なことにならないといいけど…

特に凪沙だ。

噂では凪沙にはファンクラブがあるらしい。実際にどういう活動をしていてどんな人物がいるのかは知らないし、噂の域を抜けないけど凪沙自身に何かされたりだとかはないから追求もしていない。何かあったらあたしが黙っちゃいないけど…

悠木涼も最近やたらと凪沙に構っている。もしかして、悠木涼は凪沙のことが好きなんだろうか…悠木涼はボーイッシュな見た目でバスケ部に所属している為か女子からの人気もある。元々人懐っこい性格をしているから、知り合ったばかりの凪沙が気になっているだけなのかもしれない。


昇降口で靴を履き替え空を見上げる。いつの間にか空は暗く冷たい雨が降ってきていた。今は少し肌寒く感じる。

2人は付き合ってないって言っていたけど、あの2人結構お似合いなのではないだろうか…

女の子同士で付き合っているという話はたまに聞く。幸せならそれで良いと思うし、普通に祝福もするだろう。あたしは…まだ誰も好きになったことはないから…相談とかされても良い回答ができないかもしれないけど、話を聞くくらいはしてあげなくもない。――ちょっと気になるし……

あたしはカバンから折り畳み傘を取り出そうとカバンの中を探った。
視界が少し暗くなった。見上げると亜紀が傘を広げて目の前に立っていた。

「ちさき?なんだかぼーっとしてるね」
「そう?」
「だって、ずっと喋らないし」
「ちょっと考え事してただけだよ」
「涼さんと凪沙さんの事?」
「え?」
「お昼終わったくらいからぼーっとしてる気がする」
「亜紀にはバレバレか」

これだから幼馴染は侮れない。

「もしかして涼さんの事好きなの?」
「全然違うわ!!!」

侮れなくなかったわ!どこをどう進めばそんな考えに行き着くんだ。あたしは悠木涼と仲良くなんてしてないだろうに…

「はぁ、違う違う。凪沙と悠木涼って意外とお似合いなのかもしれないって思っただけ。最近知り合ったばかりのはずなのにあんなに仲良くなっててさ」
「凪沙さんも涼さんも良い人だから私は2人が仲良くなってくれて嬉しいけど…」
「けど?」
「お昼の本の感想話すのも楽しかったから、少し寂しいかも」
「あー亜紀の読書感想会に付き合ってやれるのあいつだけだったか…」

一年の時、同じクラスだった亜紀と悠木涼は図書委員でその頃からお昼は他の図書委員と一緒に食べていて、亜紀と本の感想を語り合う唯一の読書仲間って感じだった。それが今日からは悠木涼の提案で4人で食べることになり、本の感想を話すような時間がなくなってしまった。お昼は悠木涼が凪沙にベッタリだったな…

「東雲!!!」

下駄箱の方を振り向くと上下ジャージ姿の悠木涼が走ってこちらに向かってきていた。

「良かった。まだ学校にいたんだ」
「どうしたの?」

亜紀が悠木涼に振り向いて小首を傾げる。可愛らしい仕草だ。

手に持っていた文庫本を差し出し「これ。お昼に返そうって思ってたんだけど忘れてて…」
「返すのいつでも良かったのに…」

「東雲がオススメする本ってどれも面白いね。またお薦めの本貸してよ。あ、この本の感想はまた今度でいい?これから部活なんだ」
「うん」

高坂と東雲も気をつけて帰れよと笑って言ってさっさと部活に向かってしまった。

「あいつやっぱいい奴だな」
「だよね」

ああいう気遣いやら笑顔やらで色んな女の子を落として泣かせてきたんだろう。いい奴なんだろうけど凪沙を泣かすようなことになったらあたしがしばいてやる。

「帰ろちさき」
「あ、ちょっと待ってまだ傘……」

亜紀があたしの手を握って引く

「一緒に入って行けばいいよ」
「いや、傘あるんだって」
「傘が濡れる」
「傘は濡れるためにあるんだけど!?」

グイグイと手を引っ張られて亜紀が持っている少し大きめの傘に入る。

「もう少しこっち寄って肩濡れる」
「はいはい」

肩が触れ合う距離。握られる手。亜紀を見ると少し頬が染まっている。

「手繋いで傘持ってるの大変じゃない?」

そう思って手を離そうとするけど、ギュッと握られて離してはくれなかった。

「た、大変じゃないから」
「じゃあ、あたしが傘刺そうか?」
「ちさきの方が背が小さいんだから私がさす。それに手繋いでたら状況は一緒だよ」
「確かに…ってあたし亜紀と5センチしか違わないからね!?」

駅までの道のりを一つの傘の中で手を繋いで2人で一緒に歩く。今日はもう雨は止まないかもしれない。こうして一緒の傘に入って帰るのはいつぶりだろうか…中学生の頃はあった気がする。小学生の頃もあったような…でも、こうして手を繋いで帰るのはなかったと思う。あたしより大きい手は包み込むように握られていて雨で少し濡れていた。

「誰かに見られたらどうするんだよ」
「気にしなければいいよ」

絶対誰かには見られてるだろう。学校から駅までの道のりなんて生徒が大勢歩いてるわけで…
傘で顔が隠れてればいいな、なんて思いながら駅まで手を繋いで帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

さくらと遥香

youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。 さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。 ◆あらすじ さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。 さくらは"さくちゃん"、 遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。 同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。 ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。 同期、仲間、戦友、コンビ。 2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。 そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。 イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。 配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。 さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。 2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。 遥香の力になりたいさくらは、 「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」 と申し出る。 そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて… ◆章構成と主な展開 ・46時間TV編[完結] (初キス、告白、両想い) ・付き合い始めた2人編[完結] (交際スタート、グループ内での距離感の変化) ・かっきー1st写真集編[完結] (少し大人なキス、肌と肌の触れ合い) ・お泊まり温泉旅行編[完結] (お風呂、もう少し大人な関係へ) ・かっきー2回目のセンター編[完結] (かっきーの誕生日お祝い) ・飛鳥さん卒コン編[完結] (大好きな先輩に2人の関係を伝える) ・さくら1st写真集編[完結] (お風呂で♡♡) ・Wセンター編[完結] (支え合う2人) ※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

処理中です...