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王の間

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王様に謁見するべく、執事の男について行く。

長く長く、続く廊下を歩いていく。 

この城、かなり広すぎない?
うちの家の100倍ほどは歩いてる気がするけど、まだ、王様の居るところに辿り着かない。

「王様の部屋まで、あと、どのくらい歩くのでしょうか?」

「もう少しですよ」

「そうですか」

此処で働く人達は、大変だろうな。
忘れ物をして、離れた場所に取りに戻る手間を考えると、自分だったらやりたくない。

長い廊下を渡った後、隣の塔への石橋を渡り、階段を降りると大きな扉の前に着いた。

「着きました。こちらに王様は居られます」

「なるほど…」

どんな王様だろうな、緊張してきた。

扉が開くと、赤いカーペットが道のように長く延び玉座の前まで続いていた。

うわぁ、ゲームにありがちな赤カーペットだ。
本当にあるんだ。

緊張しながら、赤カーペットを踏みしめていく。

今なら、RPGの勇者の気持ちがわかるよ。

王様の前に着くと、一礼を促されのたで、右手を左胸に当て、一礼した。

「初めまして、王様」

「よく来てくれた。拙は国王のロマーリオだ。戦士殿よ、顔を挙げるが良い」

顔を挙げ、王様の顔を拝んだ。

ロマンスグレーの髪を後ろに1つ結び、日焼けした肌、顔は壮年の映画俳優の様だ。

うわっ、うちのおばあちゃんの好きなタイプの顔。
そういう俳優が出演してたら、映画に誘ってくれて、おばあちゃんと映画に見に行ってたっけ。
ここにきて間もないのに、懐かしいな。
いやいや、懐かしむ場合ではないか、早く、なぜ私が召還されたのかを聞かなきゃ。

「あの、私は戦士として召還されたのですが、これから何をすれば良いのでしょうか?」

王様は穏やかに、笑みを浮かべて頷いた。

「自分の立場を正しく知ろうとする姿勢が良いな。賢者達から何も聞いていなかったのだな」

「はい」

「それでは、戦士殿に直接、私が願いを乞う。良いかな?」

「はい、王様」

「この世界は古来、度々の天災に悩まされてきてな。私の国を含む他国も合わせて、天災から国を守るために有能な戦士を探したが、なかなか見つからずにいた。それで、先代の王達が集まり相談し、この世界以外の力のある者を召還し、頼る事に決めた。それで召還されたのが七色の戦士だ」

「七色の戦士…」

「赤、青、緑、黄、紫、黒、茶。ちなみに私の国は赤だ。戦士殿の役目は天災からわが国を守る事だ。それをお頼みしたい」

「それが私の役目なんですね。わかりました」

出来る限りは頑張ってみよう。

「赤の戦士殿よ」

「あ、はい」

「拙らは、戦士殿とは呼びにくくてな。これからは赤と呼びたいのだが、いかがだろうか。それとも先ほどのお告げの名、アイリで良いかね?」

私の名字からにしても赤は違うから、違和感だな。
ましてやアイリって呼ばれるのも困るよ。
愛璃ちゃんって、友達にいるし。

「百々…でお願いしたいです」

「桃色か?なんと、殊勝な戦士殿だ。赤より控えめな色を選ぶとは。赤の名を持つことは威厳が高く、恐れ多くて、まだ赤では呼ばれたくないのだな。よし、わかった。これからはモモと呼ばせて頂こう」

赤が恐れ多くてなんて、勝手に勘違いしてるけど、まぁ、いいや。
百々は本名だし、やっぱり落ち着く。

「モモよ。これから宜しく頼んだぞ」

「はい」

とりあえず、天災はどういうものか王様に聞いてみてから、装備を整えよう。
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