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α-序章
028-誰ガ為ノ勇気
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どうやら、無事に通過できそうだ。
俺は溜息を吐く。
現在いるのはロー・セキュリティ宙域の『バウカド』。
ここを通過すれば、ハイ・セキュリティ宙域に出れる。
現在はバウカド星系の二つしかないアステロイドベルトに向けて航行中であり、そこからゲートまでは一直線だ。
「(.....油断はできないけど)」
もしかすると、相当の大金を積まれてハイ・セキュリティ宙域にまで追手を伸ばしてくるかもしれない。
だから、とりあえず油断はできない。
『ワープ終了まで残り一分』
「.......」
ワープ中は広域レーダーが使えない。
だから、先で何が起きているかは光速スキャンでしか分からないのだが.....
「何か.....居る!?」
前方に飛ばしたスキャンの結果から、アステロイドベルトに艦隊がいる事が分かった。
そんな、どうしてここが....
「リリーさん....」
「大丈夫!」
まだ敵と決まったわけではない。
もしかすると中立の傭兵艦隊の可能性もある。
採掘中かもしれない。
『ワープ終了まで残り三十秒』
「........」
これでもし、敵だったら......?
ゲームだったら、高い荷物を失ったな、それで済む。
だけど....ここは現実......
「(それでも!)」
アルベルトの前で情けない姿を見せるわけにはいかない。
ワープが終了し、オリオンはアステロイドベルトに到着する。
そこには、夥しい数の艦船が居た。
全部で六十二隻......採掘艦や輸送艦の姿は見えない。
『警告。ターゲットされています』
「緊急ワープ!」
『ワープ測量システムに異常発生。重質量が付近に存在します』
「.....ッ!」
直後、通信が入る。
応じると、粗野な声がブリッジに響く。
『よぉ、元気か?』
「.....誰だ?」
『可愛い声してんじゃねえの、アンタに恨みはねえが、そっちのガキには用があるのさ。まあ、船を明け渡してくれりゃあいいわけよ。あんたも死にたくはないだろう』
「......彼と私の安全は保障してくれるのですか?」
『ハァ? 何言ってんだお前。見逃すわけねえだろ』
『俺たちがお前も船も”有効に”使ってやるよ! ギャハハハハ』
別の声が割り込む。
どうやら、アルベルトを生かして返すつもりはないらしい。
しかも最悪なのは、俺自身を殺すつもりはなく――――身体が目当て。
吐きそうになる。
だけど.....
「(怖い......)」
死にたくない。
相手は俺を殺そうとしているんだぞ?
「うわあっ!!」
敵が発砲したらしく、轟音と衝撃が走る。
船のサポートシステムが戦闘を推奨してくる。
彼等は撃ったのだから、撃たれる覚悟もあるはずだ。
だが....
無理だ。
「(殺せるわけがない)」
相手も同じ人間だ。
だって、人を殺すことは悪い事じゃないか。
エゴだ。
エゴだが........
「リリーさん、もういいです!」
その時。
アルベルトが叫んだ。
俺がそちらを見ると、アルベルトは目に涙を浮かべていた。
直後に轟音、衝撃、閃光が同時に襲い掛かり、アルベルトはふらつく。
俺が声をかけようとしたとき。
「僕が脱出艇であいつらの気を引きます」
「アルベルト......」
「分かってたんです、リリーさんみたいな優しい人に、人が殺せるわけないって分かってたんです」
アルベルトは、泣きながら訴える。
その間にも、戦艦からの砲撃が飛んできて、ブリッジに直撃する。
「だから僕は、リリーさんの優しさには甘えません。お父さんみたいに、大切だと思った人を守るために.....死にます!」
「..........」
ここで彼が飛び出しても、ワープできないのは変わらない。
無駄死にするだけだ。
ええい。
何をくよくよ悩んでいるんだ。
動け、俺!
俺はコンソールを、思いっきりぶっ叩いた。
重い音がして、叩きつけた拳に鈍い痛みが走る。
「リリーさん.....?」
「後悔は、後でいくらでもできるから。――――やるよ」
今だけは、俺は人間じゃない。
プレイヤーで居る。
荷物のアルベルトを守るため、海賊NPCと戦うのだ。
「戦闘モードに移行!」
『システム、戦闘モードに移行します』
人を殺したとか、そういうのは後で悔めばいい。
だって、俺の為に死ぬと、俺よりずっと幼い子供が言ったんだぞ。
なら.......
「躊躇はしてられない.....!」
「リリーさん....」
「大丈夫だから」
いつも通り。
俺は無理して微笑んだ。
俺は溜息を吐く。
現在いるのはロー・セキュリティ宙域の『バウカド』。
ここを通過すれば、ハイ・セキュリティ宙域に出れる。
現在はバウカド星系の二つしかないアステロイドベルトに向けて航行中であり、そこからゲートまでは一直線だ。
「(.....油断はできないけど)」
もしかすると、相当の大金を積まれてハイ・セキュリティ宙域にまで追手を伸ばしてくるかもしれない。
だから、とりあえず油断はできない。
『ワープ終了まで残り一分』
「.......」
ワープ中は広域レーダーが使えない。
だから、先で何が起きているかは光速スキャンでしか分からないのだが.....
「何か.....居る!?」
前方に飛ばしたスキャンの結果から、アステロイドベルトに艦隊がいる事が分かった。
そんな、どうしてここが....
「リリーさん....」
「大丈夫!」
まだ敵と決まったわけではない。
もしかすると中立の傭兵艦隊の可能性もある。
採掘中かもしれない。
『ワープ終了まで残り三十秒』
「........」
これでもし、敵だったら......?
ゲームだったら、高い荷物を失ったな、それで済む。
だけど....ここは現実......
「(それでも!)」
アルベルトの前で情けない姿を見せるわけにはいかない。
ワープが終了し、オリオンはアステロイドベルトに到着する。
そこには、夥しい数の艦船が居た。
全部で六十二隻......採掘艦や輸送艦の姿は見えない。
『警告。ターゲットされています』
「緊急ワープ!」
『ワープ測量システムに異常発生。重質量が付近に存在します』
「.....ッ!」
直後、通信が入る。
応じると、粗野な声がブリッジに響く。
『よぉ、元気か?』
「.....誰だ?」
『可愛い声してんじゃねえの、アンタに恨みはねえが、そっちのガキには用があるのさ。まあ、船を明け渡してくれりゃあいいわけよ。あんたも死にたくはないだろう』
「......彼と私の安全は保障してくれるのですか?」
『ハァ? 何言ってんだお前。見逃すわけねえだろ』
『俺たちがお前も船も”有効に”使ってやるよ! ギャハハハハ』
別の声が割り込む。
どうやら、アルベルトを生かして返すつもりはないらしい。
しかも最悪なのは、俺自身を殺すつもりはなく――――身体が目当て。
吐きそうになる。
だけど.....
「(怖い......)」
死にたくない。
相手は俺を殺そうとしているんだぞ?
「うわあっ!!」
敵が発砲したらしく、轟音と衝撃が走る。
船のサポートシステムが戦闘を推奨してくる。
彼等は撃ったのだから、撃たれる覚悟もあるはずだ。
だが....
無理だ。
「(殺せるわけがない)」
相手も同じ人間だ。
だって、人を殺すことは悪い事じゃないか。
エゴだ。
エゴだが........
「リリーさん、もういいです!」
その時。
アルベルトが叫んだ。
俺がそちらを見ると、アルベルトは目に涙を浮かべていた。
直後に轟音、衝撃、閃光が同時に襲い掛かり、アルベルトはふらつく。
俺が声をかけようとしたとき。
「僕が脱出艇であいつらの気を引きます」
「アルベルト......」
「分かってたんです、リリーさんみたいな優しい人に、人が殺せるわけないって分かってたんです」
アルベルトは、泣きながら訴える。
その間にも、戦艦からの砲撃が飛んできて、ブリッジに直撃する。
「だから僕は、リリーさんの優しさには甘えません。お父さんみたいに、大切だと思った人を守るために.....死にます!」
「..........」
ここで彼が飛び出しても、ワープできないのは変わらない。
無駄死にするだけだ。
ええい。
何をくよくよ悩んでいるんだ。
動け、俺!
俺はコンソールを、思いっきりぶっ叩いた。
重い音がして、叩きつけた拳に鈍い痛みが走る。
「リリーさん.....?」
「後悔は、後でいくらでもできるから。――――やるよ」
今だけは、俺は人間じゃない。
プレイヤーで居る。
荷物のアルベルトを守るため、海賊NPCと戦うのだ。
「戦闘モードに移行!」
『システム、戦闘モードに移行します』
人を殺したとか、そういうのは後で悔めばいい。
だって、俺の為に死ぬと、俺よりずっと幼い子供が言ったんだぞ。
なら.......
「躊躇はしてられない.....!」
「リリーさん....」
「大丈夫だから」
いつも通り。
俺は無理して微笑んだ。
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