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第一章 悪魔との契り
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「だから、何度も言っただろう!?」
「契約って言われたら誰だって悪魔契約と思うでしょう!?」
ぎゃーぎゃーと騒がしい空飛ぶ馬車に。
周りを囲う悪魔たちは聞いたことのない主人の怒声にびくびくと怯えていた。
いつ、令嬢の首が飛ぶか。
いつ、馬車の中が血みどろに染められてしまうか。
だがそんな心配をよそに馬車の中は至って正常だった。
無論、その判断は私基準のものだが。
ぜぇ、ぜぇ、と息を切らせ、互いの主張をぶつけ合った結果、多大な勘違いを互いにした。
「とにかく、私、結婚する気はないから!」
「自分で提示したことを撤回するのか?公爵家の娘にしては、随分と身勝手な行動だな?」
ぐぅ、と喉の奥で唸る。
私が提示したのは、確かに契約だ。
悪魔と、人間の契り。
平等とは言えないこの世で、唯一と言える、その理を覆す手段。
悪魔に代償を払い、本来、その手に負えるはずのない力を持つ。
それこそが、悪魔契約。
私が求めた契約だ。
だが、目の前で勝ち誇ったように胸を張る男は違った。
「ふ、ちゃんと契約の詳細を言わなかったお前の落ち度だろう?諦めろ。」
この男、どうにも悪魔を統べる王という自覚がないのだろうか。
たしかに、私は契約、と言った。
それを、ごく普通の、一般的(?)な悪魔が聞けばどう思うか。
勿論、悪魔契約、代償と、超常的な力が生じる契約だ、と思うだろう。
だが、目の前の男。
魔族の長でありながら、人に寄せた見た目のその人は。
私が、言った契約を。
夫婦が結ぶ契約、もとい、結婚と捉えたようだ。
───落ち度があるのはどっちよ!
ぐっと、吼えそうになるのをこらえて、私は頭を横に振った。
一呼吸おいて、目の前の男へ目を向ける。
白い肌に、紅を垂らしたような真っ赤な瞳。
黒い髪の先は夜空色。それに、点々と輝く星。
前に、ゴミかと思って取ろうとしたら、星を消すのがお望みか?と聞かれたのをよく覚えている。
と、まぁ一言でいうのなら端正で女性受けするカオだ。
だが、うん。
この際、正直に言うが吉か。
「ま、何かを無理に強いたりはしない。周りはうるさいだろうが、跡取りだなんだは気にしなくてもいい。」
「…じゃぁ、まあ。正直に言わせてもらいますわ。」
「私。」
─────────、から。
「契約って言われたら誰だって悪魔契約と思うでしょう!?」
ぎゃーぎゃーと騒がしい空飛ぶ馬車に。
周りを囲う悪魔たちは聞いたことのない主人の怒声にびくびくと怯えていた。
いつ、令嬢の首が飛ぶか。
いつ、馬車の中が血みどろに染められてしまうか。
だがそんな心配をよそに馬車の中は至って正常だった。
無論、その判断は私基準のものだが。
ぜぇ、ぜぇ、と息を切らせ、互いの主張をぶつけ合った結果、多大な勘違いを互いにした。
「とにかく、私、結婚する気はないから!」
「自分で提示したことを撤回するのか?公爵家の娘にしては、随分と身勝手な行動だな?」
ぐぅ、と喉の奥で唸る。
私が提示したのは、確かに契約だ。
悪魔と、人間の契り。
平等とは言えないこの世で、唯一と言える、その理を覆す手段。
悪魔に代償を払い、本来、その手に負えるはずのない力を持つ。
それこそが、悪魔契約。
私が求めた契約だ。
だが、目の前で勝ち誇ったように胸を張る男は違った。
「ふ、ちゃんと契約の詳細を言わなかったお前の落ち度だろう?諦めろ。」
この男、どうにも悪魔を統べる王という自覚がないのだろうか。
たしかに、私は契約、と言った。
それを、ごく普通の、一般的(?)な悪魔が聞けばどう思うか。
勿論、悪魔契約、代償と、超常的な力が生じる契約だ、と思うだろう。
だが、目の前の男。
魔族の長でありながら、人に寄せた見た目のその人は。
私が、言った契約を。
夫婦が結ぶ契約、もとい、結婚と捉えたようだ。
───落ち度があるのはどっちよ!
ぐっと、吼えそうになるのをこらえて、私は頭を横に振った。
一呼吸おいて、目の前の男へ目を向ける。
白い肌に、紅を垂らしたような真っ赤な瞳。
黒い髪の先は夜空色。それに、点々と輝く星。
前に、ゴミかと思って取ろうとしたら、星を消すのがお望みか?と聞かれたのをよく覚えている。
と、まぁ一言でいうのなら端正で女性受けするカオだ。
だが、うん。
この際、正直に言うが吉か。
「ま、何かを無理に強いたりはしない。周りはうるさいだろうが、跡取りだなんだは気にしなくてもいい。」
「…じゃぁ、まあ。正直に言わせてもらいますわ。」
「私。」
─────────、から。
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