ゴールデン高校美食倶楽部 新・文化祭カレー!

銀河星二号

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第1章「ゴールデン高校美食倶楽部」

電車

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 型落ちのステンレス製の電車が、うなりを上げて海沿いを進む。
 海沿いの車窓には低いビルが並び、ところどころに畑や田んぼが広がり、実にのどかだ。いわゆる地方都市と言うやつである。毎日見ている通学途中の景色だ。
 今日は天気も良く晴れていて、青い空が広がっている。風もあまり無く穏やかだ。
 僕は長イスには座らず、立って吊革に掴まっていた。それほど長い距離じゃないし、座ると立つのが億劫になるからだ。
 車内は別に混んではいない。乗っているのは、学生とサラリーマンがちらほら程度。ローカル路線なので、まあこんなものだ。
 この車体はどうやら首都圏で前に使われていて、いらなくなったやつが、この路線に回って来たらしい。なので、ローカル然とした雰囲気はあまりない。

「タッくん!」
 後ろから肩を叩かれ、振り返ってみると、見慣れた顔がそこにあった。幼なじみのヨーコちゃんである。
 ちなみにタッくんと言うのは僕の名前、山野拓海の名前から来ている。ついでに言うと、ヨーコちゃんのフルネームは花咲陽子だ。
「ヨーコちゃん、おはよう」
「おはようー」
 いつもながらヨーコちゃんはニコニコである。ここが彼女の良いところ。だいたい常にニコニコなのである。機嫌を損ねると怖いが、そういうことは滅多にない。
「目の下にクマが出来てるよ。また徹夜でもしたの?」
「ああ……ちょっとレシピビデオとか見ててね……」
「明日のお茶会の?」
「いや、それは大福にしようかと。材料はもう用意してある」
「別の?」
「うん、スパイスカレー。ビデオ見てたら朝になってた」
「へー、難しそう」
「まあね。多分作るならカレー粉使っちゃうけどね。配合まで行くと面倒だから」
「色々混ぜないとダメっぽいもんね」
「うん、全然覚えられない……まだ知識が足りてない」
「出来たら倶楽部で出すの?」
「あ、うん。そうしようかな。良いのが出来たらね。そうすると思うよ。量は出せないけど」
「材料代かかりそうだもんね」
「うん、高校生にはつらいね」
「お店ならねー、回収出来るのにね」
「いいねー。やってみたいね。まあ将来の話か」
「あ、そうだ、カレーと言えば!」
「何?」
「うちのおばあちゃんのカレー美味しいんだよ」
「へえ」
「今度、食べに来てみる?」
 彼女はそう言って、僕を下から見上げた。うう、期待されている。そんなキラキラの目で見つめないで。
「ああ、うん。じゃ今度行ってみようかなー」
「それじゃ、話しておくね」
「よろしくー」

 と、今度は背中に何か冷ややかな目線を感じた。そっと振り向いて見ると、そこには別の見知った顔があった。昴ちゃんである。クラスメートの、生徒会の役員をやっている超真面目な子。真面目過ぎるのが玉にキズ。超可愛い。あ、女の子である。
「おはよう山野君。二人とも朝から仲がいいわね」
「あ、うん。おはよう。幼なじみで家が近所だしね」
「だもんねー」
 あ、こらヨーコちゃん、腕にしがみつくな。油に火が燃え移る。
「……ところで山野君、数学の宿題やって来た?」
 あ、昴ちゃんも逆の腕を掴んだ。困る。大変困る。
「あ、一応。自信は無いけれど……」
「じゃ、あとで見てあげるね。同じクラスだし」
「あ、うん……」
 ヨーコちゃんの手に力が入る。いたいいたい。
「別に見なくても大丈夫だと思うよ、平川さん」
「あらー、そうかしらー」
 二人が火花を散らし始めている。

 と、電車は緩やかに減速し、停車した。
「ゴールデン高校前~ゴールデン高校前~」
 ナイスタイミング、電車。
「着いたよ!ヨーコちゃん、昴ちゃん!」
 僕がそそくさと電車から降りると、二人は続けて降りてきた。……火花がバチバチ散ってる気がする。目に見えないけれど。な、仲良くね。
「二人とも、行くよー」
 声をかけたが、特に返事は無い。あああ。

 電車を降りた僕達は、ゴールデン高校への道を歩いた。緩やかな坂道だ。ここから百メーターほど続く。周りには多少の店がチラホラ立っている。緑や木々も多く、郊外の道路といった風情だ。

 ゴールデン高校は、奇妙な名前だと言われるが、別に校長ががノリで付けたわけではなくて……いや、多少のノリはあったのかもしれない。とにかく適当につけた訳ではなくて、由緒有る名前なのである。と聞いている。
 昔、この辺りの地名に黄金《こがね》と言う名前がついていて、そこから「世の中のためになるゴールデンな人材が育って欲しい」と言う願いを込めてつけたそうだ。申請が通るかは、どうやら賭けだったらしいが、無事通ってしまって現在に至るのである。
 しばらく歩くと、そのゴールデン高校の校舎が見えて来た。鉄筋3階立て。コンクリート製の建物である。決してゴールドでは出来てはいない。残念だが。
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