アナグラムの勇者 ~異世界を書き換えるリライトスキル~

ぎゃもーい

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第二章 「神に愛されなかった者」

#23 出会い

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 影狼が俺たちを囲むと、じりじりと間を詰めてくる。

「……これって他の奴らのところにも出てるのか?」
「多分。ただ"本源"がここだから他の場所はそんなに多くないだろうけど」

 そんな会話の間、一匹の影狼がフィリーに向かい、飛び跳ねた。

「――っ」

 フィリーは持っていたタガーで数太刀浴びせながら、力で押し込むように影狼を引かせた。

「少なくともここにいていい存在じゃないね」

 ぐるぅぅという息遣いが徐々に大きくなる。

 俺にもまた、徐々に影狼が距離をつめてくる。
 俺はある程度の苦戦を想定しながら、意を決してこんぼうをかまえる。

 一匹の影狼が俺へと襲い掛かる。

 俺は対峙して、それを向かい打つ。
 そいつの脳天に向けて、こんぼうを振りかざした。

 響くのは、肉を打ち付ける音。
 それに遅れて伝わるその感触は、これまでの物と何も変わらない。

 ――スライム、河童ロブスター、ピンクスライムと同じように、それは変わらない。

 そしてまた。
 影狼はこれまでと同じように、影狼は一瞬で絶命した。

 ……。

 苦戦するとの予想を反し、それはほんの数分で決着した。

 俺の眼下に影狼の死骸が並ぶ。
 それは黒い光となったのち、空気中にとけるように消えていく。

「……やっぱり桁が違う、ね」

 俺の様子を苦笑いしながら見ていたフィリーは、
 倒した数体の影狼の死骸を飛び越えながらこちらへと来た。

「とりあえず、いったん入口付近に戻りましょ」
「そうだな」

 その提案に俺は頷き、俺たちは来た道を逆走する。

「……それとアキラ、ごめんね。それにありがと」

 振り向き様に放ったそのフィリーの言葉に、俺は小さく頷いた。


 * * * 


 来た道を帰る途中、クラードらとの集団と合流することができた。

「おお、お前らも無事だったか」
「そんな感じ。そっちはどう?」
「怪我した奴はいるが、思ったより被害は大きくないな」

 クラードたちの話を聞くに、やはり影狼はこちらにも発生したらしいが数がそこまででもなく、ツーマンセルやスリーマンセルのおかげで被害は最小限で済んだらしいとのことだ。
 ただクラードは納得いかなかったらしく、首をひねっていた。

「しかしどうして影狼が?」
「実は……」

 フィリーの話を聞くと、クラードはたいそう驚く。

「影リンリンゴが? いやでもなんでそいつがここにいる?」
「私もそれが分からないんだけど」

 クラード、フィリーはしばらく言葉を交わすが、納得する答えは出なかったらしくどちらも小さく首を振った。

「……もしかしたら魔王の使いか"お客さん"でも潜んでいるのかもな」

 意味深なその言葉を、
 クラードはため息交じりに吐いた。

「ただ全員そろったし、今日はいったん引き揚げよう。全員生きているのっていうのは、不幸中の幸いだ」

 その言葉に俺を含めた全員が同意した時、その言葉の一つに俺は妙に引っかかった。
 
 不幸中の幸い? 
 そういえば、俺は運をよくしたはずなのに全然運が良いところがないぞ?
 
 おかしいな……これって俺が悪いのか、いやそれとも他の要因があるのか?

「それでは引き上げる。まだ影狼が出没しているから、集団から離れないように」

 その言葉を受け、その場の全員がクラードに続いた。

 俺は先の疑問を抱えながら、辺りをちらりと見まわす。
 影狼はまだいることにはいるが、数は疎ら。それにもう襲ってくる気配はなさそうだ。

「アキラ、私たちも行こうか」
「ああ」

 と、なんともなしに声を上げた瞬間、それが見えた。

 ぽつりぽつりと影狼が点在する中。
 数体の影狼が群れている、その視界の一部分。

 何故か、そこにだけ影狼が集まっていた。

 いや、それはただ集まっているんではない。
 よく見れば、それは群れているのではなく、何かを囲んでいるようだった。

 何を?

 そして、その輪の隙間からわずかに見えたのは、白い何か。

「……あれって」

 胸騒ぎを覚えた俺はいてもたってもいられずそれに向けて、走り出した。

「……アキラ? って、どこにいくの!?」

 近づくにつれ、それは徐々に鮮明を帯びてくる。
 俺が先ほどまで見えていたのは足だ。それも小さな、まだ子供のような足。
 
 子供が、影狼に襲われている。
 疑問が事実に昇華された瞬間、俺の心臓は締め付けられ、喉がひどく乾く。

 一足でも早く着くために、俺は駆ける。
 その影狼たちの元へと辿り着くと、俺はこん棒を力任せに振るい、影狼数体を葬り去る。

「おい大丈夫か?」

 影狼が倒れ、俺の視界に入ってきたのは、年端もいかぬ少女。
 ただその少女は普通ではなかった。

「――え」
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