42 / 62
最後のピース
しおりを挟む
遥は目の前の建造物を見上げる。
三角錐のそれは、教科書で見たまさしくピラミッドだった。
そもそも、鉱山を抜けたあのオアシスの先がこんな砂漠だなんて、誰が想像するだろうか。そのチグハグ加減に慣れている自分を適応能力が高い、なんて心の中で褒めてみる。
「これが扉か」
ピラミッドの内部へと進むと、床に鉄製の板を見つけた。一畳ほどの大きさの板の中央に、正方形を九等分にした小さな鉄の板が八枚はまっている。
それぞれに文字や図形がついているが、パズルのように全てで一枚になるようなものには見えない。
文字は兎、牛、鳥、花、風の五つ。
図形は丸、三角、ダイヤの三つ。
全てを取り外すと、正方形の型の内側には雲島の地形の線が掘って描かれていて、中心にはバツ印。方角を示す記号も左上の角に彫ってある。
遥は方角を示す記号を見ながら、自分の上が北になるように場所を移動した。
「花……カエルレアの、花……」
遥は、みのりに聞いた昔話を思い出していた。
アンクは花を探し求めて旅をする。友の鳥、神からの愛、集めたガラス……
遥は記憶を手繰り寄せた。
役場前の石看板にあった撫子の花の横に書かれていた花言葉は『純愛』だ。
カナリアは鳥、撫子の花は純愛、そして玻璃は水晶、ガラス。
遥は型に彫られた雲島の地形をじっと見つめ、村の配置通りに中段の右に鳥。下段の真ん中に花、そして中段の左に水晶の形である丸の板を、それぞれ村の配置にはめてみた。
特に、変化はない。
板は全部使うのか。板の枚数から考えても、真ん中のバツ印に板は置かないのか。
上段に当てはまるのは、地形的におそらくここ白群にまつわるなにかだ。頭の中で白群と雲島の地図を重ねる。ダイヤモンド島と呼ばれる雲島、その地形の上部に三角形を当てはめれば、菱形のダイヤが完成する。遥はさらに、上段の真ん中に三角の板をはめ込んだが、それでも何の変化も見られなかった。
「……だめか」
遥は一旦立ち上がり、ピラミッドの内部を見上げるようにして眺める。床の鉄板以外、特に変わったものはない。壁に文字があるわけでもなく、天井の真ん中には魔除けの猫を象ったモチーフが吊るされて揺れていた。
遥は再び床の板に戻る。残りの板を適当にはめては、取り出す。
「こんなことをしている場合じゃ、ないのにな」
この扉が開いたところで何の当てがあるわけではない。明日に迫る会見に向けて、正和の不正を暴く準備もある。そんなことを考えながらふと、バツ印の上に手に持っていたものを置いた、その時だった。
「え——」
カチッ、と。小さく響いた解錠音は、遥の耳にしっかりと届いた。
三角錐のそれは、教科書で見たまさしくピラミッドだった。
そもそも、鉱山を抜けたあのオアシスの先がこんな砂漠だなんて、誰が想像するだろうか。そのチグハグ加減に慣れている自分を適応能力が高い、なんて心の中で褒めてみる。
「これが扉か」
ピラミッドの内部へと進むと、床に鉄製の板を見つけた。一畳ほどの大きさの板の中央に、正方形を九等分にした小さな鉄の板が八枚はまっている。
それぞれに文字や図形がついているが、パズルのように全てで一枚になるようなものには見えない。
文字は兎、牛、鳥、花、風の五つ。
図形は丸、三角、ダイヤの三つ。
全てを取り外すと、正方形の型の内側には雲島の地形の線が掘って描かれていて、中心にはバツ印。方角を示す記号も左上の角に彫ってある。
遥は方角を示す記号を見ながら、自分の上が北になるように場所を移動した。
「花……カエルレアの、花……」
遥は、みのりに聞いた昔話を思い出していた。
アンクは花を探し求めて旅をする。友の鳥、神からの愛、集めたガラス……
遥は記憶を手繰り寄せた。
役場前の石看板にあった撫子の花の横に書かれていた花言葉は『純愛』だ。
カナリアは鳥、撫子の花は純愛、そして玻璃は水晶、ガラス。
遥は型に彫られた雲島の地形をじっと見つめ、村の配置通りに中段の右に鳥。下段の真ん中に花、そして中段の左に水晶の形である丸の板を、それぞれ村の配置にはめてみた。
特に、変化はない。
板は全部使うのか。板の枚数から考えても、真ん中のバツ印に板は置かないのか。
上段に当てはまるのは、地形的におそらくここ白群にまつわるなにかだ。頭の中で白群と雲島の地図を重ねる。ダイヤモンド島と呼ばれる雲島、その地形の上部に三角形を当てはめれば、菱形のダイヤが完成する。遥はさらに、上段の真ん中に三角の板をはめ込んだが、それでも何の変化も見られなかった。
「……だめか」
遥は一旦立ち上がり、ピラミッドの内部を見上げるようにして眺める。床の鉄板以外、特に変わったものはない。壁に文字があるわけでもなく、天井の真ん中には魔除けの猫を象ったモチーフが吊るされて揺れていた。
遥は再び床の板に戻る。残りの板を適当にはめては、取り出す。
「こんなことをしている場合じゃ、ないのにな」
この扉が開いたところで何の当てがあるわけではない。明日に迫る会見に向けて、正和の不正を暴く準備もある。そんなことを考えながらふと、バツ印の上に手に持っていたものを置いた、その時だった。
「え——」
カチッ、と。小さく響いた解錠音は、遥の耳にしっかりと届いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる