先生と私〜家庭教師✕生徒〜

真愛つむり

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きらめき

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「おい、ちょっと顔貸せ」

私が「先生の星になる」と宣言するより前の放課後。水泳部の練習の後、颯人先輩に呼び出された。

またいじめられるのではと危惧する同級生もいたが、最近は先輩の態度が軟化していたこともあって、大丈夫だと言ったら心配しつつも送り出してくれた。

2人きりになると先輩から切り出した。

「先生の様子が変だ」

単刀直入とはこのことか、と謎に感心してしまう私がいる。

「お前と何かあったのか?」

あったといえばあった。けど、どう説明したものか。

「これは聞いた話だが、先生はこの前の日曜日、どっかの美女とランチデートしてたらしい」

「えっ」

一瞬芽生えた嫉妬心。しかし、もうその資格はないことを思い出して必死に堪えた。

「俺らもうかうかしてられねぇな」

「えっと、私はもう……」

「なんだ、諦めたのか」

先輩の言葉がグサッと胸に刺さる。

「俺にとっては願ったり叶ったりだが、お前はそれでいいのか?」

「……」

いい……と言うべき。でも言えない。言いたくない。

私の沈黙を、先輩は肯定と受け取ったらしかった。

「あっそ。じゃあ先生の特別な星になるのは俺だな」

「星?」

「占いで言われたらしい。2つの星を失うが、1つの輝く星を手に入れるって。お前は失われる星ってことだな」

失われる星……。
なりたいわけはないのだ。でもこれ以上先生の重石になりたくないし、不安に耐えられるのかもわからない。

「なんで諦めたのかは聞かないが、」

「いえ、聞いてください!」

私が先輩の言葉を遮ると、先輩は驚いた表情をした。

「恋人って、お互いを安心させられる存在だと思うんです。でも私と先生が素直に愛情表現することは、世間的に許されませんよね。だから不安になるし、怖いんです。本当に幸せになれるのか、先生を幸せにできるのか。同世代の人と付き合ったほうが、先生にとって幸せなんじゃないかって考えちゃうんです」

私が夢中でまくし立てた台詞を反芻するように、先輩は視線を落として考えている様子だった。

少しして、ゆっくりと口を開いた。

「先生にとっての幸せが何なのかは、先生にしかわからない。だから俺やお前が悩むべき点じゃない。それを考えるのは先生の仕事だ」

なるほど……

「そう言われれば、そうですね」

「問題はお前の幸せとやらだが、ひとつ訊く。お前は何の不安もなくただ楽しいだけの関係が本当の幸せだと思ってるのか?」

「それは……」

「俺はそうは思わない。試練を乗り越えてこそ絆は強くなる。愛は深くなる。そう思う。不安や不満があるなら、話し合って解決する。それが恋人同士が進むべき道じゃないのか」

「……先輩って、恋人いたことあるんですか」

冷静に考えたら少し失礼な質問が出てしまったが、私の恋愛観がコペルニクス的転回を果たそうとしている時だ、許してほしい。

「どういう意味だよ! てか、それは今関係ねぇ。どうなんだ、先生と仲直りする気あんのか!?」

「はい。先輩のおかげで目が覚めました。ありがとうございました!」

私は走って帰ろうとして、数歩目で立ち止まり振り返った。

「でも先輩、もしも先生がすでに吹っ切ってたらどうすれば……」

「うっせーな、それくらい自分で考えろ!」

「えぇ~、だってデートしてたんでしょ……やっぱり私なんか」

「てめぇ意外とネガティブ思考だな。俺は知らねーよ、ライバルの手助けなんか御免こうむるぜ」

先輩はそう言って頭の後ろで手を組み、立ち去ろうとした。その後ろ姿に向かって叫ぶ。

「だったらなんで、先生が変だなんて教えたんですか!?」

「うっせ。ただの香水の礼だ、ボケ」

先輩は今度こそ去って行った。


こうして私は、先生に恐る恐るLINEしたわけだ。この先輩がいなければ絶対に無理だった。
この日から先輩の存在が、私の中でほのかに煌めき始めたのだった。


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